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精算幅の基礎知識。超過・控除の計算、固定精算との違い

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2026/3/27公開

SES業界で用いられることの多い「精算幅」は、SES企業に支払われる報酬の精算方法のひとつです。発注する企業側と受託するSES企業側、双方の負担を減らせることから取り入れられています。

しかし、精算幅を採用することによるデメリットもあるため、契約の際は注意が必要です。本記事では、精算幅の基礎知識と取り入れられる背景、具体的な報酬の計算方法を解説します。精算幅の計算の種類や固定精算との違いなども紹介するので、ぜひ参考にしてください。

目次

    「精算幅」とは?

    精算幅とは、業務の受託者に対する報酬精算方法の一つです。特にSES契約などで用いられることが一般的です。

    具体的には、「月140〜180時間:報酬60万円」と設定している場合、エンジニアの実労働時間が140〜180時間の間であれば一律60万円が支払われます。この労働時間の上限と下限の幅が「精算幅」です。

    精算幅で設定された時間を下回れば減額され、上回れば追加で支払われます。例えば上記の例で実働130時間なら報酬は減額され、190時間なら追加支払いが発生します。

    精算幅を設定する理由

    精算幅を設けるのは、発注する企業側と、受託するSES企業側双方にメリットがあるためです。精算幅を設定することで、双方の報酬・コストの調整がしやすくなり、契約関係をスムーズに保てます。特にSES契約では月ごとの稼働時間が変動しやすいため、精算幅を設けることで双方が安心して業務を進められます。

    具体的なメリットは以下の通りです。

    • 発注企業側:月々の業務量や営業日数との変動に応じたコストの最適化が可能、支払い処理の手間を減らせる
    • 受託企業側(SES企業など):稼働時間の多寡に関係なく一定の報酬を得られる、収益が安定するため精算幅は発注側と受託側の双方で合意をして設定します。あくまで両者間での契約事項であり、法律上の定めはありません。

    上限・下限時間の決め方

    精算幅の上限時間と加減時間は、以下のような考え方で決められます。

    上限時間(最大時間):この時間を超えて稼働した場合は、超過分として追加報酬が支払われるのが一般的です。具体的な精算方法は契約内容によって異なります。
    下限時間(最小時間):稼働時間がこの時間に満たない場合は、不足分が報酬から差し引かれます。(控除)

    上限・下限時間の決めるには、1日の想定稼働時間×月間の想定稼働日数=標準稼働働時間を算出します。この時間に対して、±10〜20時間程度の幅を持たせるのが一般的です。

    具体的には、1日8時間×月間20日稼働=160時間とした場合、上下20時間ずつ幅を持たせて140〜180時間となります。実際の精算幅は、企業やプロジェクトの内容、受託者の稼働条件によって異なる点に留意しましょう。

    SES契約などで用いられる精算幅の計算方法

    精算幅を用いた報酬計算では、あらかじめ定めた下限から上限までの時間範囲が基準です。超過した場合や下回った場合は、実働時間に応じて精算額を調整します。

    超過・控除の計算方法は以下の3種類があり、どのように計算されるか理解しておく必要があります。それぞれどのような考え方なのか見ていきましょう。

    上下割

    上下割は、精算幅に対して超過した場合や下回った場合で時間単価を変えて精算する計算方法です。具体的には以下のように算出します。

    • 超過した場合の時間単価:基本原価÷精算幅の上限時間
    • 不足した場合の時間単価:基本原価÷精算幅の下限時間

    それぞれ算出した時間単価×超過時間(or不足時間)で、報酬を追加・控除します。超過した場合の時間単価のほうが、不足した場合に比べて低くなる点が特徴です。

    中間割(中割)

    中間割(中割)は、精算幅の中央値をもとに時間単価を算出する方法です。上述した一般的な精算幅の140〜180時間であれば、中央値の160時間を基準にして時間単価を算出します。

    • 超過・不足した場合の時間単価:基本原価÷160時間

    超過しても不足しても一律の時間単価で計算されるため、シンプルさと不公平感の少なさが特徴です。

    日割

    日割は月の途中から参画・終了する場合だけでなく、月内の営業日数が極端に少ない場合に精算幅そのものを調整する際にも用いられます。

    実際に稼働した日数を、想定稼働日数で割り、その割合を元に新たな月額報酬・精算幅を設けるのが日割という考え方です。

    稼働時間の超過・不足はどう計算する?

    ここからは、上記で解説した稼働時間の超過・不足分に対する追加・不足の計算方法を具体的に解説いたします。

    上下割の超過・控除の計算方法

    上下割では、超過した場合と不足した場合でそれぞれ以下のように計算します。

    • 「月140〜180時間:報酬60万円」で上限を10時間超過した場合
      ▹ 超過分の時間単価=600,000円÷180時間=3,333円
      ▹ 支払われる報酬額=600,000円+(3,333円×10時間)=633,330円

    • 「月140〜180時間:報酬60万円」で下限から10時間不足した場合
      ▹ 不足分の時間単価=600,000円÷140時間=4,286円
      ▹ 支払われる報酬額=600,000円−(4,286円×10時間)=557,140円

    上下割では、超過と不足で時間単価が異なる点が特徴です。

    中間割の超過・控除の計算方法

    中間割(中割)では、超過した場合と不足した場合でそれぞれ以下のように計算します。

    • 「月140〜180時間:報酬60万円」で上限を10時間超過した場合
      ▹ 超過分の時間単価=600,000円÷160時間=3,750円
      ▹ 支払われる報酬額=600,000円+(3,750円×10時間)=637,500円

    • 「月140〜180時間:報酬60万円」で下限から10時間不足した場合
      ▹ 不足分の時間単価=600,000円÷160時間=3,750円
      ▹ 支払われる報酬額=600,000円−(3,750円×10時間)=562,500円

    中間割は超過・不足の単価が同じで計算がシンプルなため、公平感があり、管理がしやすい方法です。

    固定精算(固定報酬制)との違い

    固定精算(固定報酬制)とは、実際の稼働時間にかかわらず一定額の報酬を支払う精算形態です。業務量が比較的安定してます。精算割のように、稼働時間の上下限や稼働時間変動に伴う報酬額の変更がないため、発注企業側は月々の支払いやコスト計算がシンプルになります

    ただし、エンジニアの稼働時間が少なかったり稼働日数が少ない月だったりしても報酬額は減らません。逆に稼働時間が想定を超えても、SES企業側に追加の報酬は支払われない点に注意が必要です。

    【図解】上下割・中間割・固定精算の特徴

    稼働時間の定め報酬額の変動超過・控除分の時間単価
    上下割 上限・下限あり 稼働時間により変動 超過or控除で異なる
    中間割 超過・控除とも同じ
    固定精算 時間の定めなし 変動なし -

    SESの報酬形態として紹介した上下割、中間割、固定精算の特徴を上記の表にまとめました。さらに、各形態でどのようなメリット・デメリットがあるのかを解説します。

    上下割のメリット・デメリット

    上下割の特徴は、稼働時間の上限を超えた場合と不足した場合とで時間単価が変動する点です。トラブルなどで想定以上に時間がかかった場合でも、超過時の時間単価が下がることで、コストの増加を抑えられる点が発注する企業側のメリットです。

    受託するSES企業側にとって、稼働日数が少ないなどの要因で下限を下回った際には、上限を超えた場合に比べて控除される額が多くなる点がデメリットとなります。

    中間割のメリット・デメリット

    中間割は、超過・不足にかかわらず一定の時間単価で計算できるため、精算作業をシンプル化できる点がメリットです。SES企業にとっても、稼働時間によらず報酬が増加・控除されるため、不公平感が少なく安心して働けます。

    ただし、発注する企業にとっては上限超過時のコスト負担が増えるため、そもそも採用されにくい計算方法です。

    固定精算のメリット・デメリット

    固定精算は、稼働時間による報酬額の変動がないため、月々の精算処理が容易になります。発注する企業としては、プロジェクトの予算や年間予算の見通しを立てやすくなる点がメリットです。

    ただし、業務量が少なかったり早く完了したりと、稼働が少ない場合にも一定額を支払わなければなりません。発注企業としては、実態に即したコストとならない可能性がある点がデメリットです。

    受託するSES企業には、毎月一定額の報酬が得られる安心感がある一方、どれほど稼働時間が増えても報酬が変わらないデメリットがあります。

    【SES会社向け】精算幅の管理が難しい理由

    上述したように、SESの精算幅管理は特徴的な管理が必要です。その難しさは、以下のような点が理由となっています。

    プロジェクトごとに精算幅が異なる

    プロジェクトによって下限・上限・基準時間・基本単価が異なるためです。例えば、プロジェクトAは上下割、プロジェクトBは中間割、プロジェクトCは日割、というように、同じ会社内でも計算方式が異なることがあります。

    SES企業は複数のクライアント企業やプロジェクトを抱えていることが一般的なため、すべてを正確に管理・精算することが容易ではありません。

    契約・請求書・支払管理の複雑化

    契約や請求、支払いの管理が複雑化するためです。上述したように、顧客ごとに精算方式が違ったり、プロジェクトによっては途中入退場があることも多く、請求する際の計算や確認の負担が大きくなります。

    また、計算方法や作業時間の捉え方に違いがあると、顧客との金額認識にずれが生じ、修正や差し戻しが発生する可能性もあります。

    稼働報告の正確性を厳密に確保する必要がある

    エンジニアの稼働報告の正確性を客観的に担保しなければならないためです。精算幅は、報酬計算が稼働時間に依存しているため、過少報告や過剰報告があると、発注企業への請求額や利益計算にズレが生じます。

    そのため、稼働時間の記録方法や報告フローを整備し、正確なデータを管理することが重要になります。

    SESの精算幅管理には専用システムがおすすめ

    SES事業を営む中で、現状の管理方法に負担や課題を感じている場合は、管理手法の見直しや、SESに適したシステム活用も視野に入れるとよいでしょう。

    契約や請求に必要な「精算幅」「稼働時間」「途中入退場」などの情報管理や、クライアント/要員ごとなどで多様な契約形態の管理、それに基づく請求金額の計算に対応できるツールがおすすめです。

    システムを活用することで、手作業による計算ミスを防ぎ、管理業務の負担を大きく軽減できます。

    まとめ

    SESでよく用いられる精算幅ですが、基本的な考え方とメリット・デメリットを理解した上で、どの精算方法を採用するか考えることが肝要です。精算幅と一口に言っても、時間超過・不足分の精算を上下割で行うのか中間割で行うのかによって、SES企業が得られる報酬は異なります。

    精算幅では、エンジニアの実稼働時間に応じて報酬額が変動します。そのため、稼働時間を正確に管理することが、報酬計算や請求トラブルを防ぐうえで重要です。

    一方で、精算幅の計算方法や契約条件はプロジェクトや顧客ごとに異なることが多く、SESにおける契約・請求・支払管理は複雑になりがちです。そのため、プロジェクトごとの条件を整理し、適切に管理できる体制を整えることが求められます。

    必要に応じて、精算情報をまとめて管理できるシステムの導入も検討してみてください。

    Q
    精算幅とはなぜ必要なのですか?
    A
    実際の稼働に応じたコスト最適化のために必要です。精算業務もシンプル化できます。詳しくは精算幅を設定する理由をご覧ください。
    Q
    SESの精算幅は、法律で決められていますか?
    A
    法律による定めはありません。発注する企業と受託するSES企業側が双方納得する形で精算幅を定めます。 詳しくは精算幅を設定する理由をご覧ください。
    Q
    精算幅と固定報酬制との違いは何ですか?
    A
    精算幅は、稼働時間に応じて報酬額が変動するのに対し、固定報酬制は稼働時間にかかわらず一定の報酬額となります。 詳しくは固定精算(固定報酬制)との違いをご覧ください。

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    矢野 由起

    この記事の筆者

    ライター

    矢野 由起

    製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

    平野 雅也

    この記事の監修者

    株式会社オロ 社長室 新規事業開発Bizチーム

    平野 雅也

    2022年クラウドERP「ZAC」の新規営業職として入社。現場での経験を経て、2025年より新規事業へ異動。現在は営業、マーケティングまで幅広く従事している。