ブロックチェーンが起こすビジネス革命(前編)

ブロックチェーンが起こすビジネス革命(前編)

ENGINEERING

Blockchain

ビットコインの基盤技術である「ブロックチェーン」が、今注目を集めています。金融機関などで利用され始めたこの技術の可能性について、前後編で紹介します。

「ブロックチェーン」ってどんな技術?

ひと言で表現するなら「分散型台帳を実現する技術」のことです。分散型台帳とは、取引や契約の記録(台帳)を中央の管理者が一つだけ所持するのではなく、ネットワークでつながった利用者それぞれが一つずつ持った上で同期をとるようにする仕組のことです。

ブロックチェーンでは、「記録の書き込まれたひとそろいのデータ」(ブロック)が「順に連なる」(チェーンする)形で台帳が作られています。だからブロックチェーンと呼ばれるのですね。


この技術は、もともと仮想通貨「ビットコイン」の仕組みの一部として世に出ました。ビットコインの仕組みは、その考案者(サトシ・ナカモトを名乗る正体不明の人物)によってソフトウェアとしての実装が行われています。ビットコインの実装は当初OSSOSSオープンソースソフトウェア(Open Source Software)の略。ソフトウェアのソースコードが無償で公開され、一定のライセンスに基づき改良や再頒布の許可が定められているもののことを指す。様々な分野で利用されているオペレーティングシステムである「Linux」もOSSとして提供されている。として公開されたのですが、さまざまな派生技術が生み出された結果、この分散型台帳を実現する技術そのものに名前が必要となりました。この技術の名前が「ブロックチェーン」だというわけです。

また、ブロックチェーン技術を使って作られた仕組みのことも総じて「ブロックチェーン」といいます。

ブロックチェーン概念図ブロックチェーン概念図

ここがすごい!ブロックチェーンの革新性

ブロックチェーンを取り入れた動きが加速しています。総務省が2017年度中に電子申請にこのブロックチェーン技術の導入に向けて動きだしたり、経済界では日本IBMがブロックチェーンの導入を支援するサービスを発表したりするなど、政財界を問わず大きな期待がよせられています。では、一体この技術の何がすごいのでしょうか?

① 詐欺や不正の起こりにくいシステム

ブロックチェーンの持っている革新性は、「内容の改ざんが実質できないので取引や契約の正しさが保障される」という点にあります。 これによって不正を行うのが困難になるので、取引や契約の際に相手を信用する必要がなくなるのです。

取引や契約の際に相手を信用する必要がないとはどういうことか、「ブロックチェーンを使ったネットオークション」の例を挙げて考えてみましょう。

このネットオークションで、Aさんが出品した商品がBさんに1000円(送料込)で落札されたとします。ここで、システムがブロックチェーンにAさんとBさんの間で商品と1000円を交換する契約が成立したと書き込みます。契約が成立すると、AさんはBさんに商品を送ります。すると、宅配便のシステムがそのことをブロックチェーンに書き込みます。ネットオークションのシステムがブロックチェーンを参照して送付が確認できたら、自動的にBさんの口座からAさんの口座に1000円を送ります。

このようにして、詐欺の発生しないネットオークションが可能になります。従来であれば、「取引相手は詐欺をしない」という信用を担保する必要がありましたが、このプロセスだと不正のしようがありませんから、信用は全く必要ないのです。

ブロックチェーンを使ったネットオークションのモデルイメージ例ブロックチェーンを使ったネットオークションのモデルイメージ例

② ①によるコスト低減

取引や契約に信用が必要ないということは、それらにかかるコストが低下するということです。銀行がシステムのセキュリティーに多大なコストをかけたり、本人確認を厳重に行うための人件費を割いたり、企業が第三者機関の認証を取得するためにお金を払ったりするのは、取引や契約に信用が必要だからこそです。ブロックチェーンを利用すれば信用が必要なくなるわけですから、このあたりのコストはぐっと低下するでしょう。

要するに、ブロックチェーンは取引や契約に信用が必要なくなるがゆえに、信頼性の高いシステムを構築でき、かつそれにかかるコストが下がるという点で大きく注目されています。「理解のハードルが高い」と言われがちな技術ではありますが、持っている価値は非常にシンプルなのです。

③ シェアリングエコノミーやIoTと好相性

また、ブロックチェーンは話題のシェアリングエコノミーシェアリングエコノミーインターネットを通じて個人が所有している物やサービスなどを個人間で貸し借りするための仲介サービス。代表例はライドシェアリングや民泊 or UberやAirbnb。IoT(Internet of Things)IoT(Internet of Things)Internet of Thingsの略。さまざまなモノがインターネットに接続され、情報交換することで相互に制御する仕組みのこと。テレビやエアコン、自動車など活用分野は広がっている と相性がよいことも価値の一つです。

先ほど挙げたネットオークションの例を見ればわかりますが、ブロックチェーンを利用すれば個人間の直接取引が簡単に低コストでできるようになります。流行のライドシェアリングや空き部屋の活用だけでなく、あらゆる資産に対してシェアが進むことが予測されます。

IoTの分野では、諸問題を一気に解決する技術として大きな注目を集めています。例えば、セキュリティー対策や負荷分散です。特に、ブロックチェーンでそれぞれのIoTが互いに情報を共有することは非常に大きなメリットで、IoT間が自律的に連携すること(ヘルスメーターが家の他のデバイスと連携して家主の健康診断を行い、状況に応じて適切な病院を探してくる、など)を可能にします。

ここまで【前編】ではブロックチェーンの基本的な概念や特徴について簡単にご説明いたしました。
【後編】では具体的なビジネスモデルやドバイ政府の取り組みなどをご紹介いたします。

この記事を書いた社員

ZACカスタマイズ
開発チーム

「ZAC」のカスタマイズを担当。会計知識の要求される開発の一方で技術のキャッチアップも求められる、専門性の高いチーム。本記事は、一メンバーが自ら学んだ事柄を執筆したもの。