システム開発におけるプロジェクトの工数管理。よくある課題を解説

2025/12/12公開

システム開発業では、スケジュール管理と利益確保のためにも、各プロジェクトの工数管理が重要です。適切な工数管理を実現するためには、「なぜ工数管理を行うべきなのか」を知り、社内に周知する必要があります。

そこで本記事では、システム開発業における工数管理の重要性とともに、工数管理で起こりがちな課題や成功させるためのポイントをお伝えします。システム開発プロジェクトの工数管理に課題を抱えていたり、これからツール導入を検討していたりする場合はぜひ参考にしてください。

プロジェクトにおける工数管理とは

プロジェクトにおける工数管理とは、作業ごとの時間や担当者を把握し、進捗やコストを適切に調整する管理手法のことです。工数とは、プロジェクトを開始して完了するまでに必要な人数と作業時間のことを指します。

プロジェクトにおける工数管理について、詳しくはこちらの記事を参照してください。

工数管理を適切に行うことで、予定と実績の差異を把握できます。加えて、スケジュール遅延や予算超過の防止、将来の見積精度向上にもつながる点がメリットです。

システム開発業はなぜ工数管理が重要なのか

システム開発において、工数は利益構造を大きく左右する重要な指標となります。なぜなら、エンジニアの稼働時間は原価と直結しており、見積と実績のズレがそのまま利益を左右するからです。

請負型では、エンジニアの工数が膨らむと原価が増え、利益が圧迫されてしまいます。そのため、工数の適切な管理が欠かせません。どの作業にどれくらいの時間をかけているかタイムリーに把握でき、計画より時間がかかっている作業を発見・対策できる点において、工数管理は重要なのです。

担当者ごとの作業時間も明確になるため、生産性低下や長時間労働を防ぐ効果もあります。さらに、過去の工数データを活用すれば、見積もり精度を高め、利益を確保するための計画立案にも役立ちます。

工数の計算方法

見積りにおいて工数は、必要な作業時間を期間単位で割り出し、「人月」「人日」「人時」と表すことがあります。開発にかかる期間は、必要な工数に対して稼働するエンジニアの人数を割る形で算出します。 基本的には次の式で算出できます。

  • 必要期間(月)= 人月の合計 ÷ 人数

たとえば、10人月かかる開発を2人のエンジニアで対応する場合、開発に必要な期間は5ヶ月となります。

1日は8時間、1ヶ月は20日働く前提で考えるのが一般的です。そのため「1人日 = 8時間」、「1人月 = 160時間」として算出されます。

「人月」「人日」「人時」のどれを使って工数の見積りをするかは、プロジェクトの規模であったり、求める工数の粒度の正確性で変わります。

システム開発業の工数管理でよくある課題

上述したように、システム開発業は人員の稼働時間が利益に影響するため、工数管理が重要です。一方で、特有の難しさや課題も存在します。具体的にどのような点が課題になりうるのか見ていきましょう。

見積もりと実績の乖離が発生する

システム開発では、要件変更や新しい技術導入による設計変更といった不確定要素によって、見積よりも実際の工数が膨らむことがよくあります。一方で、思ったより工数がかからないケースもあります。その場合は、本来売上に繋がるはずだったエンジニアのリソースが空いてしまい、収益性に影響が出ます。

いずれにしても、見積と実績の乖離は利益管理や納期調整を難しくし、プロジェクトマネージャーにとって大きな不安要素になります。

進捗・負荷の可視化が難しい

複数プロジェクトを同時進行している場合、各メンバーの作業負荷や進捗状況のリアルタイムな把握は容易ではありません。進捗確認会議などを設けていても、作業の粒度や報告形式がバラバラだったり、会議時点での情報が最新でなかったりするため、日々の正確な状況を全員に確認することは難しいものです。

負荷や進捗が可視化されないことで対応が後手に回り、納期遅延やチーム内の負荷偏りが発生しやすくなります

管理の属人化が改善を阻む

工数は、担当者ごとに独自の方法で記録・管理されるケースが多く、情報が属人化しがちです。各個人の工数は記録されていても、プロジェクト全体の工数管理までできていないことが多くあります。

その結果、データが組織的に活用されず、プロジェクト全体の改善や次回の見積精度向上につなげられないのです。

工数管理を効率化・仕組み化するポイント

システム開発の工数管理を成功させる鍵は、効率化と仕組み化にあります。ここからは、どのような点を意識すればいいのか紹介します。

プロジェクト全体の進捗・負荷を見える化する

複数プロジェクトの進捗状況やメンバーの負荷を全員が一目で把握できる状態を作ることで、リソースの偏りや問題発生への対応が迅速になります。例えば、業務の負荷が高いメンバーのタスクを別のメンバーに振り分けたり、遅延が発生している作業を早期に発見したりできるようになります。

ガントチャートやダッシュボードを使用してタスクや負荷を一覧化すると、タイムリーな判断と改善につながります。

入力しやすい環境を整え、現場の負担を減らす

進捗や負荷を見える化するためにも、まずはメンバーが負担なく工数を入力できる仕組みやテンプレートを用意することが重要です。自然にデータが集まる環境を整えることで、工数入力の協力も得やすくなり、正確な工数データを活用できます。

簡単なフォームを用意したり、モバイル入力できるツールを導入したり、チェックリストを用いたりする方法が有効です。

データを蓄積・活用して改善につなげる

集めた工数データを分析することで、見積もり精度の向上や業務改善に活用でき、プロジェクト成功の可能性を高められます。過去の実績を次回の計画に反映したり、課題の多い作業工程を改善する仕組みを作ったりすることが、工数管理を効率化するポイントです。

工数管理ツールの選び方と具体例

上記のポイントを押さえて工数管理の効率化・仕組み化するには、工数管理ツールの活用がおすすめです。工数管理ツールを活用すると、プロジェクト全体の進捗やメンバーの負荷状況をリアルタイムで把握できます。入力と分析の両面で利便性が向上するでしょう。

Excelなどでも集計や簡単なグラフ化は可能ですが、複数プロジェクトを同時進行している場合やデータ量が増える場合は限界があるなど、会社の規模やプロジェクトの数によって、自社に合うツールは異なります。以下に代表的なツールを紹介するので、メリットとデメリットを理解し、自社に合う工数管理ツールを選んでください。

Excel・スプレッドシート

Excelやスプレッドシートは他業務でも使われることが多く、使い方のレクチャーが不要で、すぐ使い始められる点がメリットです。入力する情報や表示形式などの自由度が高いため、テンプレート作成や集計表のカスタマイズなど、自社の業務やプロジェクトに合わせて活用できます。

一方、自由度が高い反面、関数やマクロが複雑化し、管理が難しくなりがちです。誤操作によるデータ消失リスクもあります。また、Excelは同時編集ができなかったりデータ管理が属人化しやすかったりといった課題もあります。

グループウェア

社内の情報共有やコミュニケーションツールとして利用されるグループウェアに、プロジェクトの進捗や工数を確認できる機能がついているものも有用です。もともと利用しているグループウェアにその機能がついていれば、オプション料金のみで利用できるなど、手軽に使い始められます

社内に浸透しているツールであれば、工数管理ツールとしても導入しやすいはずです。ただし、専用の工数管理ツールほど機能が充実しているわけではないため、プロジェクト管理や工数管理を強化したい場合に不足感が出てくるかもしれません。

工数管理・プロジェクト管理ツール

工数管理やプロジェクト管理に特化したツールは、システム開発業など工数管理が重要な業種に適しています。タスク管理や工数集計など必要な機能が揃っており、初めてでも使いやすい点が特徴です。外部サービスと連携ができるツールも豊富にあります

工数管理に特化したツールとはいえ、さまざまな機能が備わっているため、使い方が浸透するまで活用できない可能性があります。また、カスタマイズが可能であっても、欲しい機能が不足することがあるため、あらかじめ確認が必要です。

ERP

ERPとは、企業の持つ資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一か所に集めて管理し、有効活用するシステムを指します。社内の情報を一元管理できるため、データの二重入力や情報の更新漏れを防ぐことができ、資源情報の入力や管理を効率化できます。 ただし、システム規模が大きいため、工数管理やプロジェクト管理のみの目的で利用するには単一のツール・システムよりも導入期間・費用がかかってしまう点に注意しましょう。

利益を守る工数管理を実現するには

工数管理は、システム開発プロジェクトの利益と進捗を左右する重要な要素です。リアルタイムで工数情報を把握し、データを蓄積・活用できる仕組みがあれば、見積もり精度や業務改善にもつながります。

Excelや他の管理ツールでも工数管理は可能ですが、複数プロジェクトを同時に進める場合や、より精度の高い利益管理が求められる場合には、業種・業態にあった専用のERPの活用が効果的です。

なかでも本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』は、進捗中のプロジェクトに工数を紐づけて、リアルタイムで記録・集計でき、プロジェクトの進捗や負荷状況を可視化できるという強みがあります。データを見積もりや業務改善に活かすことで、工数管理の定着をサポート可能です。 ZACはIT・システム開発業に特化したERPであることから、業界ならではの特徴や困りごとを押さえたシステムとなっています。

まとめ

メンバーの稼働時間が利益に直結するシステム開発業では、各プロジェクトの工数を正確かつタイムリーに管理することが肝要です。とはいえ、工数管理は属人化しやすく、正確な情報をリアルタイムに把握するのは容易ではありません。工数の見積もりと実績に乖離が生じるといった課題も生まれます。

そのような課題も、工数入力しやすい環境の整備や工数の可視化、これまでのデータの蓄積・活用によって解消できます。工数管理を効率化するには、仕組みとして根付かせることが欠かせません。そこで役立つのが工数管理ツールです。

ビジネスで広く使われているExcelだけでなく、工数管理に特化したツールや、グループウェアの機能、ERPなどを利用することで工数管理をより効率化できます。なかでもZACは、システム開発業に特化したERPとして、工数のリアルタイム可視化や過去データの活用を通じて、工数管理の定着と利益管理の精度向上を支援できます。これから導入を検討する企業にとって、有力な選択肢となるでしょう。

Q
なぜシステム開発業は工数管理が重要なのか
A
システム開発において、工数は利益に大きな影響を与える要な指標となります。プロジェクトメンバーの負担平準化や見積もり精度向上においても工数管理が欠かせません。詳しくはシステム開発業はなぜ工数管理が重要なのかをご覧ください。
Q
システム開発業の工数管理でよくある課題は?
A
システム開発業の工数管理では、以下3点の課題が起こりがちです。
見積もりと実績の乖離が発生する
進捗・負荷の可視化が難しい
管理の属人化が改善を阻む
詳しくはシステム開発業の工数管理でよくある課題をご覧ください。

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この記事の筆者

ライター

矢野 由起

製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

この記事の監修者

株式会社オロ クラウドソリューション事業部 マーケティンググループ

高安 健次

2022年入社以降、クラウドERP「ZAC」のデジタルマーケティングを担当。前職のWeb制作・システム受託開発会社の経験を活かし、「ZAC」の製品サイトの運営やデジタル広告、マーケティングデータ分析業務に携わる。

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