ブロックチェーンが起こすビジネス革命(後編)

ブロックチェーンが起こすビジネス革命(後編)

ENGINEERING

Blockchain

後編ではブロックチェーンを活用したビジネスモデルやブロックチェーン先進都市を目指すドバイ政府の取り組みなどを紹介しながら、新たなビジネスのヒントを探ります。

進むブロックチェーンの活用

ブロックチェーンを活用した取り組みが世界各地で始まっています。中央に管理者を持つ必要がなく、かつ高い信頼性を担保する仕組みであることから、純粋な社会実験や公的機関での活用が中心になっています。新しい情報技術としては非常に珍しいと言えるでしょう。具体的なプロジェクトの例としては、

  • ・タクシー利用者と運転手とを業者を介さずつなぐライドシェアリング・La’Zooz
  • ・不動産会社を通さず土地を売買するプラットフォーム・UBITQUITY
  • エストニア政府による、国民の健康データ管理をブロックチェーン上で行う計画

などがあります。ここでは、ブロックチェーンを利用した電力網「Brooklyn Microgrid」と「ドバイ政府の取り組み」を特に詳しく見ていきます。

・Brooklyn Microgrid

Brooklyn Microgridとは、TransActive Gridというプラットフォームを使って構築されたマイクログリッドです。マイクログリッドとは小規模なエネルギーネットワークのことで、多くは限られた地域内での電力網を指します。ニューヨーク市のブルックリンで運用されていることから、この名前が付けられました。

Brooklyn Microgridにおいて特徴的なのは、スマートメーター同士がブロックチェーンを介して直接電力のやりとりを行うことです。電力会社を介さず発電した電気を融通するのです。

Brooklyn Microgridに参加しているスマートメーターはそれぞれ発電機につながっており、発電が行われるとそのことがブロックチェーンに書き込まれ、「エナジークレジット」と呼ばれるトークン(ネットワーク内でのみ使える仮想通貨)がメーターに付与されます。このトークンは「発電された電力を使う権利証」として機能します。

例えば、隣の家で電力不足が起きたとすると、隣の家のメーターが先ほどのトークンを買い取ります。すると、トークンは電力を使う権利なわけですから、先ほど発電した電力の送電が行われます。もちろん、買い取りも送電もブロックチェーン経由で自動的に行われるため、隣の家の住人がメーターを操作して電力を買う、などということはありません。

このように電力会社を経由することなく電気を買うことができるのです。遠くの発電所から電気が送られることがないため電力のロスは少なく、かつ余計なマージンが乗らないため安価です。また、メーター同士が互いにつながった上で各メーターが発電機に紐付いていることから、どこかの家で停電が発生してもその家を通らないルートで電気を送るという方法を取ることができます。発電所から街へつながる送電線が切れただけで大規模停電が発生する仕組みと違い、送電ルートが失われるリスクは低いと言えます。実際に、ブルックリンでは自宅のソーラーパネルで発電した電気を近所の人に売る、といったことが行われているようです。
(出典:http://greenz.jp/2016/09/04/brooklyn_microgrid/

Brooklyn Microgridの仕組みBrooklyn Microgridの仕組み

ドバイ政府の取り組み

ドバイといえばアラブ首長国連邦(UAE)を形成する首長国の一つであり、首都である同名の都市は世界的な経済都市・観光都市として有名です。そのドバイが、2016年「ドバイ・ブロックチェーン・ストラテジー」を発表しました。政府の公文書を2020年までにすべてブロックチェーンを活用したシステムに移行するというプロジェクトです。

目的は行政の効率化ですが、中東随一の都市がブロックチェーンを行政に活用することは、国際的に非常に大きなインパクトを与えました。実は、この発表は突然出されたわけではなく、以前からドバイ政府はブロックチェーン技術に熱心に取り組んでいたのです。
例えば、この発表に先立って政府はGlobal Blockchain Councilという組織を設立しています。メンバーにはMicrosoft, IBM, Ciscoなどのそうそうたる企業が名を連ねており、この組織からはブロックチェーンの活用例として「ダイヤモンド取引の安全管理」「電子遺言書」などのユースケースが発表されています。すでに実証実験を行っているものもあるようです。

このように、ドバイはブロックチェーンに熱視線を送っているのですが、それには理由があります。前述のユースケースの中に「ダイヤモンド取引の安全管理」があること、ドバイが紛争の絶えない中東に位置することがヒント、と言えば分かる方がいるかも知れません。

……さて、分かりましたでしょうか?
ドバイ政府は、ダイヤモンドや金などの宝石・貴金属類が犯罪組織の資金源になるのを防ぎたいのです。犯罪組織にしてみたら富豪が多くて紛争地域に近いドバイほど良い市場はないわけで、多くの犯罪組織が宝石・貴金属類をドバイで売っていると言われています。この状況を放置するのは犯罪組織を間接的に支援していると言われても仕方ありませんから、ドバイ政府は宝石・貴金属類を売る業者に供給源の確認を義務付けています。しかし、文書の偽造などがまかり通っているのが現状のようです。

このような状況において、改ざんのできないブロックチェーンはうってつけです。産出した宝石・貴金属類を重量とセットでブロックチェーンに記録すれば、流通経路の正確な追跡が可能になります。政府には願ったり叶ったりというわけです。新興国から先進国への脱皮を遂げようとしているドバイが最新技術に投資するのは当然ではあるのですが、このような事情が追い風になっているのですね。

いずれにしろ、このドバイの動きがブロックチェーン技術の発展に大きく寄与することは間違いありません。ドバイでの運用が成功すれば世界中にフォロワーが相次ぐことでしょう。2020年はちょうど東京オリンピックが行われる年ですが、日本政府や自治体の中からフォロワーが現れるのでしょうか。日本は先進国の中ではブロックチェーンに熱心に取り組んでいる国の一つですから、ぜひともそうあってほしいものです。


ブロックチェーン先進都市を目指すドバイブロックチェーン先進都市を目指すドバイ

ブロックチェーンのビジネス活用

ここまでの話の流れからブロックチェーンが非常に革新的な技術であることはわかっていただけたと思いますが、Brooklyn Microgridやドバイ政府の取り組みはあくまで公共事業的な話で、ビジネスとは毛色の違う話でした。では、この技術をビジネスにどのように生かして行くべきなのでしょうか?

実は「ブロックチェーン技術を活用して急成長した企業は?」と問われると、まだ名前を挙げるのが難しい状況なのです。世界中の人々がブロックチェーンに興味を持ち、さまざまなプロジェクトが立ち上がっているにもかかわらず、です。つまり、上手なマネタイズの方法を思いついた者が次の世界の勝者という状況なのですね。それは大きなお金を生むだけでなく、巨大な価値を市場に提供することでしょう。方法は残念ながらまだ思いついていないのですが、少なくともその方法はブロックチェーン技術への深い理解と運用ノウハウを持っていることが前提になるでしょう。ですから直近でできることを試していくのが大切なのではないでしょうか。

アプローチとしては、大きく分けて二つ。すなわち、「既存ブロックチェーンへの参加によるコスト削減」「新規プラットフォームの創造」です。

・既存ブロックチェーンへの参加

経済のグローバル化で多国籍企業が当たり前の世の中ですが、国境をまたいでの送金には多大なコストがかかってしまいます。入出金のいずれも手数料がかかるだけでなく、窓口手続きが必須であるため人件費の負担も大きいのです。ここで、ブロックチェーンを使った仮想通貨を活用してコストを下げる方法を考えてみましょう。

仮想通貨というと真っ先にビットコインが思い浮かびます。今後は大手銀行による仮想通貨の発行が増えていくものと思われますが、まだ実験段階のためさしあたりビットコインを利用するのがよいでしょう。ビットコインの送金は銀行窓口での送金と異なり、限りなくゼロに近い手数料で行える上に時間や場所を選びません。よって、会社の資産の一部をビットコインとして持っておけば、送金用として活用することができるのです。

・新規プラットフォームの創造

ビットコインは管理者のいないブロックチェーンですが、管理者のいるブロックチェーンを考えることができます。この仕組みをソフトウェアパッケージ化することで、ビジネスとして利益を生みつつ、運用ノウハウを蓄積することができるでしょう。

ブロックチェーンの特徴は、ご紹介したとおり「書き込まれたことが改ざんされていないことが保証される」というところにあります。この特徴を生かせば、


  • ・物流など多数の関連会社が長期に渡って取引を行う分野に対して、取引情報の共有システムを提供
  • ・コンテンツ制作の分野に対して、著作者の管理システムを提供
  • ・人口密度の低い自治体に対して、遠隔地から住民投票ができるシステムを提供

など、分野を問わずさまざまなプラットフォームが考えられます。

電子的に「内容の正しさ」を保障するブロックチェーン技術は、いままで存在していなかった全く新しい技術だけに、その可能性は未知数です。応用の可能性は無限大といっても過言ではなく、間違いなく大きなチャンスが眠っていることでしょう。
オロとしても積極的に技術を学びながら今後の動向を見守り、ユーザに新しい価値を提供する手段を模索していきたいですね。

この記事を書いた社員

ZACカスタマイズ
開発チーム

「ZAC」のカスタマイズを担当。会計知識の要求される開発の一方で技術のキャッチアップも求められる、専門性の高いチーム。本記事は、一メンバーが自ら学んだ事柄を執筆したもの。