クリエイティブ業務における内製・外注のメリットと判断基準

2020/10/16公開

ウェブサイトやバナー、動画や印刷物の制作など、いわゆるクリエイティブと呼ばれる業務。これらは、プロジェクトのスタートから完了までを社内で進めることで統一感とスピード感のある制作ができますが、状況によっては外注することも必要です。しかし、外注と内製の使い分けの判断に迷うことは多いと思います。

そこでこの記事では、内製と外注それぞれのメリットと使い分けの判断基準について、考え方をお伝えします。どのような業務をどういった軸で判断すべきなのか、ぜひ押さえておきましょう。

クリエイティブ業務の種類

一口にクリエイティブと呼ばれる仕事の中にも、いろいろなタイプの業務や制作物があります。まずは具体的にどのようなクリエイティブ業務があるのか、いくつか例を見てみましょう。

Web制作

Webサイトのデザインは様々です。視認性や使い勝手の良さといったユーザビリティや、コンテンツの構成に代表される情報設計など、考えるべきポイントは数多くあります。Webデザインよって、サービスサイトであれば企業の印象が、ECサイトであれば商品の購入率が左右されることも少なくありません。新たにサイトを制作する場合やリニューアルなど、プロジェクトの規模が大きくなる場合は外注し、頻度が高いものの軽微な更新作業であれば内製で行うケースもあります。

動画制作

Webサイトのコンテンツや、広告素材などで動画が必要な場合、動画を制作するという業務が当然発生します。大まかには、企画や具体的な構成を考え、カットごとに撮影し、その映像を編集するという作業が必要です。

一般的には、動画はWebよりも制作を内製化している企業が少ないでしょう。その理由として考えられるのは、クオリティの高い動画を作る場合には、専用の機材やソフトウェアを使わなければならず、専門性の高い業務となること。そして、ディレクターやカメラマンといったクリエイターの多くは、フリーランスか制作会社に所属して働くスタイルが定着しているためです。

バナー制作

Webサイト上の導線の役割や広告に必要なバナーですが、これもデザイン性や訴求力の高さが求められる仕事です。写真の加工やイラストの作成、コピー(テキスト)を配置するためのソフトや、それを扱えるスキルが必要ですので、制作ボリュームやクオリティによっては外注することも多い業務です。

社内報の制作

社内のコミュニケーションや企業理念の浸透などを目的として作られるのが社内報です。発行するまでには、テーマや台割(ページ構成)を決め、原稿作りや写真撮影をするなど、多くの工程があります。冊子として発行する場合は、これらの工程に加えて印刷や製本作業も発生します。動画と同じく、編集プロダクションなどに外注するケースは多くあります。

提案資料制作

社内の稟議資料やオリエンテーション資料など、プロジェクトに関する提案資料を作成するのもクリエイティブ業務のひとつと言ってよいでしょう。データを見やすくまとめたり、目に留まるようなキャッチコピーを考えたりなど、デザインやコピーライティングの技術が問われます。実際に一部の大企業では、社員が用意した資料の構成をもとに、レイアウト調整や図表の挿入といった見た目を美しくするための作業を外注しているケースもあります。

クリエイティブ業務を内製で行う3つのメリット

多岐に渡るクリエイティブ業務ですが、デザインチームやWeb開発チームなど、社内でその業務を担当する部署や担当者を置くことで、次のようなメリットがあります。

①コミュニケーションが円滑に取れる

クリエイティブの制作プロセスでは、細かなデザインの修正や日程の調整など検討すべきことが多いもの。内製であれば、制作に関わる人が常に社内にいるので、直接会って話がしやすいというメリットがあります。加えて、社内の共通言語や事情に精通している人同士でやりとりをするため、スムーズなコミュニケーションが実現します。その分、制作もスピーディーに進めやすいでしょう。他にも、急な修正や打ち合わせも対応しやすいという柔軟性もあります。

②制作物に一貫性がある

社内にいるスタッフであれば、これまで作ってきた制作物を知っているため、新しいものを作るにしても「その企業らしさ」を出すことができます。企業風土や表現のトンマナ(=トーン&マナー)を理解していることで、一貫性のある制作が可能になるのです。外注する場合は、まず自社の特色やトンマナを説明することが必要なだけでなく、最初の納品物から最終形までの間に細かなすり合わせが発生しやすい傾向があります。

③ノウハウが蓄積する

クリエイティブ業務の中には、これまで社内で取り組んだことのない業務や新しい分野へのチャレンジなどもあるでしょう。その分、想定より時間がかかったりクオリティを高めきれなかったりすることは往々にしてありますが、次につながるノウハウを社内に蓄積できるのは大きなメリットです。

クリエイティブ業務を外注する3つのメリット

クリエイティブ業務を外注することで得られるメリットは以下の3点です。

①第三者の視点で制作できる

会社の中にいると、無意識に視点や発想が固定されがちです。クリエイティブ業務では時に、これまでにはない視点での発想も大切になってきます。その点、外注であれば必然的に第三者の視点でアイデアを出すことが可能になります。

②社員の工数を削減できる

仮にクリエイティブの内製チームを抱えている場合でも、人的なリソースが不足している状態で新たに業務を与えてしまっては、社員の負担が増えてしまうだけでしょう。無理なアサインは、満足のいく制作物が作れない可能性を高めてしまいます。その点、外注であれば社員の工数を圧迫せずに質の高いアウトプットを得られるでしょう。

③設備投資コストがかからない

デザインツールのライセンスや動画編集ソフト、それらの使用に耐えうる高性能なパソコンなど、クリエイティブ業務には設備投資が欠かせません。クリエイティブ業務を外注すれば、新たに購入する必要がありませんし、使い方を一から覚える必要性や人材育成コストもかからないのがメリットです。

内製・外注で迷ったときの3つの判断軸

ここまで見てきたのように、クリエイティブ業務を内製する場合も外注する場合も、それぞれにメリットがあります。そのため、どちらで制作すべきか迷った場合に適切に判断できるよう、判断軸を持っておくことがおすすめです。ここでは、内製・外注の判断軸として3つのポイントをご紹介します。

コスト

まずは内製と外注それぞれで制作する場合、どれくらいのコストが掛かるのかを計算してみましょう。たとえば、広告出稿のためのバナー制作が継続的に必要になり、以下のようなコスト試算があったとします。

  • 内製する場合、人件費が年間50万円、初期投資が100万円かかる
  • 外注の場合、年間100万円かかる

もしこの業務の頻度が高くなければ、外注したほうがいいと考えられます。しかし何度も繰り返す業務であれば、内製で社内にノウハウを溜めて効率化していくことで最終的にコストを抑えられるかもしれません(上の例では、2年目以降は内製のほうがコストが低い)。一度にかかるコストだけでなく、業務の継続性も考えて計算してみるとよいでしょう。

納期

納期が短いプロジェクトでは、外注先とスケジュールが合わなかったり、先方のリソースが足りず希望納期に間に合わせることが難しかったりすることもあります。しかし、内製であれば社内の他の業務とのスケジュール調整がしやすい場面もあります。その意味では大所帯でなくとも、クリエイティブ業務に対応できるスタッフを雇用することはメリットがあります。

クオリティと会社の方向性

制作物に求めるクオリティが判断軸となることもあるでしょう。例えば、高いクオリティのものが一度だけ必要な場合は、制作経験の豊富な会社に外注するほうが合理的です。一方、Webサイトの更新など、継続的に必ず発生する業務であったり、企業として注力したい業務であったりすれば、社内に知見やノウハウを貯めるために内製する判断もよいでしょう。必要とされるクオリティだけでなく、会社の方向性も踏まえた上で判断することが大切です。

内製・外注を正しく比較するために把握すべき情報

前の章で3つの判断軸をお伝えしました。それぞれの項目を適切に評価する上で、あらかじめ社内で把握しておくべき情報がいくつかあります。どのような情報が必要なのか、具体的に解説します。

内製にかかるコスト

社内でその業務にあたる社員の人件費をあらかじめ算出しておきましょう。もし社内に人材がいない場合は、クリエイティブ業務の専門知識を持った社員を新たに雇うことになりますので、どれくらい固定費が上がるのかも把握しておかなければなりません。

加えて、クリエイティブ業務には専用の設備や機器、ソフトウェアが必要な場合があります。それらの設備や環境が整っているのか、またこれから準備するのであればどれくらいの設備投資が掛かるのかを事前にチェックしておきましょう。

このようにコストを算出することで、外注する場合と比較することが可能になります。しかし、内製することで必要になる費用は上述のものだけではありません。オフィスの家賃や水道光熱費、間接部門の労務費などもかかりますので、正確に算出するのが難しく、単純に比較できないという点にも留意しましょう。

社員のモチベーション

業務内容によっては、社員に新しいことを覚えてもらわなければなりません。それが社員の希望と合っているかどうか、また新しい業務を覚えるモチベーションがあるかどうかを確認しておきましょう。業務分担を増やすと同時に報酬を上げるなど、社員のモチベーションを維持するための施策が実現できるかどうかもポイントとなります。

納期

どのような業務であっても、納期までに制作できるかどうかは重要なポイントです。外注の場合、スケジュールも含めた条件を提示して制作依頼を行うのが一般的ですので、納品が遅れることはあまりないと考えられます。 内製であれば、クオリティを上げるために何度も修正したり、途中で仕様を変更したりと、外注する場合よりも柔軟な対応ができる場合もあります。しかし社内であるがゆえに柔軟な依頼ができる一方、納期が曖昧になることやリテイクが多くなることで、全体のスケジュールが後ろ倒しになってしまうリスクもある点はよく理解しておきましょう。

内製・外注の特徴を押さえて適切な判断を

クリエイティブ業務を内製で行うのか外注するのかを検討する際は、そのときに掛かるコスト以外にも様々な要素を把握して判断する必要があります。 コミュニケーションのスムーズさや制作のスピード感、ノウハウの蓄積を重視するならば内製で行うほうがいいでしょう。また、同じ制作物が定期的に必要になるのであれば、社内の固定スタッフが担当することで効率化につながります。一方、単発で高いクオリティが必要な制作物であったり、制作チームがいても社内のリソースが足りなかったりするならば、外注するという判断が適切です。 内製か外注かを判断する際には、あらかじめ社内のリソースや設備環境、社員のモチベーション、納期までの対応可否なども把握して、その判断が実現可能なものか検討しておくことも大切です。

業務内容やタイミングによってどちらを選択すべきかは変わってきますので、内製するか外注するか、その都度判断して使い分けていきましょう。

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この記事の筆者

ライター

矢野 由起

製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

この記事の監修者

株式会社oRo code MOC クラウドソリューション事業部マーケティングチーム

高橋礼

2019年7月に株式会社オロの子会社・株式会社oRo code MOCに入社。新潟を拠点にオロの製品・クラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。過去7年間、雑誌編集に従事していた経験を活かし、ライティング業務やホワイトペーパー制作に携わる。

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