Web制作会社の業務を効率化する「二度とやらない」マインド

2020/11/10公開

Web制作会社と聞くと、終電ギリギリまでの勤務、会社への泊まり込み、休日出勤など、忙しいイメージを抱く人も少なくないでしょう。しかし、人材の定着を図り、コンプライアンス意識の高い企業と取引を行うためにも、いわゆる "ブラック"な働き方から脱却し、労務環境を改善することが必要です。そのためにはいかに効率よく業務を回し、より多くの案件を"さばく"かが重要になってきます。
この記事では、労働環境改善のポイントとなる日々の業務プロセスの振り返りについてや、業務効率化ツールを導入した適切な業務管理のあり方をご紹介します。

Web制作会社がいつも忙しいのはなぜか

Web制作会社の忙しさの背景には、受託型ビジネス特有の性質や、常に複数案件が並行していること、工数見積の難しさなどがあります。それぞれの要因について詳しく見てみましょう。

1.受託型ビジネス特有の忙しさ

Web制作会社は、企業など外部のクライアントから依頼を受けて制作を行っています。「こんなイメージのサイトにしたい」「こんなコンテンツを盛り込みたい」「こんな効果を狙いたい」といった制作物への期待にどれだけ応えられるかがいわゆる「クオリティ」として評価されます。このクオリティと同時に、重要視されるのが「納期」です

制作現場の働き方の現状

どんなにクオリティの高いWebサイトを作っても、いわゆる「受託型ビジネス」である以上、納期を守れなければ会社としての信頼を落としてしまうことになります。そのため、制作スケジュール上やむを得ず残業したり、休日出勤をしたりすることも珍しくないのです。一般的にWeb業界に「忙しいのが当たり前」といった認識があるのは、こういった変則的な労働時間も一つの要因と言えるでしょう。ちなみにWeb制作会社の多くは、一人ひとりの従業員が労働時間をある程度自由に調整できる「フレックスタイム制」や「裁量労働制」を取り入れています。

予期せぬ修正による工数増加

Web制作会社が納期直前に忙しくなる原因として、クライアントからの修正依頼があります。クライアントはWeb制作のプロではないため、コーディング後や、場合によっては公開直前にデザインの変更依頼が発生するなど、無意識的に"やっかいな状況"を作り出してしまうのです。

特に広告代理店経由の案件では、イベントやCMなど他チャネルの施策と連動している場合も多く、関わる人員も代理店の制作部門や営業部門、代理店の先にいるエンドクライアントの担当者など多岐に渡ります。ただでさえ複雑なWebサイトの制作工程ですが、たくさんの人が携わることで小さなズレが積み重なり、その穴埋めのために、Web制作会社の忙しい状況が生み出されてしまうのです。

2.複数案件が並行する

先述のようにWeb制作会社は受託型ビジネスであるため、「いかに多くの案件を受注し、効率よく納品するか」が売り上げに直結します。サーバー保持や自社サービスなど毎月安定した売り上げがある場合は別として、オフィスの管理費や従業員の人件費をまかなうため、スタッフ一丸となってたくさんの案件を"さばいて"いかなくてはならないのです。

こうした背景からWeb制作会社では複数の案件が同時進行しており、どれか一つの案件が落ち着いても、他の案件が山場を迎えているといったことも珍しくありません。これもまた、常に忙しい状況が生まれている要因と言えるでしょう。

3.工数見積の難易度が高い

決まった規格の製品を作り続ける製造業などと比較して、Web制作の工数見積は難易度が高いのも事実です。実際の工数が見積よりも増えてしまうことで、そのリカバリーのため時間に追われてしまうのはよくあるケースです。

なぜ見積の段階で正確な工数が算定できないのか、その代表的な要因を2件ご紹介します。

同じ条件の案件がほとんど存在しない

Web制作の仕事は、いわゆる「オーダーメイド」です。クライアントの希望に合わせてデザインを考えたり、コンテンツを加えたり、UI/UXを追求したり...。唯一無二のものをゼロから作り出すという、クリエイティブかつ大きなやりがいのある仕事です。その反面、予算や社内事情、成果物に望まれることなど、案件ごとに条件が異なることが一般的です。表面的には同じようなサイトを完成させる場合でも、そのプロセスに大きな違いがあることも珍しくありません。

忙しいために十分な振り返りができない

見積の精度を上げるためには、PDCA(Plan:計画を立てる、Do:計画を実行する、Check:行動を評価する、Action:改善して次に繋げる)を回し、ブラッシュアップしていくことが大切です。しかし多忙を極めるWeb制作会社では、"評価"と"改善"が十分になされないまま新たな"計画"がスタートし、次の"実行"へと移されてしまうケースが多く発生しています。

多忙なWeb制作会社にこそ必要な「二度とやらない」マインド

クライアントからの難しい要望に対応したり、いくつもの案件を同時に進めたり、とにかく忙しいWeb制作会社。だからこそ、日々の小さな無駄を省いたり、ミスを少なくしたりすることが業務の効率化にも繋がってくるのです。すぐに取り入れられそうな例をいくつか紹介します。

1.「毎回やっている」作業をなくす

日々の業務の中で、「前にも同じような資料を作ったな」「毎回ファイルを見つけるのに時間がかかるな」「前に似た案件やったことがあるけど、どれだったかな」などと感じたことはありませんか? こういった些細な不自由さに、業務を効率化するヒントが隠されています

例えば、次のような小さな改善でも、チームみんなでやることで大きな時間の節約になります。

「毎回手入力」をなくす

  • ChatworkやSlack、Messengerなどのコミュニケーションツールを使用することで、メールの定型文「お疲れ様です。」「お世話になっております。」などを省略できるようにする
  • 進捗報告など頻繁に送るメッセージは定型文として登録しておく

「毎回一から作成」をなくす

  • 提案書や見積もりなど、他の案件に転用できる資料をテンプレート化する
  • ファイル名やフォルダ名の命名規則を決める

「毎回探す」をなくす

  • よく使う事例や参考サイトなどをストックしておく
  • 提案資料やデザインデータ等の格納場所を決めておく
  • 毎回検索するキーワードはスニペットツールに登録しておく

「毎回立ち止まって考える」をなくす

  • 「さっきまで何してたっけ?」と手が止まる時間をなくすため、事前に作業内容をカレンダーアプリに登録し、今が何の時間かを常に可視化する

「毎回やっている」と感じる作業を思いつく限りリストアップしたら、それらを

  1. 毎日
  2. 毎週
  3. 毎月

と、発生している頻度別に分類してみてください。

優先順位を毎日>毎週>毎月として対策していけば、「同じ作業を二度とやらない」というマインドで、効率の悪い作業を徐々に潰していくことができるはずです。

2.「毎回ミスする」原因をなくす

サイトの品質に関わる大きなミスはもちろんですが、日々の制作業務で発生しがちな小さなミスを防ぐことも、業務効率の向上に繋がります

  • 「毎回タイプミス」をなくす
    毎度同じタイプミスや変換ミスをするフレーズを予測変換やスニペットツールに登録しておき、すぐ呼び出せるようにする
  • 「毎回あとから修正」をなくす
    サイト全体の表記揺れを防ぐために、軸となる表記ルールをあらかじめ決めておく
  • 「毎回忘れる」をなくす
    タスク漏れやMTGへの出席を忘れないよう、カレンダーやチャットツールのリマインド機能を活用する

小さなミスだからと毎回なおざりにしないことが、業務効率化への近道です。タイプミスしたそのタイミングでスニペットツールに登録する、MTGを忘れそうになったタイミングでリマインダーに登録するなど、最短で改善していきましょう。

3.「毎回納期に間に合わない」と徹底的に戦う

寝る間も惜しんで業務にあたっているにも関わらず、なぜか毎回納期に間に合わない。こんな悪循環に覚えはありませんか? 先にも述べたように、Web制作の多くの現場では、目の前の業務に追われて評価と改善がおざなりになっているのが現状です。

そこでまずは各案件の終了後、どんなに忙しくても、プロジェクトのメンバー全員が集まり振り返りをする習慣を作ってみてください。今までそうした習慣がない場合には、周囲の協力が得にくい可能性もありますが、「振り返りまでが業務」「振り返ることで次回以降の業務がスムーズになる」という意識を共有することができれば、習慣化も現実味を帯びてくるはずです。

案件が終了したら1週間以内にメンバーが集まる場を設け、記憶が鮮明に残っているうちに反省点を話し合うようにしましょう。また、クライアントからのポジティブな評価や、チームとして良かった点も共有できると、デザイナー・エンジニアなどフロントに立たないメンバーのモチベーションの維持・向上にもつながります。

問題を感じる点があった場合には、その場で改善方法を提案しあい、次回以降の業務にどのように落とし込んでいくかまで、具体的に決めることが大切です。

仕様変更によるスケジュール遅延とどう向き合うか

Web制作の現場で大きなスケジュール遅延につながりやすいのが、仕様確定後の変更依頼です。一般的には、ワイヤーフレームやデザインそれぞれに確定のタイミングを設け、その後に次の工程に入ります。しかし、「確定」の意味の説明不足や認識齟齬、クライアント社内のやむを得ない事情などにより、確定後にも関わらず変更を依頼されるケースもあります。

日々の細かな業務効率化に加えて、バッファの設け方や各フェーズにおける変更依頼への対処など、大きな要素についても会社として対応の仕方をルール化しておくことが大切です。

プロジェクト後半での大きな修正は、クライアントの要望に応えたいというホスピタリティと、あらかじめ決められた納期との間で葛藤を生みます。

  • この時点で確定した仕様は、原則あとから変更不可
  • それでも修正対応が必要な場合はスケジュールや費用が追加となる

といったことを契約時に定めておくことで事故を防げるケースもあります。また、トップダウン型のクライアントの場合は、プロジェクトの早い段階で決裁者を巻き込み、早めの合意形成をしておくといった、プロデューサーやディレクターのスキルも問われるでしょう。

こうした「もしもの場合」の対応策を定めておくことで、大きなトラブルを避けることができます。一方で、連鎖的に他の案件に影響を与えたり、場合によっては追加で見積もったスケジュールや費用をクライアントに容認してもらえないこともあります。問題のそもそもの原因を潰すためにも、工数見積の精度を上げる対策が必要です。

毎回ズレる工数の見積精度を上げる方法

工数を精確に見積もるにはどのような方法があるのでしょうか。もちろん同じような案件でも、クライアントや担当チーム、メンバーによって作業時間が異なることはあります。しかし、振り返りのプロセスを効果的に導入できれば、その精度をより高いものにすることが可能です。

予定以上の工数がかかったパターンを分析する

実際に工数が見積よりも膨らんでしまった案件をもとにして、どのような理由で見積にズレが生じたかを分析してみましょう。この原因は必ずしもいつも同じわけではないので、振り返りできる案件が複数あれば、それぞれの振り返りをするとより効果的です。

よくあるパターンとしては、毎回同じ見積フォーマットを使っているために実際は工数見積をしていない(形骸化している)ケースや、「納期も短いし、がんばればこのくらいで足りるだろう」という想定で作業時間を少なく見積もるケースなどがあります。また、経験の浅いメンバーの場合は会社の標準的な工数よりも多く時間がかかっている場合もあります。

チェックポイント
  • 見積フォーマットは常にアップデートされて、活用されているか?
  • がんばる想定で見積もっていないか?
  • メンバーの経験値やスキルを考慮した見積もりになっているか?

マネージャーとしてチーム単位で振り返りを行う場合は、チームメンバーへのヒアリングも大切です。その際には、あくまでも評価が目的ではなく会社やチームとしての見積精度の向上が目的だということを明らかにし、実際の見積方法を率直に話してもらえるようにしましょう。

パターンに応じた改善方法を見つける

どのような理由で工数の見積と実績に乖離が生じているかを把握できたら、原因に応じた対策をしていきましょう。

覚えておきたいポイントは、最初からいきなり精確な見積ができるようになるわけではないということです。繰り返しお伝えしているように、案件固有の事情も影響するので、会社やチームで協力し、少しずつ予実を合わせていくことを意識しましょう。

下に紹介するのは、パターン別の改善方法の例です。

フォーマット転用し、実際は都度工数見積をしていないケース

この場合はまず、案件ごとの条件に合わせて都度見積もりを行うことが第一歩です。最初は根拠が出しにくい場合もありますが、業務経験がある場合は、まず過去の作業時間をもとに見積を作成してみましょう。

ただし、この方法では想定よりも工数が膨らむことがあるので、細かい作業ごとに実際にかかった時間を記録・把握し、次の案件に反映させることで精度を高めていく必要があります。

「がんばれば間に合う」と、ミニマムで工数を見積もるケース

「クライアントが早めに確認をしてくれればいける」「他の案件が立て込まなければ大丈夫」など、楽観的かつ責任感の強いタイプが陥りがちかもしれません。前向きな気持ちで多くの案件をこなす心意気は素晴らしいですが、結果的に作業が遅延することで迷惑をかけてしまっては、きっと自分も周りも辛い思いをするでしょう。

このケースでは、

  1. 見積に対するマインドの刷新
  2. 実際の見積のブラッシュアップ

の2軸でアプローチする必要があります。

工数見積に対するマインドの刷新

工数見積は「がんばる気持ちをアピールする場」ではなく、自分と周りのリソース配分を決定するための重要な資料です。特に新人のエンジニアやデザイナーは、多くの時間がかかると伝えることで「仕事ができない」と思われるのではないかと無理な工数見積もりをしているかもしれません。先輩社員や上司の口から「精確な工数見積もりの価値」について繰り返し伝えることが大切です

実際の見積のブラッシュアップ

計画段階の想定と、案件終了後の実働時間の差を算出し、どこで想定外の時間がかかったかを把握することで、次の見積ではどこに多めに時間を算出すればよいのかが見えてきます。

経験の浅いメンバーの作業が遅延するケース

このケースでの改善方法として、もしスタッフが個々に工数見積を出している会社であれば、教育担当など経験が多いメンバーに協力してもらって見積をするとよいでしょう。同じ業務をしているメンバーであれば、スキルレベルが正確に把握できるため、「この作業は通常よりも◯時間多く見積もったほうが良い」など、ある程度の根拠を持って見積ができます。

まとめ

なるべく多くの案件を受注し、効率よく納品することが売り上げに直結するWeb制作会社。精緻な工数見積を行えば、「いつも忙しい」「納期に間に合わない」といった悪循環から脱却できる日もそう遠くないはずです。

まずは日々の業務を振り返り、「毎回やっている作業」や「毎回ミスすること」はないか、改めて考えてみてください。「同じ失敗を二度と繰り返さない」というマインドこそ、業務効率向上への第一歩となるでしょう。

工数見積改善マニュアル

工数見積もりの精度を上げる。それはシンプルなように見えて、難しい課題です。この資料では、工数見積もりがうまくいかない原因をタイプ別に分類。改善に必要な9つのステップをチャート形式でまとめました。

無料ダウンロード

この記事の筆者

ZAC BLOG編集部

クラウドERP開発・導入の経験から蓄積された知見に基づき、業務効率化・管理会計・原価計算・ERPに関するテーマを中心に、生産性向上に役立つ情報をお届けします。

この記事の監修者

株式会社オロ クラウドソリューション事業部 マーケティンググループ コンテンツマーケター

犬塚 菜々美

2012年からシステムエンジニアとしてERPパッケージソフトの開発に3年半従事。その際に身につけた業務知識やERPの知識を活かし、株式会社オロではクラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。WebディレクターやSEOコンサルティングの経験を持ち、オウンドメディアの運営やホワイトペーパーの制作、セミナーの運営を担当。

人気のお役立ち資料