ERP講座 第10回

2層ERPとは?

昨今、新たなERPの導入方法、活用方針のモデルとして「2層ERP」(Two-tier ERP)という言葉が注目されています。今回はこの「2層ERP」について、用語の意味やこの考え方が生まれた背景について解説をします。

グローバル化に伴うERPへのニーズ

企業の成長・発展に伴い、国内外で支社・拠点を持つグローバルな企業活動が進展していくと、求められる経営管理業務はより高度化・複雑化していきます。本社オフィスにおいては世界各国の様々な拠点における経営データをウォッチし、グローバルなレベルでの経営環境の変化に反応しながら、世界規模におけるリソースの最適化を図っていく必要があるからです。

しかし、支社・拠点が多くなればなるほど、拠点ごとの経営データの収集は困難を極めます。収集すべきデータフォーマットの統一をするだけでも膨大な手間がかかりますし、また仮にフォーマットが統一されたとしても、データ収集のスピードやデータの正確性を考慮すると、マンパワーによる対応はもはや不可能であると言えます。

このような課題を解消する手段として、これまではSAPやOracleのような、大企業向け・多国籍企業向けERPを企業グループ全体で導入するという方法が一般的でした。 全ての拠点を同一システムで管理することにより、マスタやデータフォーマットが統一され、各拠点からのデータ収集や加工の手間が削減されることで、経営データの管理面における効率化が期待できました。

旧来ERPの課題

一方でSAPやOracleといった大規模ERPを企業グループ全体で導入することには、いくつかの課題も存在しています。

まず、企業グループ全体で同一のERPを導入することで、一部の支社・拠点によっては業務効率を下げてしまう可能性があるという点です。例えば、本社と違う事業を展開していたり商習慣が異なっていたりする拠点においては、業務フローや管理データの構成が本社と異なる可能性があります。このような拠点でERPを導入すると、業務とシステムのギャップを埋めるためにシステム外の運用が必要になってしまうなど、逆に業務負荷が増えてしてしまうこともあり得るのです。

もうひとつは投資対効果における課題です。支社・拠点によっては、市況の変化や経営戦略の変更によって早期に事業を撤退しなければならない場合も考えられます。そのため、拠点が増える度に(親会社と同等の大規模な)ERP導入に膨大な時間とコストをかけることは不確実性が高い経営判断と言えます。

このような理由から、グループ全体で同一の大型ERPを導入することは様々なリスクの伴う選択肢とも考えられるのです。

企業のグローバル化にとって最適な2層ERPモデル

そこで、前述したようなリスクを伴わずにグループ全体の最適化を図る手段として生まれた考え方が「2層ERP(Two-tier ERP)モデル」です。

2層ERPモデルとは、2000年代後半から米ガートナー社(※)などによって提唱されてきた考え方です。本社で稼働しているSAPやOracleのようなERPを「コアERP」と位置付け、それとは別に事業や拠点単位で、ビジネスのニーズに柔軟に対応できるERPを選定・導入し、コアERPとのデータ連携を図るERPの導入方式です。
各支社・拠点サイドにおいては、事業やそのエリアの商習慣に適合したERPを利用することができるため、大型ERP導入により懸念された業務効率の低下を防ぐことができます。一方、本社サイドにおいては、コアERPと2層目ERPとのデータ連携を行うことにより、大型ERPの一括導入時と変わらず、グローバルな経営データの早期取得を実現することができます。
2層目に導入されるERPについては、コアERPとのデータ連携が可能などの条件を満たせば様々な選択肢の中から選定することが許されるため、経営環境の変化やビジネスの不確実性を見越して、ローコストなソリューションを導入することも可能となります。

※ガートナー(英: Gartner, Inc.)

米国に本拠地を置く業界最大規模のITアドバイザリ企業

クラウドERPの技術進展が2層ERPモデルの採用を促進

近年、2層ERPのモデルが注目されている背景には、クラウドERPの急速な進化・発展があります。クラウドサービスはメールサービス、グループウェア、SFAなど、主に情報共有系のソリューションにおいて先行して発展を遂げてきました。しかし、近年では、クラウドサービスのセキュリティ面における信頼性や、データ処理能力などのパフォーマンスが向上し、クラウドサービスに基幹業務・基幹データを預けることの不安・リスクは大幅に軽減され、クラウドERPが一般的なものになりつつあります。
クラウドERPはサーバ購入やITスタッフの雇用といったコストがかからず、従来のオンプレミス型ERPに比べ低コスト・短納期での導入が可能です。更にクラウドERPは、ビジネスの進展、組織の成長にあわせて、スケーラブルに機能拡張やパフォーマンスの増強を柔軟行うことできるため、ビジネスの不確実性が高い海外拠点などで導入する2層目のERPとしては、最適な選択と言えます。

このような理由から、クラウドERPを利用した2層ERPモデルの採用は日本企業でも今後トレンドとなっていくと考えられます。今後、海外展開を見据えている日本企業にとって、「2層ERPモデル」は重要なキーワードとなるのではないでしょうか。

2層ERPモデルの採用について詳しく知りたい方へ

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