クラウドERPとは?オンプレミスとの違い、メリット・デメリット、選び方を解説

2020/4/23公開2022/6/09更新
みなさんが業務を行う上で必要な、勤怠・購買管理など様々な機能を備え持つ「ERP」。そのプラットフォームは大きく「クラウド型」と「オンプレミス型」に分けられますが、それぞれの違いがいまいちわからない、それぞれにメリット・デメリットがあるのかを知りたいという方も多いのではないでしょうか。今回の記事では、オンプレミスERPとの違い、メリット・デメリット、導入ステップなどクラウドERPについてわかりやすく解説します。
目次
ERPとは
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略で、直訳すると「企業資源計画」。"企業資源"とはヒト・モノ・カネ・情報を指し、それらを一元管理し有効活用する考え方のことをERPと呼びます。また、昨今では財務会計、生産管理、販売管理といった企業の基幹業務をサポートするための業務システムのことを指してERPと言われることが多くあります。出典:ERP超入門ガイド
クラウドERPとは
クラウドERPとは、その名の通りクラウドやインターネット上に構築されたERP。搭載されたERPの機能をクラウド環境で使えるようにしたものです。
世界有数のリサーチ・アドバイザリー企業であるガートナー ジャパンは、「オフプレミスで稼働し、サブスクリプションや従量制課金で利用する形態として提供されるもの」とクラウドERPを定義しています。
従来のオンプレミス型と比較するとクラウドERPには以下のような特長があります。
- 比較的安価
- どこからでも、必要なときにインターネット経由で利用可能
- デバイスに縛られない
- 自社でのサーバーメンテナンスも不要
ERP黎明期の1990年代は通信インフラがいまほど発達していなかったことから、オンプレミス型のERPが主流でした。しかし、昨今はインフラ環境が整ってきたことや、顧客ニーズが「所有」から「利用」にシフトしてきたことから、クラウドERPが一気に普及しているのです。
クラウドとオンプレミスの定義・語源
ここからは「クラウド」と「オンプレミス」の語源について確認していきましょう。
Cloudは、直訳すると「雲」という意味。ネットワーク構成図を図示する際に、インターネットという目には見えないが存在するものを示すために、雲の絵が描かれていたことが語源となっているようです。最近よく見聞きするクラウドファンディングのクラウドは、Crowdで「群衆」という意味。クラウドERPのCloudとは意味が異なりますので注意が必要です。
一方、「オンプレミス」の Premiseは一般的に「建物」「構内」「店内」などの意味で使われますが、ERPの文脈では、「ユーザーが自分たちの建物の中で、機器を設置して、自分たちで運用をする」といった従来型の自社運用を指します。実際の現場では、オンプレやオンプレ型ERPと呼称されることが多いようです。
クラウド型ERPとオンプレミス型ERPの違い
オンプレミス型ERP
オンプレミス型ERPは、自社のためだけにオーダーメードでERPを購入する企業、もしくは自社でERPを構築できる企業に買い切り型で導入されているケースが多く、以下のような構築手法を取る特徴があります。
- 自分たちの業態に即した形にフルスクラッチで構築
- テンプレートに追加開発を行う形での構築
クラウド型ERP
クラウド型ERPもまだまだオンプレミス型ERPをクラウド基盤に乗せた形での提供が一般的で、製品は「所有」しながらもサーバーは「利用」している形態です。上記のオンプレミス型のメリットを残しながら、環境基盤をIaaSやPaaSにすることでクラウドERPのメリットを手にしています。
一方、ソフトウェアとインフラをセットで「利用」できるSaaSとして、クラウド型ERPを提供している企業も増えています。SaaSはノンカスタマイズ前提のパッケージソフトが多く、月額課金・継続課金の料金体系を採用する企業が多いようです。
ERPではありませんが、例えばクラウド化を推し進めているアマゾン社のAWSやマイクロソフト社のAzureなどは、課金体系として月毎の従量課金制の価格体系を採用しています。
SaaSが普及した背景としては、国産ERPが増加したことで、国内企業の商習慣に合った製品が増えてきたことや、売り切りからサブスクリプションモデルへビジネスモデルが変容したことがあげられます。
クラウド型・オンプレミス型それぞれのERPの特徴をまとめると下記の表のようになります。
クラウドERPとオンプレミスERPの比較表
クラウドERP | オンプレミスERP | |
---|---|---|
価格体系 | 月額・継続 | 買切 |
導入コスト | 安価 | 高額 |
運用コスト | 安価 | 高額 |
利用形態 | 利用型 | 保有型 |
ハードウェア刷新 | 不要 | 必要 |
カスタマイズ | 難しい | 柔軟 |
バージョンアップ作業 | 不要 | 煩雑 |
クラウドERPを導入するメリット
クラウドERPを導入するメリットは大きく4つあります。
- 見えないコストを抑えられる
- 保守性の担保ができる
- 様々な働き方に対応できる
- 災害復旧(Disaster Recovery)に強い
ひとつずつ見ていきましょう。
❶見えないコストを抑えられる
- 設備点検や定期監視などの運用保守費用や人員など、見えないコストを削減できる
- サーバーOSの保守切れなどによる移行費用(マイグレーションコスト)もカットできる
❷保守性の担保ができる
- サーバーの寿命に応じて利用不可になることを避けられる
- 消費税の改正、インボイス制度など外部環境や外部要因の変化に対応する際、利用料の中でバージョンアップされるケースが多く、対応工数やコストを下げることができる
❸様々な働き方に対応できる
- インターネットがあれば社外からでもアクセス可能なため、場所を問わない働き方ができる
- 新型コロナウイルスの影響で、必要に迫られているリモートワークへの対応も容易
❹災害復旧(Disaster Recovery)に強い
- 冗長化や遠隔地でのバックアップも比較的容易なため、災害に強い
- 停電が起きても予備電源があったり、複数拠点でバックアップを取っていたりし、二重三重の対策を取っていることが多い
- 単独で上記のようなインフラを構築・維持するのは負担が大きいため大きなメリットに
クラウドERPを導入するデメリット
オンプレミス型ではなくクラウド型のERPを選ぶことで劣る点は大きく3つあります。
- カスタマイズ性が落ちる
- 情報漏洩リスクが高まる可能性がある
- 障害発生後の復旧も含めてベンダー任せになってしまう
ひとつずつ見ていきましょう。
❶カスタマイズ性が落ちる
- パッケージ標準のままで利用する前提のクラウドERPパッケージを選択した場合、カスタマイズせずに業務をシステムに合わせて変化させていく必要がある
❷情報漏洩リスクが高まる可能性がある
- 経営情報や個人情報など機密性の高い情報を取り扱う場合、サーバーが社外にあることで情報漏洩リスクが高まる恐れがある
❸障害発生後の復旧も含めてベンダー任せになってしまう
- 自分たちの監視下にないものを利用するため、有事の際はベンダー任せで受け身になってしまう
このようなデメリットがあることを把握し、選定段階でしっかりと仕様を詰めておくことが大切です。
ERP導入前に熟考すべき内容については、こちらの記事で解説しています。
【中堅・中小企業向け】ERP選び方完全ガイド ー従業員規模別・経営管理の課題と解決法ー
業界ごとのSaaS型クラウドERPの選び方
ここからはSaaS型クラウドERPの選び方について紹介します。
SaaSには大きく2つの種類があり、「Horizontal SaaS」と「Vertical SaaS」があります。それぞれ特徴がありますので、業界や業務内容にあわせたSaaSを選ぶといいでしょう。
Horizontal SaaSとは
Horizontalとは「水平」を指す言葉ですが、SaaS文脈では「汎用的な勤怠管理・経費管理・HR・MAツールなど業界・業種にとらわれず使われるSaaS」を指します。
Vertical SaaSとは
Verticalは、「垂直」を指す言葉ですが、 SaaS文脈では「業種ごとに特化した機能がふんだんに盛り込まれたSaaS」を指します。
日本ではまだまだVertical SaaSは普及していないのですが、独自の商習慣がある業態では一部すでにそういった製品も見かけられます。汎用的(Horizontal)な販売管理システムや基幹システムよりも、業種に特化した(Vertical)システムのほうが、自分たちの業態・業務にマッチするケースが多いようです。
一方で、異なる業態を複数持っている企業は、複数の業種特化システムを導入するよりも、汎用的な機能を持ったシステムを導入したほうがコスト面でメリットがある場合があります。
クラウドERPの導入ステップ
クラウドERPはどのようなステップで導入するのか、想像できない方も多いと思います。
クラウドERPを導入する際は、まずシステム導入の目的・目標を定義しましょう。ゴールを設定しないと何をもってプロジェクトが成功したと言えるのかわからないからです。
あらかじめ世の中にあるパッケージをいくつか参考にするのも一つの方法です。自分たちと業態・業種・規模が似たような導入事例が豊富にある製品の場合、すでにノウハウが溜まっている可能性が高いからです。パッケージ標準、つまり、カスタマイズしていない状態の製品デモを受けることで、世の中にどんな製品があるのかや、同業他社のベストプラクティスを知り、自分たちが認識していない課題を発見、解決できる可能性があります。
クラウドERPの場合、パッケージ化された既製品が多くすぐに動作や機能を確認できるケースが多いので、可能であればトライアルをおすすめします。そうすることで「できると思っていたことができなかった」、「予想以上にUI/UXが良くない」といったギャップを防ぐことができます。
クラウドERP ZACの導入までの流れはこちらのページにまとめています。よろしければご覧ください。
クラウドERP ZAC 導入までの流れ
クラウドERPの最新事情
最後に、クラウドERPの最新事情やトレンドをご紹介します。
オンプレミスERPベンダーのクラウド展開
上述したように、現状ではインフラは「利用」し、ソフトウェアは「所有」する企業がまだまだ多いようです。
しかし、昨今では元々オンプレミス型のERPを展開していた企業がクラウド型のサービスを展開するケースが増えています。今後インフラもソフトウェアも、クラウド型で「利用」するケースが増えていくでしょう。実際、SaaSという形でクラウドERPを提供している企業も少しずつ増えてきています。
たとえば、本ブログを運営する株式会社オロでも、2007年からSaaSでの知的サービス業に特化したクラウドERPを展開。750社以上の導入実績があります。(2021年4月現在)
ZAC導入事例ページはこちら
APIであらゆるシステムが繋がりやすく
昨今のSaaS形式で展開しているサービスでは、APIという技術標準を利用し、他サービスとのシステム間連携が可能になってきています。
Horizontal SaaSやその他システムとの連携を容易にすることを前提に、ありとあらゆるシステムが繋がりやすくなってきているのです。
ひとつのパッケージ製品で企業の要望をすべて叶えられるケースは稀です。そのため、これまでベンダーはひとつの製品を改善・カスタマイズすることで顧客の要望に応えてきました。しかし、APIでシステムの連携が容易になったことで、A製品とB製品を組み合わせて企業の要望を満たすことが可能になったのです。
まとめ
これまで日本で主流だったオンプレミス型ERPですが、長い導入期間、高額な初期費用、保守の手間などの理由から、より時代にマッチしたクラウド型ERPが選択されることが増えてきました。また、最近はインフラ環境が整ってきたことや、顧客ニーズが「所有」から「利用」にシフトしてきたことでクラウドERPを提供するベンダーが増えています。
だからといって、今すぐにクラウドERPに切り替えればいいというわけではありません。本記事でご紹介したクラウドERPのメリット・デメリット、自社で必要になる機能やカスタマイズの可能性、さらには予算やリソースなど、あらゆる面から情報を洗い出し、適切なERPやベンダーを選定してください。
- クラウドERPのメリット
-
- 見えないコストを抑えられる
- 保守性の担保ができる
- 様々な働き方に対応できる
- 災害復旧(Disaster Recovery)に強い
- クラウドERPのデメリット
-
- カスタマイズ性が落ちる
- 情報漏洩リスクが高まる可能性がある
- 障害発生後の復旧も含めてベンダー任せになってしまう
株式会社オロでは、プロジェクト型ビジネスに特化したクラウドERP「ZAC」を開発・販売しています。上場準備のご相談から現在お使いのシステムとの連携についてまで、お気軽にお問い合わせください。