ERP講座 第3回

ERP導入、その前に

企業のIT化とシステムの課題

ERPシステム導入の前に、企業が抱えるITにかかわる課題について考える必要があります。企業は規模にかかわらず基幹情報システムに課題を抱えていますが、その解決手法としてのERPやCRMといった経営管理ソリューションの導入、そしてその効果と活用方法が議論されている現状があります。

企業が抱えるシステムの課題にはさまざまなものが考えられますが、主に次のような課題があげられます。

  • システムが、情報技術の革新や市場の変化のスピードに追い付いていけない
  • 部門ごとの最適化を優先するため各システムが独立し、全体の情報が見えない
  • システムの運用保守・管理コストが高い

こうした課題を踏まえた上でERPシステムの導入に向けて、再度システム化のメリットや特徴を考えてほしいと思います。

中堅中小企業にとってのERP

近年、中小企業においてERP導入が進んでいるといわれています。企業全体でみるERP導入率は約30%です。中小企業に限ってみてみると20%になります。ERPの導入の中心になっているのは大企業であると言えますが、中小企業も引けを取っていないことがわかります。

中小企業がERPを導入する背景として、ビジネスを革新したいという経営者のマインドや企業体質による部分が大きく、具体的に第2回で述べたリアルタイム経営などは、大企業だけに当てはまるものではありません。また、SCM(Supply Chain Management ※)の広がりも見過ごせません。大手企業によるSCM推進の要請から、自社資源を一元管理する基幹システムの必要性が出てくることも中小企業のERP導入につながっています。

ERPソリューションとそれ以前のシステムの違い

ERPソリューションとそれ以前のシステムとの役割の違いを、以下の3つにまとめます。

(1) ユーザーのためのシステムから経営のためのシステムへ

基幹システムの役割は各部門のユーザーの業務効率向上から、企業全体における業務の統一、標準化、BPRなどにシフトしてきています。ERPはユーザー目線ではなく経営者目線のシステムという側面が大きいことが特徴です。

(2) 「推進」から「革新」へ

従来のシステムは業務を効率化・省力化するためのシステムでした。つまりを「推進」するためのものです。対してERPは業務の統合、データの一元管理をはじめとして、管理会計面で分析したデータの活用による業務改善や意思決定、経営資源の最適活用など、業務・事業の「革新」の役割を大きく担います。

(3) ひとつのシステムから基盤としてのシステムへ

ERPをひとつの完成したシステムとしてとらえるのではなく、ERPをシステムの基盤としてとらえ、ERPの上にその他のシステムを戦略的に構築していくという考え方です。たとえばCRMやSFAなどの戦略的なシステムをERPに連動させ、その企業独自のシステムを構築していくのです。

ERP導入プロジェクトを失敗させないために

ERP導入プロジェクトを失敗させない。そのためには、システム導入の目的・課題・システム化構想を明らかにすることはもちろん、ERPを複数目線で評価することが重要です。現場の利用者目線だけではなく、社内外の立場の違う関係者の目線でも評価を行うことが大切です。

評価目線としては、次の4つのポイントが重要です。

  • 1. 利用者(現場)の目線
  • 2. システム管理者の目線
  • 3. 経営層の目線
  • 4. 監査・経理の目線

特に「監査・経理」の目線においては、システム導入後にシステム監査・内部統制・会計監査を踏まえて要件定義すると、システム稼動後にカスタマイズ要件が増大し、予算超過する可能性があり、ERP導入失敗となりかねません。

失敗を防ぐもう一つのポイントとして、複数の導入実績のあるパッケージを選択する事も推奨されます。ERP導入企業の生の声や導入状況、失敗事例や成功事例を調査することで、社内評価を想定できますし、導入ベンダーとの付き合いが浅い場合でも、導入作業の質や、導入後のサービスレベルを推しはかることができます。このように社内の声と社外の声をしっかりと調査するプロセスが、ERP導入プロジェクトの成功へと繋がります。

※1 SCM

Supply Chain Management。仕入、製造、流通、販売、サービスといった事業活動の川上から川下までの一連の流れを「サプライチェーン」と呼ぶ。サプライチェーンをITで総合的に管理することでプロセスの無駄を削減することが狙い。

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