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ERP導入におけるROIとは?算出が難しい理由と高める方法

2025/7/11公開

ERPの導入は決して安い投資ではありません。だからこそ「本当に費用対効果は見込めるのか?」と疑問を持つ方も多いのではないでしょうか。

ERPの導入を検討する際は、事前にROI(投資対効果)を正しく算出する方法を知っておくことが重要です。この記事では、ERP導入におけるROIの計算方法や算出が難しい理由、高める方法について詳しく解説します。

ERP導入におけるROIとは?

ROI(Return on Investment)とは、「投資利益率」を意味し、投資額に対してどれだけの利益が得られたかを示す指標です。

ERP導入におけるROIとは、ERPシステムに投資したコストに対して、どのくらい効果(利益)があった・期待できるかを数値として示すものです。ROIは、ERP導入の妥当性や成果を測るうえで重要な判断材料となります。ERP導入前の効果試算や導入後の投資が成功しているか判断しやすくなり、今後の意思決定にも役立てられます。

ERP導入におけるROIの計算方法

ROIの計算方法は以下のとおりです。

ROI(%)={(総効果 − 総投資コスト)÷ 総投資コスト}× 100

総効果は、ERP導入によって得られるリターンを集計し、数値化したものを指します。総投資コスト(TCO:Total Cost of Ownership)とは、ERPシステムの導入から運用・保守・教育・アップグレードに至るまで、ライフサイクル全体にかかるすべてのコストを指します。

クラウドERPの場合は、総投資コストにライセンス費用(利用料)や保守費用などが含まれます。

ERP導入におけるROIの算出が難しい理由

ERPの導入は、業務の効率化や情報の一元管理など、多くのメリットをもたらします。しかし、これらのメリットを数値化し、投資収益率(ROI)として算出することは難しいものです。ここでは、ERP導入におけるROIの算出が難しい理由について解説します。

数値化しづらい効果が多い

ERP導入のメリットや具体的な効果として、業務の効率化や属人化の解消、情報の一元化などがよく挙げられます。これらは企業全体の生産性向上に寄与しますが、「業務効率がどれくらい改善されたか」「作業時間がどの程度削減されたか」を金額として数値化するのは難しいものです。例えば「売上が○○円増えた」「人件費が○○%削減された」のような明確な金額として測定しにくいため、ERP導入をROIという形で定量的に評価することは難しいといえます。

コストの項目が幅広い

ERP導入にかかる費用は、初期費用だけでなく、下記のような項目も含まれます。

  • 教育・トレーニング費用
  • カスタマイズ・追加開発費用
  • 運用・保守・サポート費用
  • プロジェクトメンバーの人件費

これらのコストを正確に把握し、どこまでを「総投資コスト(TCO)」として含めるかを明確にしなければ、正しいROIの算出はできません。コスト定義の曖昧さもROIの不確実性を高める原因となっています。

成果が出るまでに時間がかかる

ERPの導入成果は、導入直後からすぐに表れるわけではありません。社員がERPを実業務でスムーズに使いこなせるようになるまでには、数カ月から数年かかる場合もあります。 ROIをいつ、どのタイミングで測定すべきか、利益の部分をどのように定義すべきか困難なことも、ROIの算出が難しい理由の一つです。

ERP導入におけるROIの算出ポイント

ROIを正確に算出することで、ERP導入の効果を数値として可視化でき、導入後の効果測定に役立てられます。また導入前にROIを算出すれば、投資に対する経営層の許諾を得やすくなるでしょう。

ここでは、ERP導入におけるROIの算出ポイントについて解説します。

業務効率化で削減できた人件費を数値化する

ERPを導入することで業務効率が向上し、二重入力や手作業による集計などの無駄な作業時間を削減できます。それに伴い人件費(人的コスト)の削減効果も期待できるでしょう。

例えば、月に50時間の工数削減ができ、1時間あたりの人件費が1,000円と仮定した場合、50時間 × 12か月 × 1,000円 = 年間60万円の削減効果が見込まれます。

年間の人件費削減額を正しく明確に見積もることで、ROIの計算方法における「総効果」が算出しやすくなります。

ERPを導入しなかった場合のリスクを把握する

ERP導入のROIを評価する際には、「導入で得られる利益」だけでなく、「導入しなかった場合に生じる損失」を含めて考えることも重要です。例えば、以下のようなリスクが該当します。

  • 担当者の退職による業務の属人化や引き継ぎ不足
  • 手作業による集計ミスや申告漏れ
  • 部門間での情報伝達の遅れによる意思決定の遅延

まずは、これらのリスクによって発生した過去の対応コストや業務損失を整理し、可能な範囲で数値化しましょう。次に、ERP導入によって防げると想定される金額をROIの計算方法における「総効果」に含めます。これにより、現場の実態に即したROI算出が可能となるのです。

長期的なコスト削減効果を見える化する

ERPは初期投資が大きくなりがちですが、導入可否を短期的なコストだけで判断するのは適切ではありません。長期的な視点で見ると、業務の効率化やプロセスの最適化を通じて、徐々にコスト削減の効果が表れることが一般的です。

例えば、導入費用に1,200万円かかったとしても、年間の業務効率化による人件費削減やトラブル対応の削減効果などが合計で400万円あれば、3年で投資回収できる計算になります。このように投資回収年数を具体的な数字で示すことで、ERP導入におけるROIを定量的に説明しやすくなるでしょう

ROI最大化につながるERPの選び方

ROI最大化につながるERPを選ぶ際は、以下の4点を押さえる必要があります。

  • 業務にフィットする柔軟性があるか
  • 導入の目的・ゴールを明確にする
  • 導入後も数年はスムーズに使い続けられるか
  • データ活用・可視化の機能があるか

それぞれのポイントを見ていきましょう。

業務にフィットする柔軟性があるか

ERPの導入効果は、自社の業務プロセスにどれだけ適合するかで大きく変わります。業務に合わないシステムを導入すると、運用面での手間が増えたり、かえって業務効率が低下したりする可能性があります。そのため、標準機能でどこまで自社業務をカバーできるか、柔軟性があるかを事前に見極めることが重要です。

標準機能で対応できれば、過度なカスタマイズや追加開発によるコスト増を防げます。結果的にROIが高まりやすくなるだけではなく、将来的なシステム保守やアップデートの負担軽減にもつながるでしょう

導入の目的・ゴールを明確にする

ERPを選ぶ際は「なぜERPを導入するのか」「どの業務を改善したいのか」を明確にすることも重要です。ERPを導入し「ある作業工数を◯%削減する」「処理にかかる時間を◯日削減する」といった具体的な数値目標を立てることで、ERPの導入効果を可視化しやすくなります。

目標が明確であれば、算出すべきROIも容易になり、効果を定量的に評価しやすくなるでしょう。

導入後も数年はスムーズに使い続けられるか

ERPのROIは、導入後の継続的な活用によって向上していくものです。ERPを選定する際は、現場が無理なく、長期的に使い続けられるかを重視し、操作画面のわかりやすさやマニュアル・サポート体制の充実度などを確認しましょう。

数年先まで使い続けられるかどうかを見据えることで、運用の属人化や無駄な保守コストを抑えられます。結果的にROIを高く維持することが可能です。

データ活用・可視化の機能があるか

ERPは単なる業務効率化にとどまらず、経営判断に役立つデータをリアルタイムで確認できるメリットもあります。特にBI(ビジネスインテリジェンス)機能やダッシュボードの有無は、経営スピードや可視性向上に直結し、ROIの向上にも大きく貢献します。

ERPを選定する際は、データ活用や可視化に対応した機能が備わっているかも確認しましょう。

ROIを高めるためにやるべきこと

ERP導入においてROIを高めるには、ERP導入前の準備、現場の活用推進がカギとなるでしょう。

この章では、ROIを高めるためにやるべきことを3つ紹介します。

目的とKPIを明確にする

ERP導入の目的が曖昧なままだと、成果の基準が不明確となり、ROIの評価にもブレが生じます。例えば「業務効率の改善」「原価管理の精度向上」「意思決定の迅速化」といった目的を明確にし、それに応じたKPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)を設定しましょう。

KPIは具体的かつ測定可能な数値を設定し、定期的に見直すことで、ERP導入の効果を正確に把握しやすくなります。これにより、ROIを具体的に測定・改善することが可能になります。

現場との連携を重視する

どれだけ高機能なERPを導入しても、実際に現場で使われなければ意味がありません。またERPの操作性が悪かったり、業務フローに合っていなかったりすると、現場に定着せず結果としてROIが低下することも考えられます。そのため、導入前から現場の声をヒアリングし、使いやすい運用を目指すことが重要です。

導入後も継続的にフィードバックを収集し、必要に応じて改善を図ることでERPの利用率を高められます。現場と連携した取り組みが、結果としてROIを高めることにつながるのです。

データの活用を前提とした設計にする

ERPを単なる「勤怠や案件管理ツール」「受発注ツール」ではなく、「経営に役立つデータ基盤」として活かす視点も重要です。

例えば各部門のKPIをダッシュボードでリアルタイムに可視化するなど、ERPを経営判断に活かせる情報資産としても設計・活用することが、ROI向上につながります。

ERP導入のポイントを押さえ、ROI最大化を実現

ERP導入におけるROIは、効果を数値化しにくいことや、コストの範囲が広いこと、成果が出るまでに時間がかかることなどから、算出が難しいとされています。

だからこそ、削減された工数や人件費、将来的なコスト削減効果、導入しないことで発生しうるリスクなどを含めて総合的に評価することが重要です。

ERP導入の目的やKPIを明確にし、自社の業務に適した製品を選び、現場と連携して運用体制を整えることで、ROIの最大化を実現できるでしょう。

Q
ERP導入におけるROIとは?
A
ERP導入におけるROIとは、ERPシステムにかけたお金に対して、どのくらい効果(利益)があったかを数値として示すものです。
詳しくはERP導入におけるROIとは?をご覧ください。
Q
ERP導入におけるROIはなぜ算出が難しい?
A
ERP導入におけるROIの算出が難しい主な理由は、ERPの導入効果を数値化しづらい点やコストが幅広い点、成果が出るまで時間がかかる点などです。
詳しくはERP導入におけるROIの算出が難しい理由をご覧ください。

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この記事の筆者

ライター

大久保 直人

2017年からインフラエンジニアとして、保険システムの運用・保守業務に携わる。その後、エンジニアの経験を活かし、Webライターとしての活動を開始。サーバーやネットワーク、クラウドサービス、エンジニア転職といったジャンルを中心に執筆する。現在はフリーランスのライターとして活動中。クラウドツールの活用やDXに関する記事も手掛けている。

この記事の監修者

株式会社オロ クラウドソリューション事業部 マーケティンググループ長

吉井 惇

2013年株式会社オロに新卒入社。クラウドERP「ZAC」の新規営業、人事採用担当、ZACの姉妹製品「Reforma PSA」のプロダクト責任者を歴任。現在は「ZAC」マーケティンググループのグループ長を務める。

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