IT導入補助金の流れとは。2022最新情報をわかりやすく紹介

2020/10/23公開2023/2/20更新
コストを抑えてITツールを導入し、生産性の向上を図るチャンスであるIT導入補助金。当記事では、IT導入補助金の概要、補助金額の上限、条件、期限、申請方法などの内容について、最新の情報を踏まえて解説します。
目次
2022年度 IT導入補助金 最新情報(2023年2月20日更新)
現在のIT導入補助金の最新情報をお知らせします。
現在(2023年2月20日時点)は、公募を行っていません。以下の内容はIT導入補助金2022の情報となります。
IT導入補助金サイトにて「IT導入補助金2022について」が公開されました。
同サイトによると
2022年度の補助額は最大で450万円です。
補助率は費用が50万円以下の場合は3/4、50万円より高い場合は2/3となりました。
対象経費は、ライセンス買取、導入支援・月額(SaaS含む)クラウド利用費(クラウド化基盤導入枠は最大2年分補助)となっています。
2022年度は「デジタル化基盤導入枠」が設立
2022年は、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトの導入費用の補助に特化した「デジタル化基盤導入類枠」が設立されました。さらに個社のみが申請できる「デジタル化基盤導入類型」と複数の中小企業や小規模事業者が連携し、同一の補助事業を実施するグループのみが申請できる「複数社連携IT導入類型」の2種に分かれます。
「デジタル化基盤導入類枠」は申請条件は通常枠と異なりますが、補助率が通常枠より高い(費用が50万円以下の場合は3/4、50万円より高い場合は2/3)という特徴があります。
「複数社連携IT導入類型」を活用できるのは、商工団体や観光地域づくり法人などの一部の団体・中小企業かつ、地域DXといった同一の補助事業を実施する事業者のまとまり(補助事業グループ)であること等の要件があります。自社を含めたグループが補助対象になるのかよく確認が必要です。
詳しくはIT導入補助金2022「デジタル化基盤導入枠の概要」をご覧ください。
IT導入補助金とは
IT導入補助金とは、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際、経費の一部が補助される制度です。ITツール導入により経営課題を解決することで、労働生産性の向上や業務効率化を促すことを目的としています。
経済産業省と独立行政法人中小企業基盤整備機構の監修により、一般社団法人サービスデザイン推進協議会が事務局となり実施しています。
今年のIT導入補助金の申請枠は、「通常枠」のA、B類型と「デジタル化基盤導入類枠」のデジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型の合計4つのパターンがあります。補助額のほか、対象のITツールの種類が決まっていたり、賃上げ目標の策定が補助金交付採否においての加点または必須項目となっているといった違いがあります。
賃上げ目標の策定とは、下記2点を満たす計画を従業員に表明することです。
- 事業計画期間(※2026年3月まで)において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加すること
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金(事業場内で最も低い賃金)を地域別最低賃金+30円以上の水準にすること
なお、表明を行い補助金が交付され、上記水準に満たなかった場合、補助金の一部返還が求められるため注意が必要です。
次の項目では、それぞれの類型の条件や、補助金額についてご紹介します。
A、B類型(通常枠)
A類型とB類型は前年までのIT導入補助金でも申請できた通常枠の類型です。
補助金の「交付決定日以降」に契約・納品・支払いを行う、ソフトウェア購入費用やクラウド利用料、関連オプション、役務の費用が対象となります。
本ブログを運営する株式会社オロのクラウドERP「ZAC」の導入費用も補助対象となり、B類型で申請した場合、最大で450万円の補助が受けられます。
ITツールはソフトウェアに必要な業務プロセス数を1項目または4項目以上を満たしている必要があり、それぞれの補助金額と条件は下記の通りです。
A類型 | B類型 | |
---|---|---|
補助額 | 30万~150万未満 | 150万~450万 |
補助率 | 1/2以内 | 1/2以内 |
ソフトウェアに必要な業務プロセス数 | ソフトウェアに必要な業務プロセスのうち1項目以上を満たすソフトウェアである | ソフトウェアに必要な業務プロセスのうち4項目以上を満たすソフトウェアである |
賃上げ目標の要件 | 加点 | 必須 |
- ソフトウェアに必要な業務プロセス
-
- 顧客対応・販売支援
- 決済・債権債務・資金回収管理
- 調達・供給・在庫・物流
- 会計・財務・資産・経営
- 総務・人事・給与・労務・教育訓練
- 業種固有
- 汎用・自動化・分析ツール
各ツールで改善できる業務プロセスがいくつあるかによって、申請できる類型が区分されます。補助金の利用を検討しているツールがどの項目を満たしているのかは事前にベンダーに確認すると良いでしょう。
A類型よりB類型の方が条件となる業務プロセス数が多い分、高額な補助が受けられるようになっています。
デジタル化基盤導入類枠
インボイス制度への対応を見据え、2022年に新設された導入枠です。補助率が3/4または2/3と通常枠よりも高いこと、導入するITツールは、会計・受発注・決済・ECの機能を必ず1種類以上含んでいる必要がある、ソフトウェアに使用に関わるものであればハードウェア(PC、プリンターなど)も補助対象となる、クラウド利用料は最大2年分が補助対象という特徴があります。通常枠では必須だった業務プロセス数の数は問いません。賃上げ目標の要件は加点となります。
デジタル化基盤導入枠 | |||||
---|---|---|---|---|---|
類型名 | デジタル化基盤導入類型 | 複数社連携IT導入類型 | |||
補助額 | ITツール | PC・タブレット等 | レジ・発券機 | (1)デジタル化基盤導入類型の対象経費 ⇒左記と同様 (2)上記(1)以外の経費 ⇒補助上限額は50万円×参画事業者数、補助率は2/3以内 (1事業あたりの補助上限額は、3,000万円((1)+(2))及び事務費・専門家費) | |
5万~350万 | ~10万 | ~20万 | |||
内、5万~50万円以下部分 | 内、50万円超~350万円部分 | ||||
機能要件 | 会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上 | 会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上 | 左記ITツールの使用に資するもの | ||
補助率 | 3/4以内 | 2/3以内 | 1/2以内 | ||
対象経費 | ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費 |
デジタル化基盤導入類枠
上述の要件を満たしていれば、個社ごとに申請可能です。補助率も高いため、「会計・受発注・決済・EC」の機能を持つソフトウェアを検討している企業は積極的に活用すべきでしょう。
個社ごとに申請を行う予定の企業は、以下の類型判別チャートを参考にしてみてください。
複数社連携IT導入類型
補助対象事業者は、同一の補助事業を実施する事業者のまとまり(補助事業グループ)であり、商工団体・観光地域づくり法人のような企業に限られています。1社単独での申請は行えないため、複数社連携IT導入類型の要件をよく確認する必要があります。
IT導入補助金の対象
対象事業者
IT導入補助金の交付対象とされている「中小企業・小規模事業者等」とは、以下の表に含まれる企業・事業者を指します。
業種・組織形態 | 資本金 | 常勤する従業員数 | |
---|---|---|---|
資本金・従業員規模の一方が、 右記以下の場合対象(個人事業を含む) | |||
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 | |
卸売業 | 1億円 | 100人 | |
広告業、コンサルティング業、士業、BPOなどのサービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 | |
小売業 | 5,000万円 | 50人 | |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 | |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 | |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 | |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 | |
その他の法人 | |||
医療法人、社会福祉法人、学校法人(上記以外) | - | 300人 | |
商工会・都道府県商工会連合会及び商工会議所 | - | 100人 | |
中小企業支援法第2条第1項第4号に規定される中小企業団体 特別の法律によって設立された組合またはその連合会 財団法人(一般・公益)、社団法人(一般・公益) 特定非営利活動法人 | - | 主たる業種に記載の従業員規模 |
業種分類 | 従業員(常勤) |
---|---|
商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く) | 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 20人以下 |
製造業その他 | 20人以下 |
上記をはじめ、補助金対象となる事業者には複数の条件がありますので、詳細は事務局ポータルサイトをご確認ください。なお、2021年度は課税所得が15憶円を超える中小企業は申請不可になりました。そのほか上記対象に該当しない事業者(大企業)の孫会社も申請できない場合もあるため、よく注意が必要です。
対象ツール
IT導入補助金の対象ツールは、下記の要件を満たしていると事務局より認定を受けたもののみとなります。あらかじめ、事務局のポータルサイトのITツール検索で確認するか、ツールを提供するベンダーに対象ツールであるかを確認するのがおすすめです。
ITツールの購入において、補助対象となる経費は大分類Ⅰ~Ⅳの下記の4つです。
①ソフトウェア
生産性の向上、インボイス制度への対応等の業務環境改善に資するソフトウェアが補助の対象となっています。A、B類型(通常枠)においては、業務プロセスのいずれかを満たすもの。デジタル化基盤導入類型においては、①の対象かつ、会計・受発注・決済・ECの機能を必ず1種類以上含んでいる必要があります。
② オプション
①の導入に際して必要な、下記のオプションも補助対象です。
- 自動化・分析ツール
- 汎用ツール(テレワーク環境の整備に資するツール含む)
- 機能拡張
- データ連携ツール
- セキュリティ
③ 役務(付帯サービス)
①の導入に際して必要な、下記サービスも補助対象になります。
- 導入コンサルティング
- 導入設定・マニュアル作成・導入研修
- 保守サポート
④ハードウェア購入費(デジタル化基盤導入類型のみ)
デジタル化基盤導入類型で申請を行った場合、①の導入に際して必要な下記ハードウェアも補助対象になります。
- PC・タブレット・プリンタ・スキャナーおよびそれらの複合機器
- POSレジ、モバイルPOSレジ、発売機
申請・手続きの流れ
IT導入補助金の申請には、サービスを受ける企業側と、サービスを提供するベンダー側(IT導入支援事業者)の双方で手続きが必要となります。当記事では、ツールを導入する事業者側が行うことに焦点を絞ってご紹介します。
①ITツールの選定
補助金を利用したいツールの選定を行います。
先述の「対象ツール」の項目も参考に、自社のニーズに合ったツールを選びましょう。
②gBizIDプライムアカウントの取得
gBizIDとは経済産業省が提供する、1つのIDで様々な行政サービスにログインできるサービスです。IT導入補助金でも申請時に取得する必要があります。
- gBizIDのWebフォームに必要事項を記入
- 申請書をダウンロード・印刷し、印鑑証明書とともに送付
- 送付から最低1週間程度で仮登録完了メールが到着
- メール記載のURLにアクセスすることで発行されるワンタイムパスワードを入力
- 新規パスワードを登録することでアカウントの作成が完了
gBizIDプライムアカウントを未取得の場合はより計画的に準備する必要があります。
③必要書類の準備
法人が交付申請するにあたり、事前に下記2点の必要書類の準備が必要です。
- 履歴事項全部証明書(交付申請日から遡って、3ヶ月以内に発行されているものに限る)
- 法人税の納税証明書(その1納税額等証明用)または(その2所得金額用)であること(税務署の窓口で発行されている、直近分のものに限る。電子納税証明書、(その3)(その4)、領収書は不可)
必要書類の準備も計画的に進めていきましょう。
④「申請マイページ」にて企業情報を入力
申請者ごとに開設できる「申請マイページ」に申請者・ベンダーがそれぞれ申請に必要な情報を入力します。
「申請マイページ」の開設のために前述のgBizIDプライムのアカウントが必要になります。
昨年通りであれば、申請者側は企業概要・財務状況・経営状況といった企業情報を、ベンダー側は事業計画・ツール情報・申請額を入力する必要があります。
両社が情報を入力した後、申請者側が申請マイページにて賃上げ目標策定の有無を入力、SMS認証を行い、申請を行います。
⑤交付決定・補助事業の開始
交付の採否が確定すると、事務局から交付決定通知が届きます。
契約や発注が交付決定通知より前に行われた場合は補助金の交付を受けられなくなるので、注意が必要です。
※なお「デジタル化基盤導入類型」の場合は、この限りではありません。
採択率を上げるために重要なポイント
申請が採択につながるよう、事務局へ提出する前に以下の2つのポイントを満たせているか、
確認するようにしましょう。
- 申請情報に不備がないか
- 申請内容に一貫性があるか
不採択理由で意外にも多いのが情報の不備。特に提出書類に記載されている情報に不備があると
他の項目に関係なく、不採択に直結しますので、抜かりなくチェックしましょう。
よくある申請不備の例
- 履歴事項全部証明書の全てのページが揃っていない
- 履歴事項全部証明書の内容と入力した企業情報が異なっている
- 法人税の納税証明書ではない
といったケースがあります。申請不備で不採択にならないようによく確認することが大切です。
申請内容の一貫性とは
審査では、「経営課題に沿ったITツールを選んでいるか」が重視されます。
入力した企業情報をもとに「どこが経営課題と判断されそうか」の仮説を立て、
「その課題解決のために最適なITツールである」と伝わるようなストーリー性のある申請内容に
しましょう。
例えば、長時間労働や営業利益の低さが課題である企業は、
「基幹業務システム(ERP)を活用して現場部門の業務効率化を図り、残業時間の削減・労務費削減による利益率回復を目指す」といった一貫性がある申請内容を入力することがポイントとなります。
IT導入補助金の申請はお早めに
ITツールの導入により経営課題の解決を後押しするIT導入補助金を上手く活用し、生産性の向上を図りましょう。IT導入補助金の申請にはいくつかのステップがあることを「申請・手続きの流れ」でご紹介しました。その中には、gBizIDの取得やマイページに入力する情報の収集など時間を要するポイントもあります。
申請者とベンダーの連携が必要となる部分もあるので、申請期限に間に合うよう、計画的に申請の準備を進めましょう。IT導入補助金対象のITシステム・ツールを販売するベンダーでは、IT補助金取得に向けて担当者がサポートしている場合が多くあります。
株式会社オロでもサポートを行っておりますので、IT補助金を利用した弊社のツール導入を検討している企業様は、お気軽にお問い合わせください。
IT補助金の概要、申請におけるポイントについて知りたい方は、下記のダウンロード資料をご覧ください。