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財務会計では見えない受注活動

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2012/12/10公開

売上高は、企業規模や事業モデルの違いに関わらず、企業業績の最重要指標として理解されています。その理由は売上高がその後の債権回収による保証がされている数値であるため、他の指標に比べ、企業業績の趨勢がわかりやすいこと、また、売上高は受注案件の履行でもあり、企業活動の成果を表す指標であるためです。

目次

    企業活動の成果は、下記ように事業モデルによって異なるものです。

    • 小売業...店舗での商談がそのまま売上に直結する
    • メーカー、卸売業...物品やサービスの提供
    • 受注請負業...案件の完成とその完成の検収確認

    昨今は販売形態の多様化や様々な要素の組み合わせ、さらにネットを駆使した販売手法も展開されており、売上高一つをとっても実に様々な手法が繰り広げられているのが、今の営業展開の実態と言えます。

    月次決算に受注情報を

    その一方で、多くの中堅企業で用いられている月次決算をはじめとする経営情報はこれらの販売手法の展開に対して、十分な経営判断の情報を提供していると言えるでしょうか?財務会計の一般的な理解では、売上高は、会計業務のスタートラインに位置する指標と受け止められる傾向が見られます。しかしながら、経営の観点からは、売上高は企業が全社的に取組む受注活動の成果でもあります。この意味で販売は受注の成果であるとも言えるでしょう。また、年間の売上目標の先行指標として、受注獲得を重視されている経営者の方々も少なくないと思います。それでも一般的な会計システムでは、システムの負荷や経理人員の人的制約のもとでは、その対応に限界があるとされています。しかし、例えば、販売部門の営業情報と組み合わせることによって、その価値は飛躍的に高まることが期待されています。

    一般的な月次決算の情報には、受注状況や受注残高は登場しませんが、受注状況が今後の損益の先行指標であることが重視されている企業では月次決算情報に受注状況を組み込む例が見られます。具体的には次のような情報が扱われています。

    1. 今月の商談情報とその確定の見込みのランク付け
    2. 受注見込み案件の制作のリードタイムとコスト見積り
      受注案件の品目・外注・社内工数は見積りのスピードとその精度が問われます。ある程度、パターン化が可能な製商品やサービスの提供については、発注コストや社内制作コストの見積りを定型化することは価値があることです。
    3. 今月の受注成約の商品・サービスライン別の状況、及び部門組織の獲得状況

    企業内の部門組織での目標管理の一環として部門ごとの受注案件状況は比較的採用しやすいものと思われます。他方、受注案件の商品・サービスライン別の状況はその案件を具体的に示す「案件情報」が整備されていなければ、深度ある情報を作成することは困難であるといえます。案件ごとの個性(金額・リードタイム・スペックなど)にばらつきがあるならば、部門ごとのほか製商品やサービスライン別の受注情報も必要かもしれません。

    【メーカーでの受注から販売までのフローの例】
    【メーカーでの受注から販売までのフローの例】

    受注請負業では案件情報の定着が大事

    企業の事業計画は部門ごとの目標設定であるとともに、各部門が協力して商製品の販売やサービスの提供の目標を実現することを見据えていることが多いのです。営業のみならず制作現場でリピートが起きるように、企業活動のあらゆる局面に受注の機会はあるのです。また、景気の厳しい環境では、既存のお客様からのリピートは次の受注獲得の機会でもあります。このことから言えるように、案件の基礎的な情報が日常の活動で活用されていなければ、年度の事業計画と毎月の月次決算とは乖離したまま比較されることになります。とりわけ、受注請負の事業を中心に展開されている企業では、案件情報の定着は優先的な課題と言えるのではないでしょうか?

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    橋本 智明

    この記事の筆者

    BDO三優監査法人 マネージャー 公認会計士

    橋本 智明

    元大手監査法人にて上場準備業務、国内監査、外資系監査業務のほか、企業統合支援、上場準備企業の公開支援、管理会計構築に携わる。大手証券会社出向時に資本政策・事業承継対策・株式公開支援を経て、大手監査法人に戻り、国際・国内会計監査に携わる。現在、三優監査法人にて、国際会計基準(IFRS)対応業務、上場支援業務、決算業務の効率化、管理会計構築、事業統合支援業務のほか、オーナーのための事業承継対策等アドバイザーとして担当。日本公認会計士。中央大学商学部卒。