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時短勤務(短時間労働)とは? 制度や適用期間、導入の注意点を解説

時短勤務(短時間労働)とは? 制度や適用期間、導入の注意点を解説
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2020/6/15公開2022/1/04更新

女性の活躍推進や働き方改革が進む中、時短勤務などの柔軟な働き方を取り入れる企業が増えてきました。新しい働き方が広がることは多様な人材の活用や生産性向上の観点から歓迎すべきですが、フルタイムでないという理由で時短勤務者の評価が下がってしまうケースもあります。

そのような事態を防ぎ、時短勤務者のモチベーションを保つためには、人事評価の制度や組織風土を柔軟に変えていく必要があるでしょう。今回は仕事と家庭を両立できる仕組みとして労働時間を短縮して働く「短時間勤務(時短勤務)制度」を取り上げ、制度利用の課題や人事評価制度についてみていきたいと思います。

短時間勤務制度は育児・介護休業法に基づいており、対象者は育児世代に限定されるものではありませんが、本記事では子育て中の方に的を絞ってお話をしていきます。

目次

    時短勤務(短時間労働)とは

    時短勤務(短時間労働)とは、フルタイムと比較し労働時間を短くする措置のことを言います。厚生労働省でが「育児・介護休業法」の「育児のための所定労働時間短縮の措置」の中で「短時間勤務制度」として定めています。条件を満たせばどの企業でも利用可能です。

    育児・介護休業法の改正に伴う事業主の義務化

    育児・介護休業法は1991年5月15日に成立し、1歳未満(2002年からは3歳未満)の子どもを持つ労働者に対して、短時間勤務制度や所定外労働(残業)免除制度などからひとつ選択できるような措置を取ることが義務付けられていました。

    しかし2009年の改正(*1)によって、子どもが3歳未満の労働者が短時間勤務できるような制度の導入が事業者に義務づけられました。そのため事業者は、少なくとも「1日原則6時間勤務」とした短時間勤務制度の設立が必須です。

    育児・介護休業法で定められた短時間勤務制度の概要

    短時間勤務制度の大枠は下記2点です。

    1. 短時間勤務制度とは、子どもが3歳になるまで労働時間を原則6時間とする措置
    2. 短時間勤務制度は事業主が設けなければいけない義務

    育児のための所定労働時間短縮の措置

    措置の内容 3歳に満たない子を養育する労働者に関して、1日の所定労働時間を原則として6時間とする短時間勤務制度を設けなければならない
    対象労働者 3歳に満たない子を養育する労働者(日々雇用及び1日の労働時間が6時間以下の労働者を除く)
    労使協定の締結により対象外となる労働者
    • 入社1年未満の労働者
    • 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
    • 業務の性質・実施体制に照らして、短時間勤務制度を講ずることが困難と認められる業務に従事する労働者(※対象外となる業務の範囲を具体的に定めることが必要)
    代替措置
    • フレックスタイム制度
    • 始業・終業時刻の繰上げ、繰下げ
    • 事業所内保育施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
    ※短時間勤務制度を講ずることが困難な労働者については代替措置(育児休業に関する制度に準ずる措置)を講じなければならない
    期間 子が3歳に達する日(3歳の誕生日の前日) まで

    子どもが3歳になった場合

    子どもが3歳になっても短時間勤務制度がなくなるわけではありません。「育児・介護休業法」では下記のように定められています。

    1. 事業主は小学校就学前の子を持つ労働者のために、短時間勤務制度等、必要な措置を取る努力義務がある
    2. 事業主は小学校就学前の子を持つ労働者がその子を養育するために請求した場合は、1か月につき24時間、1年で150時間を超える残業をさせてはならない

    時短勤務(短時間労働)事業者導入の背景

    事業者に短時間勤務制度の導入を義務づけた背景には、さまざまな要因があります。ひとつは、働き方の多様化です。

    正社員として入社し、結婚・出産を機に退職するという画一的な働き方から、「子育てをしながら働く」「子育てのために一度仕事を休み、また復職する」といった働き方をする人が増えてきました。そのサポートをするためにも、時短勤務の導入は必須です。

    また、ワークライフバランスの実現するために、時短勤務は効果的な施策です。共働き家庭の数も年々増加しているため、事業者が働き手を確保するためにも、時短勤務の導入が進められていきました。

    時短勤務(短時間労働)を利用する人とは?

    時短勤務は以下のような労働者(*2)が対象となります。

    • 3歳未満の子どもを育てている
    • もともとの所定労働時間が1日6時間を超えている
    • 1日単位の雇用契約ではない
    • 短時間勤務制度の適用期間に育児休業を取得していない

    一方、労使協定によって時短勤務が適用除外とされた場合は、時短勤務を利用できません。具体的には以下のような条件があります。

    • 継続して1年以上雇用されていない
    • 所定労働日数が週2日以下
    • 業務の性質上、時短勤務が難しいとされる

    業務の性質から時短勤務ができない労働者の場合でも、事業者は以下のような代替措置を講じることが義務づけられています。

    • フレックスタイム制度の適用
    • 時差出勤(始業・終業時刻をずらす)制度の適用
    • 保育施設の設置運営もしくはそれに準ずる便宜を与える

    もしくは、本人の合意が取れていれば、時短勤務ができる職場への配置転換を行なって時短勤務を適用ことも可能です。

    短時間勤務制度の導入状況

    厚生労働省の調査によると、令和2年度には5人以上の事業所の68%が短時間勤務制度を導入しています。また、育児休業後の短時間勤務制度の利用状況に関し「ほとんどの人が利用する」と回答した企業は34%以上になっています。短時間勤務制度の利用者は年々増加しており、今後もその傾向は続くでしょう。

    短時間勤務制度利用者状況

    労働者のメリット・デメリット

    時短勤務を行うことで、労働者側には以下のようなメリットとデメリットがあります。

    メリット

    時短勤務の大きなメリットは、育児のために使う時間が増やせることです。子どもの保育園への送り迎えにも余裕が生まれますし、子どもと過ごす時間を確保しやすくなります。その結果、ワークライフバランスが向上すると言えます。

    デメリット

    デメリットとして考えられるのは、まず収入が減ることです。業務時間に応じて減給することは、育児・介護休業法で禁止されている「不利益な取扱い」にあたりません。そのため、業務時間が短くなる分、給料が下がってしまう可能性があります。 加えて、精神的なデメリットも生じます。勤務時間が限られていることから、業務に思う存分打ち込めずもどかしい思いをしたり、周囲から冷ややかな目で見られたりと、働きづらさを感じる人もいるでしょう。

    事業者のメリット・デメリット

    時短勤務を導入することや、時短勤務を利用する労働者がいることによって、事業者側には以下のようなメリットとデメリットが考えられます。

    メリット

    事業者が時短勤務を導入するメリットは、優秀な人材を維持・確保できるという点です。従来であれば出産・育児によって退職せざるをえなかった女性も、時短勤務の制度があれば働き続けられます。 時短勤務を導入していたり制度を利用する社員が多かったりする企業であれば、「ワークライフバランスを大切にしている」として、優秀な学生から選ばれる可能性もあるでしょう。

    デメリット

    時短勤務を利用する従業員がいる職場では、他の従業員に負担がかかる可能性があります。そのため、職場内の仕事のバランスを考えたり、従業員の間で不公平感が生まれないよう工夫をしたりといった配慮が必要です。 勤務時間が短い分の労働力を補うために、派遣社員やアルバイトを雇わなければならない場合もあるでしょう。そうなると、人材確保や教育などの手間・コストがかかることもデメリットと言えます。

    どうしても生まれる?時短勤務に関する不満

    育児休暇を取得した社員は復帰後、ノー残業や短時間勤務を希望するケースが多いようです。しかし、短時間勤務制度の運用には多くの課題があることも事実。厚生労働省の調査では「制度利用者に対する仕事の配分が難しい」(37.6%)や「制度利用者の周囲の社員の負担が大きい」(31.5%)という課題を持っている企業が多いようです。

    短時間勤務制度を運用する上での課題

    実際に管理職は欠勤リスクを恐れ、差し障りない業務、責任範囲の小さい業務を時短勤務者に割り当てる傾向があるようです。事実、時短勤務者は昇進や昇給、さらにはキャリアアップのための教育対象から外れてしまうこともあります。

    家庭との両立はできるものの昇進ややりがいとは縁遠いキャリアコースを「マミートラック」といいますが、これは決して嫌がらせではなく会社側の配慮の結果である場合も少なくありません。しかし、管理職側が過剰に配慮して残業や責任ある仕事を任せない場合、時短勤務者のモチベーションを下げてしまう恐れもあります。

    また、悲しいことですが、時短勤務者に対して快く思わない社員がいるのも現実です。時短勤務者が子育てを理由に残業や責任ある仕事を回避し続けると、周囲の社員に負担がかかり、不満が募る場合も。

    ただ、時短勤務者が残業や責任ある仕事を避けたとしても、それは決してモチベーションが低いからではありません。「長時間労働が前提の働き方で家庭と仕事を両立する自信がない」「制約を抱えながら責任を担う仕事は不安が大きい」と考えているからです。

    不満を生まないために。刷新すべき評価制度とマインド

    社員間の不公平感を募らせないためには、組織全体で負荷の偏りを可視化し、評価する仕組みを整備する必要があります。職場の満足度を高めるカギは「成果へのコミットメントを評価する制度」と「労働時間に対する組織風土変革」です。

    成果へのコミットメントを評価する制度

    管理職はまず組織の業務全体を可視化し、時短勤務者やその周りの社員に過剰な業務負荷をかけないよう、業務を見直すことが必要です。その上で適切に配分された業務に関して、管理職と社員とで「出すべき成果」の明確な目標を設定します。その目標に対し「どのくらい達成できたか」という成果に着目し、定量・定性的に評価します。

    そうすれば社員は労働時間や業務量とは別の軸で評価されるため、時短勤務者に不利になることはありません。フォローする社員に対しても公平に評価できるでしょう。それぞれの社員がどのようなミッション・目標を持っているのか、どの程度達成したかを見える化することで、企業のビジョン実現に近づくことができるのです。

    短時間勤務制度利用状況ごとの目標・評価設定方法

    実際に時短勤務制度を利用する社員が多い企業ほど「勤務時間短縮分に応じた目標設定を行い、達成度で評価」しています。厚生労働省も達成度で評価することを推奨しており、以下の人事評価ポイントが参考になります。

    時短勤務者の人事評価ポイント

    • 時短勤務者に付与する成果目標は、期待する役割を踏まえて設定する
    • 同じ職種・職位のフルタイム正社員との比較においては、「量」的な目標は労働時間に合わせて減らし「質」的な目標は変えないというのが原則。ただし職務の内容や性質、制度利用者の希望も考慮した上で、目標を設定する必要がある
    • 設定した目標に対する評価は、目標に対する達成状況に基づいて行う
    • 能力評価や行動評価等では、時短勤務者に対しても、基本的にフルタイム正社員と同じ評価基準・要素を用いる
    • 時短勤務者の昇進・昇格も、こうした人事評価に基づいて、公正に決定することが重要

    労働時間に対する組織風土変革

    実際に制度が整っていても「取得しやすい雰囲気ではない」「制度を利用したが活躍できていない」「周囲の理解が得られにくい」などの課題も挙げられます。こうした制度は全社的に労働時間の意識の見直しや理解促進をしなければ全社員に定着しません。例えば管理職への教育、短時間勤務制度を利用する社員・しない社員への啓蒙・意識改革が必要です。

    管理職への意識改革

    職場の多様な働き方を許容することで、管理職の負担はどうしても増えてしまします。しかしながら、多様な人材がいきいきと働ける職場づくりは、今後の日本の管理職にとって重要なミッションです。管理する側・される側が同じ方向を向くために、まずは管理職の意識改革を行うことが大切です。

    時短勤務制度を利用しない社員の意識改革

    今は時短勤務制度を利用していない社員でも、今後家族の介護や自分の病気などによりフルタイムで働けなくなる可能性があります。そのため、時短勤務制度を利用していない社員にも啓発・教育を行い、全社員が制度を利用しやすい風土づくりが重要です。

    時短勤務者への意識改革

    時短勤務者には退勤時間のリミットがあるため、自ら業務効率化の工夫をし、時間内に終わらせるスキルが高いことが多いです。管理職は時短勤務者の業務が効率よく回せるように環境を整えるだけでなく、時短勤務者の"時短ナレッジ"をチームに共有するなど、周囲にも時短勤務についての理解を促し、時短勤務者自身も前向きに働ける土壌を作っていきましょう。

    時短勤務導入の流れ

    事業者が社内に時短勤務を導入する場合、大まかに以下のようなステップが必要です。

    1. 目的・目標の決定
    2. 従業員の手続き方法の検討
    3. 対象者、賃金、評価の仕組みの整備
    4. 就業規則への記載
    5. 社員への周知
    6. 時短勤務者の制度利用
    7. 改善点を制度へフィードバック

    制度を作ったあとは、社内へ周知して利用してもらうことが大切です。そのためには、就業規則を改定するだけでなく、制度を利用するためのマニュアルやQ&Aの作成、社内報やイントラネットでの紹介などを行います。

    時短勤務の導入注意点

    時短勤務を導入する際に気をつけたいのが、時短勤務利用者の取り扱いです。時短勤務対象者が制度を利用することは権利であり、企業としては利用しやすい環境を整えることが求められます。 たとえば、時短勤務だからと人事評価を下げることや、短くなった勤務時間分以上に減給することは、「不利益な取扱い」として育児・介護休業法で禁止されています。時短勤務を理由とした解雇や降格なども同様です。 職場でハラスメントが起こらないように、必要な措置を講じることも企業の義務です。制度を導入する際は、時短勤務の従業員も快適に働けるような環境作りもあわせて行わなければなりません。

    まとめ

    ますます進むワークスタイルの多様化に対し、企業は各部署や社員ごとに業務内容を調整・配分したり、制度の見直しや人事評価の方法を整理したり、細やかな対応が求められます。社員のエンゲージメントを高め「この企業で働き続けたい」「この企業で社会に貢献していきたい」と思ってもらうには、制度の充実や納得感のある評価制度が必要です。

    育児・介護休業法の改正によって、時短勤務(短時間労働)の導入が義務化されたこともあり、従業員は働きやすくなる一方で、事業者はルールの整備や環境作りが求められます。時短勤務者が不当な扱いを受けないような制度作りだけでなく、全従業員の意識改革も欠かせません。

    しかしながら、時短勤務者だけでなく会社全体での生産性向上が実現しないことには、時短勤務者や周りの社員がいきいきと働くのは難しいかもしれません。時短勤務にも必要な生産性向上のヒントを、無料ホワイトペーパーにまとめています。多様な働き方を取り入れ、企業成長を促進させるヒントになれば幸いです。

    〈参考資料〉

    厚生労働省「平成30年度雇用均等基本調査 事業所調査」
    厚生労働省「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 平成30年度厚生労働省委託事業 企業調査」
    厚生労働省「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 平成28年度厚生労働省委託事業 企業調査」
    厚生労働省「育児・介護休業法の概要」
    厚生労働省「仕事と育児等の両立に関する実態把握のための調査研究事業 平成30年度厚生労働省委託事業 労働者調査」
    国保祥子『働く女子のキャリア格差』ちくま新書(2018年)
    厚生労働省「短時間正社員制度導入支援ナビ」

    *1:厚生労働省育児・介護休業法が改正されます!

    *2:厚生労働省Ⅸ 事業主が講ずべき措置 Ⅸ-1 育児休業及び介護休業に関連してあらかじめ定めるべき 事項

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    黒須 仁美

    この記事の筆者

    コンサルタント/リサーチャー

    黒須 仁美

    外資系IT企業にて戦略コンサルタントとして組織変革や政策・事業策定支援に従事し、2019年にフリーランスに転身。現在西アフリカのセネガルに家族と暮らしながらビジネスコンサルタントやリサーチャー、ライターとして活動している。

    犬塚 菜々美

    この記事の監修者

    株式会社オロ クラウドソリューション事業部 マーケティンググループ コンテンツマーケター

    犬塚 菜々美

    2012年からシステムエンジニアとしてERPパッケージソフトの開発に3年半従事。その際に身につけた業務知識やERPの知識を活かし、株式会社オロではクラウドERP「ZAC」のマーケティングチームの一員として活動。WebディレクターやSEOコンサルティングの経験を持ち、オウンドメディアの運営やホワイトペーパーの制作、セミナーの運営を担当。