ERPとCRMの違いと連携メリット。価値を最大化する活用とは?

2025/9/05公開
顧客に関する情報を管理するCRMと、企業の基幹業務に関する情報を一元管理するERPは、「情報をまとめて管理する」点で混同されがちです。CRMとERPは役割の異なるツールであるため、目的に合わせて適切に活用する必要があります。
また、ERPとCRMを連携することでさらなる効率化が図れるため、それぞれの役割を理解して導入することが大切です。本記事では、ERPとCRMの違いや連携するメリット、導入方法について詳しく解説します。実際の導入事例も紹介するので、導入を考えている方の参考になれば幸いです。
目次
ERPとCRMの違い
ERP | CRM | |
---|---|---|
主な機能 | 企業の資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を一元管理する | 顧客の企業名、所属、氏名、取引履歴、購買情報などを一元管理する |
導入効果 | 販売、購買、生産、在庫管理、人事などの基幹業務を一括で管理でき、業務効率化が図れる | 顧客情報を共有でき、チーム全体で協力して営業活動を進められる |
具体例 | ZAC | Salesforce, HubSpot |
ERPとは、企業の持つ資源=「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」を一か所に集めて管理し、有効活用するという考え方やそれを実現するためのシステムを指します。販売管理や購買管理、勤怠管理など、会社全体の業務を横断的にカバーします。
一方のCRMは、顧客の属性や行動履歴を一元管理し、営業活動を効率化するために活用するシステムです。顧客との関係構築や満足度向上、LTV(顧客生涯価値)向上などを図るべく用いられます。
ERPとCRMはどちらも情報の一元化や業務の効率化に役立つツールですが、ERPは社内業務の最適化、CRMは顧客との関係強化に重点をおいているなど、根本的な役割は異なります。ただし、ERPのなかにCRM機能が含まれる場合もあり、目的や組織の規模に応じて使い分けが必要です。
ERP(統合基幹業務システム)の特徴
ERPは、人事・給与管理、販売管理、購買管理、生産管理、会計管理など、企業のあらゆる資源情報を一元管理するシステムです。顧客対応履歴やマーケティング活動の進捗を可視化するなど、営業に関する管理機能を備えている製品もあります。
資源情報を一括で管理できるため、データの二重入力の手間が不要になったり、情報の更新漏れを防げたり、リアルタイム情報を把握できたりといった点がメリットです。その結果、業務効率の向上や意思決定のスピードアップにつながります。
ERPについて、詳しくはこちらの記事を参照してください。
CRM(顧客管理システム)の特徴
CRMは、顧客の所属、名刺情報、行動履歴、購買情報などを一元管理するシステムです。顧客管理・営業支援・マーケティング・既存顧客サポートといった業務をカバーします。
これまで各営業メンバーが個々に所有していた顧客情報を、システム上でチームメンバー全員が確認できるようになり、営業活動の属人化防止や業務の効率化をサポートするツールです。営業プロセスの見える化や既存顧客の購買情報も管理できるため、進捗状況の把握や製品購入後のフォローアップも容易になります。
SFA(営業支援システム)の特徴
CRMと似たシステムにSFA(Sales Force Automation)があります。SFA(は、日本語で「営業支援システム」と呼ばれ、営業に関する業務の見える化を行い業務効率化や業務改善を図るツールです。
見込み顧客の所属や氏名、取引履歴の管理に加え、案件ごとの進捗管理、営業メンバーの行動履歴の記録などの機能を備えています。どちらも営業を支援するツールという点では共通しますが、CRMは顧客との関係性を管理してマーケティングやカスタマーサポートにも用いられる一方、SFAは営業活動のプロセスに着目したツールという点が大きな違いです。
ERPとCRMは連携できる
ERPとCRMは、それぞれ異なる役割を持つツールであるため、個別に利用してそれぞれの業務を効率化することも可能です。たとえば、社内業務の最適化や情報を一元化した上でデータの可視化を重視する場合はERP、営業活動や顧客管理を強化したい場合はCRMが適しています。
しかし、両方のニーズを抱える企業も多く、どちらを優先すべきか迷う場面もあるでしょう。その場合は、ERPとCRMを導入し、連携させるという選択肢もあるため、視野に入れてみてください。
両者を連携することによって、社内業務の最適化と顧客対応の強化を同時に実現できます。情報の行き来がスムーズになり、部門間の連携も強化され、より高い業務効率とサービスレベルの向上につながるのです。
ERPとCRMを連携するメリット
※「ZAC」は株式会社オロが提供するクラウドERPです ※「Salesforce」はSalesforce, Inc.(米国)が提供するクラウドCRMです
それぞれ異なる機能を持つERPとCRMを連携することで、以下のようなメリットが得られます。
商談から、受注・請求まで一元管理できる
ERPとCRMが連携できれば、営業活動から経理業務まで、一気通貫での管理が可能です。理由は、業務データが分断されることなく、部門間で同一情報・数字の共有がリアルタイムできるようになるからです。
たとえば、営業部門と管理部門とで売上金額の認識がずれていたり、日付情報に誤差があったりといった情報の食い違いやトラブルを未然に防止できます。
システム分断による重複作業が発生しない
別々のシステムで管理している場合、情報の転記作業や重複入力、目視チェックなどが必要です。もし転記ミスが起こってチェックで見逃してしまった場合、修正のための工数やトラブル対応の負荷も増えてしまいます。
ERPとCRMの連携させることで、このようなシステム分断によって起こる人的ミスやデータの突合や集計の間接作業を減らせるのです。
CRMの価値を最大化できる
CRMは単体でも顧客管理や営業支援に役立ちますが、ERPとの連携によって、その価値をさらに高めることができます。
具体的には、CRMで管理している案件・商談情報を原価と紐づけ、リアルタイムで案件の利益を可視化したり、リード獲得のためのマーケティング活動にかかっている工数を可視化したりといったことが可能です。売上計上タイミングや原価の発生時期を加味したうえでの営業会議や、前年の請求情報と比較したうえでの最適な営業活動も実現できます。
請求・支払い作業などのバックオフィス業務を、経理部門や管理部門に依頼する際の情報共有もスムーズになります。
クロス分析が容易になる
経営判断や営業戦略には、一方向からの情報だけでなく、あらゆる情報を掛け合わせた分析が有効です。それぞれ別のシステムから数字を持ち寄って分析することも可能ですが、CRMとERPを連携させれば、それぞれのデータを一つのシステム上で活用できるのが大きなメリットです。
たとえば、案件確度(CRMで管理)ごとにかかった工数(ERPで管理)を掛け合わせて分析することができます。正確かつリアルタイムな情報の分析と可視化によって、顧客や案件の最新情報を加味したより適切な経営判断につながります。
ERPとCRMの連携方法
ERPとCRMを連携したい場合、どのような方法で連携するべきか迷うかもしれません。昨今ではAPI連携が主流ですが、他にもさまざまな連携方法があるため紹介します。
API連携
異なるシステム間をつなぐ方法として、API連携があります。ERPが必要な情報をCRMにリクエストすることで、レスポンスとしてCRM側からERPに情報を提供する仕組みです。
API連携には、リアルタイムのデータを互いに共有できるという強みがあります。情報のタイムラグがなくなることで、スピーディな対応や意思決定にもつながります。
便利かつスムーズな連携が可能ですが、双方のシステムがAPI連携に対応しているかどうか事前に確認が必要です。
CSVファイル連携
片方のデータをCSVファイルとしてダウンロードし、そのファイルをもう片方のシステムに読み込ませることで連携するのがCSVファイル連携です。システム同士を直接連携するわけではないため、システムを選ばず連携できるケースが多いのも特徴です。定型的なデータを週次や月次でまとめて共有したいような場合に適しています。
ただし、一定時点でのデータをファイル化するため、最新の情報かどうか確認しなければなりません。また、ファイルをダウンロードしてもう片方のシステムへアップロードする際、手間がかかる点にも注意が必要です。
統合型
ERPとCRMを異なるシステムとして連携させるのではなく、同一プラットフォーム上で扱い、データを共有できるシステムも存在します。それぞれ異なるベンダーのシステムであっても、API連携やCSVファイル連携が不要で、マスターデータを更新すれば自動で情報が反映されるような仕組みです。
別々のシステムを連携させる概念とは異なりますが、CRMとERPの機能をシームレスにつないで利用したいならおすすめのタイプです。
ERPとCRM連携の導入事例
ここまで解説してきたERPとCRMの連携を、実際に取り入れている企業の事例を紹介します。
サイバーセキュリティサービスを提供する株式会社ハイテックシステム様は、本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』を導入し、CRMツールとしてCRMプラットフォーム『HubSpot』を連携して活用されています。詳しくは、ZACとhubspotの連携についてをご覧ください。
もともと既存顧客からの紹介による販路開拓が中心だった同社は、さらなる成長に向けて新規マーケット開拓やマーケティング強化を図るべく、ERPとCRMの連携に踏み切ったそうです。これにより、経営企画から営業、カスタマーサクセスまでの全業務をシステム上で見える化し、より正確なKPI管理やマーケティングの振り返り・施策検討の実現を目指しています。
ERPとCRMの連携で売上と業務効率の課題解決へ
企業の持つ資源情報を一元管理するERPと、顧客との関係性向上のための営業情報を一元管理するCRMは、それぞれ異なる役割を持つツールです。解決したい課題や求める効果によって、どちらを導入すべきか考える必要があります。
営業活動から経理業務、リソース管理まで一気通貫で管理したいなら、ERPとCRM両方を活用することがおすすめです。さらに両者を連携することで、重複作業をなくせるだけでなく、CRMの価値を最大化し、データを活用した分析もしやすくなります。
これからERPもしくはCRMを導入したいなら、自社の課題に応じて、どちらも活用できる形での導入をおすすめします。