工数予実管理とは?行うメリットとスムーズに進める方法を解説

2025/10/24公開
プロジェクトをスムーズに進め、リソースを無駄なく活用するためには、工数予実管理が欠かせません。どの作業にどれくらいの人員と時間がかかっているのかを表す「工数」は、プロジェクト型業務の利益にも大きな影響を及ぼします。
工数予実管理において、課題となりやすいのが「予定と実績の差分の把握」です。現場のメンバーに負担なく工数の予実を把握するためには、効率的な管理手法を取り入れる必要があります。
そこで本記事では、工数予実管理の重要性やそのメリット、具体的な管理手法についてお伝えします。プロジェクト管理や工数予実管理に悩む方は、ぜひ参考にしてください。
目次
工数予実管理とは
工数予実管理とは、工数の予定と実績の差異を管理することで、プロジェクトをスムーズに進めるために欠かせない手法です。「工数」は、人が作業にかけた時間を指し、誰が・何人で・どのくらいの時間をかけたのかを意味します。作業ごとにかかる時間×人数で表現可能です。
「予実」は、予定と実績を比べることを指します。すなわち工数予実管理とは、「どの作業に、どれくらい時間がかかる予定だったのか」という工数見積もりを立てたうえで、「実際はどうだったのか」という実績を把握し、見積もりと実績のズレを見える化する管理手法です。
このズレの可視化は、プロジェクトの振り返りや、次回以降の見積もり精度の向上に欠かせません。また、現場の進捗状況を正しく把握するうえでも工数予実管理は重要です。
工数見積もりはなぜ重要?
見積もった工数をもとに算出した予定工数が、プロジェクトのスケジュールやリソースの計画の土台になるからです。工数=人件費に直結する場合は、価格設定にも欠かせない重要な要素です。
工数予実管理は、そもそも正確な工数見積もりがあってこそ機能する管理手法です。なぜなら、計画段階での見積もりが甘いと、予実のズレが大きくなり、何が原因で計画通りに進まなかったのかを把握しづらくなるからです。
結果として、的確な判断や軌道修正ができず、プロジェクトの遅延やリソースの無駄遣いにつながる恐れがあります。そのため、工数の見積もりを丁寧に行い、現実的な計画を立てることが、プロジェクト成功の第一歩となります。
まずは工数管理や工数管理の目的・流れについて知りたい方は、こちらの記事を参照してください。
通常の予実管理との違い
工数予実管理と通常の予実管理は、どちらも「計画と実績の比較」という点では共通していますが、対象とするものが異なります。
工数予実管理は、プロジェクトや業務にかかる時間と工数の計画と実績を比較し、管理する手法です。一方、通常の予実管理は、予算や売上など、財務的な計画と実績を比較し、管理する手法を指します。経営管理の一環として行われているのが、通常の予実管理です。
これらは目的が異なるため、管理方法や使用するツールも変わってきます。経営に関わる予実管理については詳しく知りたい場合は、こちらの記事を参考にしてください。
工数予実管理を行わないリスク
工数予実管理を行わずにプロジェクトを進める場合は、3つのリスクが発生します。工数を見積もるだけでは、プロジェクトにおいて工数を十分に活用することができません。
計画・進捗の大きなズレに気付けない
工数予実管理ができていないと、作業の実績を定期的に把握できないため、計画と実際の進捗の大きなズレに気づきにくくなります。「順調に進んでいるはず」と思っていても、実際は想定より作業が大幅に遅れている、といったケースも珍しいことではありません。
ズレが小さいうちはまだ軌道修正も可能ですが、ズレに気付かず放置することで大きなズレとなり、その後の工程で取り戻すことが難しくなることがあります。
チームのリソースにムラが出る
工数予実管理では、作業にかかった時間だけでなく、「誰がどの作業に、どれくらいの時間を使っているのか」も管理対象とします。作業者別の工数予実管理が不十分だと、各メンバーに割り当てられている作業量が把握できず、チーム内でリソースの偏りが生じやすくなります。
具体的なリスクとして挙げられるのは、「一部のメンバーに負担が集中しているのに、別のメンバーは手が空いている」といった業務負荷の偏りです。
その結果、業務に不満を持つメンバーが出てくる恐れもあります。
工数のズレが表面化するまで対応できない
工数のズレを定期的に確認していないと、課題が顕在化するまで気づけず、対応が遅れてしまうリスクがあります。 気づいたときには納期まで時間が足りなかったり、予算を大きく超えていたり、プロジェクト終了後に作業者の工数が大幅に増えていたといった深刻な状況になってしまうこともあります。
工数予実管理を行うメリット
工数予実管理を行うことで、プロジェクトの効率や精度を大きく高めることができます。具体的なメリットは以下の3点です。
プロジェクトの工数進捗を正確に把握できる
工数予実管理を行うことで、計画と実績の差を定期的に確認でき、現時点での進捗の正確な把握が可能です。プロジェクトが計画通りに進んでいれば問題ありませんが、遅れが生じるようなケースでは、特に工数予実管理が重要な役割を果たします。
どの作業が遅れているのか、どこにリソースを追加すべきかを早期に見極められるため、プロジェクト全体の遅延リスクを減らせるのです。
リソースの適切な配分が可能になる
工数予実管理を活用することで、「誰がどの作業にどれだけ時間を使っているか」を明確にできます。これにより、作業負荷の偏りや過剰な残業を防ぎ、チームメンバーのリソースを無駄なく効率的に配分できるようになります。
計画よりも進捗が良い場合には、作業者や作業時間を減らし、別のプロジェクトの作業を充てられるというメリットもあります。複数のプロジェクトでリソースを無駄なくリソースを活用できるため、全体最適にも繋がります。
計画との差異を早期に把握できる
工数予実管理により、計画との差異を早期に把握できるため、問題の兆候をいち早く察知できる点もメリットです。作業の遅れやリソース不足など、小さなズレに早めに気づいて調整を行うことで、納期遅延など後々のリスクを未然に防げます。
スムーズな工数予実管理の方法・流れ
工数予実管理は、丁寧な工数見積もり、こまめな実績値の確認と計画値との比較が重要です。一般的なプロジェクトの流れとスムーズに工数予実管理を行うためのポイントをお伝えします。
工数を具体的に見積もる
プロジェクト開始前に、「どのタスクに・どれくらいの時間が・どのメンバーに必要か」を細かく見積もることが、スムーズな工数予実管理につながります。過去の実績や、各担当者の声を取り入れながら、現実的な工数を算出することがポイントです。
できる限り工程を細かく分けて、それぞれの工数を丁寧に見積もることが、現実的な計画を立てる第一歩となります。
定期的にモニタリングする
プロジェクトがスタートしたら、実績工数をこまめに記録し、予定と想定以上にズレていないかを定期的に確認しましょう。記録した実績工数は、計画値との差異がわかるような形で可視化し、プロジェクトメンバー全員が閲覧できるようにしておくと、進捗共有がスムーズになります。
この見える化は、プロジェクトの遅れやメンバー間の負荷の偏りへの早期対応につながるため重要です。
ズレが出たらすばやく調整する
定期的な工数のモニタリングで見積もりと実績に想定以上の差が出てきた場合は、即時にリソースの再配分やタスクの優先順位の見直しなど、適切な対応を行います。この調整を先送りにすると、後工程に大きな影響が出るため、スピーディな判断が求められます。
判断を即座に行うためにも、常に現状の予実を可視化しておくことが大切です。すばやく修正することが難しい場合であっても、「どの工程で・どのような方法を用いれば取り戻せるか?」を試算するため、ズレを早めに発見することが重要となります。
結果を振り返り、次に活かす
プロジェクト終了後は、予実の差異を振り返り、見積もり精度や進捗管理の方法に問題・反省点がなかったかを整理します。上振れでも下振れでも差が大きかった工程は、見積もりが甘かったのか、予定外の作業が発生したのかと、差の原因分析を行うことがポイントです。
フィードバックを確実に行えば、次回の計画に活かせます。記録した実績や振り返り内容を残しておくと、他プロジェクトに応用しやすくなります。こうしたフィードバックの積み重ねが、次回以降の工数予実管理の精度向上につながるのです。
工数予実管理を効率化するツール
工数予実管理は、たくさんのメリットがありますが、手間もかかります。
Excelをはじめとした表計算ソフトや、専用の管理ツールなど、さまざまな手段で行うことで効率化できます。ここからは、工数予実管理を行う上でおすすめのツールを紹介するので参考にしてください。
Excel
Excelは、工数の記録や集計に柔軟に対応できるため、シンプルな管理をしたい場合におすすめです。他の業務で使用されることも多く、基本的な操作に慣れているメンバーが多いため、ルールを設定したあとは操作方法のレクチャーなどが不要な点もメリットです。
既存のテンプレートや関数を活用すれば、効率的に管理できますが、プロジェクト数やメンバーが増えると手動更新の負担が増え、ミスのリスクも高まります。そのため、比較的小規模なチームや短期間のプロジェクトでの活用に向いています。
プロジェクト管理ツール
プロジェクト管理ツールは、プロジェクト型業務に特化し、プロジェクトの計画や進捗把握が可能なツールです。複数プロジェクトの進捗・工数を一元管理できるのが特徴です。タスクごとに工数の計画・実績を記録し、視覚的に進捗を確認できる機能も備えています。
導入には費用がかかる場合が多く、使い方もツールによって異なるため、導入時に説明会などが必要です。その分、効率化や情報共有の促進が期待できます。Excelで起こりがちな動作の重さや同時編集ができないといった課題から解放される点もポイントです。複数のプロジェクトを同時並行で進める企業や、工数管理・タスク管理を同時に行いたい現場などには特に向いています。
プロジェクト管理機能を持つERP
ERPは、売上・原価・工数などを一気通貫で管理できる統合型システムです。プロジェクト管理機能に強みをもつERPであれば、プロジェクトにかかる工数以外のリソースを可視化したり、進捗中のプロジェクトの損益を確認しながら、工数予実管理が可能です。
統合型であることから、工数の入力から予実管理までを仕組み化でき、計画と実績の差分をリアルタイムに把握できる点が強みです。すでに利用しているERPであれば問題ありませんが、これから導入する場合には費用も期間もかかるため、計画的な検討が必要です。
Excelや単体のプロジェクト管理ツールよりも高価なため、工数の予実管理のほかにもバックオフィスや案件管理における課題がある場合は導入を検討してみてください。
日々の入力だけで、工数と予実のズレを見える化
本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』は、プロジェクトに複数の原価を紐づけて管理ができます。工数を変動する原価としてとらえ、「かける予定の工数(計画)」と「実際にかかった工数(実績)」を記録可能です。Excel等を使った計算の手間なく予実の比較が可能で、差分のリアルタイムな把握もできる機能を備えています。
担当者や工程ごとの計画工数を設定し、日々の作業時間を入力していくだけで、プロジェクトの工数予実管理が仕組みとして回るようになります。予実管理はこまめな工数記録が肝要だからこそ、入力の手間を省いて現場の作業を減らし、正確な現状把握ができるようにすると良いでしょう。そこで有用なのが、ZACなのです。
工数の入力作業を効率化し、プロジェクト全体の正確な損益把握を実現したい方やプロジェクトの工数予実管理にお悩みの方は、ZACの利用も検討してみてください。
まとめ
工数予実管理は、プロジェクトや案件の各作業にかかる時間と人数の予定・実績を把握し、スムーズな進行を図るために必要なプロジェクト管理の手法です。予算に関する予実管理同様、計画値の見積もり精度の高さが重要です。
工数予実管理が行われていなければ、プロジェクト進行に遅れや問題が生じたり、問題に気づくまでに時間がかかったり、チームのリソースにムラが生じたりする原因となります。
一方で、確実な工数予実管理が実現できれば、プロジェクトの進捗やリソース配分を正確に把握でき、問題が生じても早期に対応できるのです。
工数予実管理はExcelで行われるケースも多いですが、人数やプロジェクトの期間にあわせて、工数管理ツールやZACのようなERPなどのシステムを活用するとより正確で効率的です。