IT企業の工数管理はなぜ重要?よくある課題と効率化の方法を解説

2025/11/15公開

人件費の比率が高いIT企業では、収益性や業務効率を高めるために、プロジェクトごとの工数を正確に管理することが欠かせません。
しかし、工数管理は手間がかかるうえに、経営判断に十分活かされないことも多く、現場では「やっても意味がない」と感じる従業員も少なくないのが実情です。

そこで本記事では、IT企業における工数管理の重要性や管理のコツ、実際にうまく管理して成功した事例を紹介します。収益性向上や効率的なプロジェクト管理を実現したいIT企業は、ぜひ参考にしてください。

工数管理とは

工数管理とは、従業員がどの業務にどれだけの時間を使ったかを記録・集計し、業務負荷の把握やプロジェクトのコスト管理、生産性の改善などに活用する管理方法です。プロジェクトにどれだけ人件費がかかっているかを明確にできます。

この情報は、プロジェクトの採算性を判断したり、業務の改善策を立てるうえで欠かせません。一般的には日報やタイムシートで管理されることが多く、プロジェクト管理や原価管理の基盤にもなります。

工数管理について、詳しくはこちらの記事を参照ください。

IT企業における工数管理の重要性

どのような企業でも、工数管理を行なって業務負荷やコスト、生産性を測ることは重要です。特にIT企業のように、コストの大半を人件費が占めることが多い場合、コストの大半を人件費が占めるため、工数管理は欠かせないものとなります。IT企業で工数管理がなぜ重要なのか、詳しく見ていきましょう。

プロジェクトの進捗を正確に把握できる

工数を集計することで、各タスクにかかった時間と計画との差分を数値で確認できます。進捗が見えるようになれば、開発やテストの工程で発生する遅延や負荷の偏りを早期に発見可能です。

その結果、追加リソースの投入や優先順位の見直しなど、適切な対策をすぐに講じられます。関係者への情報共有もスピーディーに行えるため、追加人員の補填などもすぐに実施できるのです

利益構造の改善につながる

IT企業のプロジェクトは、人件費がコストの大部分を占めることが多く、どの作業にどれだけの工数がかかったかの把握が、利益確保のカギを握ります。工数管理を通じて、どの工程で利益が出ていて、どこで赤字が生じているかを明らかにすることで、見積もりの精度を高めたり、業務プロセスを改善したりできます

「気づけば工数がオーバーして利益率が下がっていた」という事態を防ぎ、収益性の高いプロジェクトマネジメントへつなげられます。さらに、非効率な工程を特定して自動化や外注を検討するなど、利益構造の改善につなげることも可能です。

限られた人員・工数を最適に配分できる

IT企業は、限られた人員で複数のプロジェクトを並行して進めることが一般的です。一人ひとりに無理なく業務を割り振ると同時に、納期を守れるよう効率的な業務推進が求められます。

そこで大切なのが、工数管理を行い、誰が、どれだけ、作業を実施したのかを正確に把握することです。正しい工数管理によって、従業員の負荷の偏りを防ぎながら、効率的に業務を進められますプロジェクトのスケジュール遅延を防ぐことにもつながります。

過去データを工数見積もりに活用できる

工数管理によって蓄積された過去のプロジェクトデータは、次回以降の見積もりやスケジュール策定の参考として活用可能です。具体的には、計画と実績で工数の乖離が大きかった工程は、次回から工数を増やして見積もり、不採算を防げるといったことが考えられます。

特にIT企業では、案件ごとに工程や工数が異なるケースが多いため、実績データに基づく判断は、精度の高いリソース計画や見積もりにつながります。勘や経験だけに頼らない、データを活用した効率的なプロジェクト運営が可能になるのです。

IT企業の工数管理運用でよくある課題

IT企業における工数管理の重要性を分かっていても、うまく運用できないケースは多々あります。工数管理が形だけの記録になってしまったり、現場で積極的に活用されなかったりすることも多いのが現状です。

IT企業が工数管理を行ううえで直面しやすい課題は、主に以下の3点です。

①Excel中心の管理で、入力ミスや属人化が発生

IT企業ではプロジェクト単位での業務が多く、工数管理の重要性は高いものの、いまだにExcelで管理しているケースも少なくありません。しかし、Excelへの手入力による記録はミスが起きやすく、数式の崩れや更新漏れなども頻発しがちです。

その結果、管理が属人化し、せっかくのデータが十分に活用されないこともあります。こうした状況は、担当者自身も「工数管理が面倒に感じる」「価値が薄い」と思う原因になりやすく、改善が必要です。

②データが分断され、経営判断に活かしきれない

プロジェクトの収支管理や原価管理などと工数管理を別々のツールでバラバラに管理していると、プロジェクトの原価や利益を全体で把握するのが難しくなります。その結果、現場で記録された工数が、経営層の意思決定につながらず、現場の数字が経営に活かされないという状態になりかねません。

本来は工数データをもとにプロジェクトの収益性を高めたり、効率の良いプロジェクト運営ができたりするため、データを活用できないのは非常にもったいない状態です。リソース配分の誤りや意思決定の遅れにつながるリスクもあるため、統合的なデータ管理が求められます。

③工数を記録するだけで終わってしまっている

日々、案件ごとに工数を記録していても、そのデータがどう活用されているのか分からないケースもあります。集めた工数が分析や改善に結びつかず、ただ単にデータが蓄積されているだけで終わってしまっているのです。

こうした状況では、現場の従業員も「記録しても意味がない」と感じ、モチベーションも低下します。

IT企業が工数管理を効率化するための方法

上記のような課題を解消し、工数管理を正確かつ効率的に行うには、以下のポイントを押さえることが重要です。

工数データとプロジェクト情報を一元化し連携させる

工数管理を効率化するには、単に工数データを集めるだけでなく、 プロジェクトの進捗やタスク、さらに売上や利益といった数値情報もあわせて管理することが欠かせません

それらを一元的に把握することで、作業効率だけでなく、プロジェクト全体の採算性を高める判断にもつなげることができます。

これらを一元管理することで、現場の状況をリアルタイムに把握でき、ズレや重複を防ぎながら正確な工数管理が可能になります。複数のツールに入力しなくて済めば、現場の従業員の負担も軽減できます。

管理者がリアルタイムで状況把握できる体制を作る

プロジェクトを円滑に進めるには、管理者が現場の工数や進捗をすぐに把握できる環境が不可欠です。

リアルタイムで進捗状況を把握できる体制が整えば、問題の早期発見や迅速な対応が可能となり、プロジェクト全体の精度と進行スピードが向上します。そのためにも、タイムリーな工数の入力と見える化ができることが大切です。

専用ツールやクラウドERPを導入する

工数管理を手作業で行っていると、入力ミスや担当者依存の運用が発生しやすくなります。そこで、工数管理に特化した専用ツールやクラウドERPを導入することがおすすめです。

これらのツールを活用することで、入力フォーマットの統一やチェック機能を活用できます。作業精度の向上や運用の標準化も期待でき、効率的な工数管理が実現可能です。また、複数プロジェクトの工数を一元管理したり、経営層がリアルタイムで収益性を把握したりすることもできます。

ERPの活用で工数管理を効率化したIT業の成功事例

上記で紹介したように、プロジェクトにおける工数管理の効率化にはクラウドERPの導入も効果的です。そこでここからは、本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』を導入して工数管理を効率化できたIT企業の事例を紹介します。

ERPの活用によって、どのようにプロジェクト工数管理を改善できるのか見ていきましょう。

①AZAPAエンジニアリング株式会社様

自動車分野の新技術開発ソリューションを提供するAZAPAエンジニアリング株式会社様は、手作業で行うことが難しい原価配賦をシステム上で行うべくZACを導入されました。

ZACは、入力された案件情報と工数をもとにシステムが自動で原価配賦を行います。これにより、計算の手間なく、工数を含めた原価管理を正確に行えるようになったそうです。さらに「このときは残業が多かった」「外注費が多かった」など、案件ごとの利益率の要因分析に役立てられています。精度の高い利益予測が立てられるようになり、残業が多く、利益率が悪くなりつつある案件を発見して、すぐに対策を打てるようになりました

このことは、AZAPAエンジニアリング様のクライアントにも喜ばれるようになったと語っております。ZACによってリアルタイムな案件の稼働状況や利益を把握できるようになり、データに基づいた経営管理が実現しました

②日本ディクス株式会社様

システム開発からシステムインフラの設計・構築、エンジニア派遣まで、ITのワンストップサービスを幅広く提供している日本ディクス株式会社様。従来は表計算ソフトで工数管理を行っていましたが、従業員の増加に伴い手作業による管理が追いつかなくなりました。

タイムリーな案件別の損益分析や他システムとの連携、入力統制ができないといった課題もあったことから、ZACを導入。ZAC導入後は、データの入力統制が効き、必要なデータを必要なときに揃えられるようになりました。

その結果、案件別や事業別損益といった管理会計上のデータがスピーディーに把握でき、対応が必要なプロジェクトも即座に手を打つことができるようになったと言います。工期の長いプロジェクトでも、月末の締めを待たずに最終損益予測を確認できるため、適切なマネジメントが実現しました。

工数管理が、IT企業の成長を左右する

IT企業における工数管理は、プロジェクトごとの原価や利益を正確に把握し、経営判断のスピードと精度を高める重要な役割を担っています。複数のプロジェクトや多様なタスクを抱えるIT業界では、工数管理の精度が利益構造の改善やリソースの最適配分に直結します。

ZACを活用すれば、工数・進捗・コストを一元管理し、リアルタイムで正確なデータを経営に活かせます。IT企業のように、並行する複数プロジェクトや長期にわたるプロジェクトもスムーズに現場把握でき、経営判断の質とスピードを大きく向上させられます。さらに、手作業のExcel管理では難しい横断的な損益分析やリソース配分の最適化も実現できるため、プロジェクトの効率化と収益性の改善を同時に達成可能です。

まとめ

IT企業では、従業員がどの業務にどれだけの時間をかけているかが事業の収益性に直結します。そのため、工数管理が非常に重要です。工数管理が手作業でミスが発生したり、データが一元化されず、正確な工数をふまえた総合的な経営判断ができなかったりと、工数管理に課題を抱えるIT 企業は多いものです。

専用ツールやERPを活用することで、正確な工数の可視化だけでなく進捗やその他のコストも一元管理でき、リアルタイムで情報を確認できます。経営判断のスピードや質を高めたいIT企業なら、ぜひZACのようなERPやツールを活用して、正確かつタイムリーな工数管理を実施してください。

Q
IT企業における工数管理が重要な理由は?
A
人件費がコストの大半を占めるIT企業では、工数管理が事業の収益性やプロジェクト運営に直結します。具体的には以下の点において重要です。
・プロジェクトの進捗を正確に把握できる
・利益構造の改善につながる
・限られた人員・工数を最適に配分できる
・過去データを工数見積もりに活用できる
詳しくはIT企業における工数管理の重要性をご覧ください。
Q
IT企業の工数管理運用でよくある課題は?
A
正確に工数管理が行えていないと、以下のような点が課題になりがちです。
・Excel中心の管理で、入力ミスや属人化が発生
・データが分断され、経営判断に活かしきれない
・工数を記録するだけで終わってしまっている
詳しくはIT企業の工数管理運用でよくある課題をご覧ください。

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この記事の筆者

ライター

矢野 由起

製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

この記事の監修者

株式会社オロ クラウドソリューション事業部 マーケティンググループ長

吉井 惇

2013年株式会社オロに新卒入社。クラウドERP「ZAC」の新規営業、人事採用担当、ZACの姉妹製品「Reforma PSA」のプロダクト責任者を歴任。現在は「ZAC」マーケティンググループのグループ長を務める。

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