お電話でのお問い合わせ

0120-973-866

実践的事業計画書の作り方と利用方法 第3回

実践的事業計画書の作り方と利用方法 第3回
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • RSS2.0
  • ATOM

2011/12/22公開

 前回、前々回のコラムでは、事業計画書作成のステップ1として、事業計画書作成の基本ポイントと戦略構築の前提となるSWOT分析について解説いたしました。
 今回は、前回までの内容を踏まえ、事業計画書作成ステップ2として、SWOT分析に基づく経営目標、経営基本戦略の策定についてお話いたします。

目次

    (1)経営目標の設定

     SWOT分析により自社の状況や求められているニーズ等が明確になったなら、これをもとに具体的な経営目標とそれを達成するための戦略・行動計画を作成します。
     事業計画書は将来のあるべき姿と現状のギャップを埋めるための道筋を示す経営の指南書たる存在です。あるべき姿(経営目標)の設定は、事業年度(時間軸)、事業規模(売上、利益、社員数)、事業領域(製品・商品・サービスと市場)の3つの軸を視点として考えていきます。
     仮に3ヶ年の事業計画を策定する場合、3年後の事業規模、事業領域を想定し、ゴールを決めそこに向かう各事業年度ごとのプロセスを明確化していきます。

    omote01.png

     経営目標は経営ビジョンを達成するための定性的な目標と売上高・利益といった数値で表される定量的な目標とに分けられます。事業計画書を作成しても、必ずしも事業がうまく行くとは限りません。しかし、目標と前提条件とを明確にし、仮説設定と検証という作業を繰り返すことにより、初めて失敗の要因を学び成功のシナリオを描くことが可能になるはずです。定量的な目標に対しては、成果を測定できる体制の構築とその評価基準を明確にすることが肝要となります。

    (2)経営基本戦略

    1.SWOT分析による大まかな対応方針の整理

     事業計画の最終年度のゴールがイメージできたなら、SWOT分析による機会(O)と脅威(T)、強み(S)、弱み(W)の各項目に対する大まかな対応方針を整理します。その際、内部環境(強み(S)、弱み(W))と外部環境(機会(O)、脅威(T))を対応させたクロス分析が役に立ちます。

    表1 SWOTのクロス分析

    組み合わせ検討ポイント対応方針(例)
    強み×機会 機会を最大限に活用するキーファクターは何か 新規出店、積極的な事業規模の拡大、参入障壁の構築
    強み×脅威 戦うのか、戦わないのか。脅威の影響を最小限にするための方策 正面からの競争を避けた差別化の徹底、コストリーダーシップで戦う
    弱み×機会 機会を最大限生かすための弱みの改善 製品改良、新製品投入
    弱み×脅威 最悪の結果を回避するための方策 事業撤退

    2.経営基本戦略の策定

     つぎに、SWOT分析で立てた大まかな対応方針をより具体的な経営戦略に落とし込む作業を行います。複数事業がある場合は、全社戦略のほか事業別の戦略が必要であり、それを実行するための販売、生産、購買、物流、財務といった機能別の戦略に落とし込んでいきます。この戦略に基づいて数値目標としての中期利益計画が策定されることになります。

     なお、経営基本戦略の策定においては、以下の点に留意する必要があります。

    • SWOT分析の環境分析と整合した内容であること
    • 各戦略の間に矛盾が生じていないこと
    • 表現が具体的で、達成水準、達成時期が明確であること
    • 事業年度ごとの行動計画が明らかになるようにすること

    ・SWOT分析の環境分析と整合した内容であること。

     経営基本戦略は、例えば以下のようなシートにまとめるようにします。

    表2 経営基本戦略策定シート(例)

    第41期第42期第43期
    平成21年3月期 平成22年3月期 平成23年3月期
    販売ルート 既存の販売代理店との契約の見直しを行い、さらに各営業拠点別の潜在顧客の洗い直しを行う 広島に営業所を設置し山陽地方におけるシェア拡大を狙う 販売代理店網の拡充を図り、特に関西地区での販売力の強化に努める
    製品・サービス 主力製品を中心としたラインナップの見直しを行ない、アクティブな製品に特化していける体制をつくる 需要が低下していくことが予想されるB商品に代わり、C商品を積極的に販売していく。これにあたり、C商品に関するブランド戦略・広告宣伝を強化する
    生産 埼玉工場のライン増設により生産能力のアップを図る OEMの積極的な受注等により、工場での操業度を向上させる
    人事 営業部門人事については営業拠点新設以外では増員せず、権限委譲された組織体制・営業教員の充実等により効果的な営業体制とする。生産部門については工場ラインの増設に伴う増員は必要となる。同時に、パート工員の増加により原価人件費の変動費化を図る

    (出典:事業計画策定マニュアル 朝日ビジネスソリューション(編)/PHP研究所)

    INDEX : 実践的事業計画書の作り方と利用方法

    • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • RSS2.0
    • ATOM
    表 順一

    この記事の筆者

    朝日ビジネスソリューション株式会社 マネージャー 公認会計士

    表 順一

    大学卒業後、民間会社を経て公認会計士試験合格。大手監査法人にて法定監査、企業再生、株式上場支援に従事。現在は朝日ビジネスソリューション株式会社にて、事業計画策定・予算等主として経営管理体制構築支援を行っている。アーリーから株式上場、あるいは事業承継のための会社の磨き上げなど様々なステージの企業ニーズに対応したコンサルティングを手掛ける。