BPR(業務改革)とは?進め方や業務改善との違いについて解説!

2021/12/14公開2022/12/15更新
BPRとは、業務プロセス全体を抜本的に見直し、新しい業務プロセスを構築することを言います。日常的な業務プロセスの中で課題を見つけ改善を繰り返す業務改善とは異なり、新しいプロセスを構築する点はまさに「改革」と言えるでしょう。
BPRの目的は、社内の生産性を向上させることのほか、製品やサービスの品質向上、従業員満足度の向上、意思決定のスピードアップなど、社内外でさまざまなメリットを得ることができます。本記事では、BPRの進め方や業務改善との違いを詳しくご紹介します。
目次
BPR(業務改革)とは?
BPRは「Business Process Reengineering」に由来する略称で、日本語では業務改革と呼ばれます。 BPRは、従来の業務プロセスの課題を抽出し、業務の進め方や情報共有のしかた、組織のありかた、導入している情報システムなど、業務プロセスの課題に関わるものを再構築していくという考え方です。 BPRはもともと、マサチューセッツ工科大学のマイケル・ハマー教授と経営コンサルタントのジェイムズ・チャンピーの著作『Reengineering the Corporation: A Manifesto for Business Revolution』(1993年)で提唱された考え方です。邦題では『リエンジニアリング革命』としても出版され、その考え方は日本にも広がっています。 『リエンジニアリング革命』では、コストや品質、スピードといったパフォーマンスに重要な要素を劇的に改善するため、ビジネスのプロセスを根本的に再考しデザインすることを「リエンジニアリング」と呼んでいます。
BPR(業務改革)と業務改善の違い
BPR(業務改革)と業務改善はよく混同される概念ですが、意味は大きく異なっています。 業務改善とは、あくまで課題が見つかった業務の一部を改善することです。また、業務を進めながら少しずつ改善を施していくため、「業務の部分的な課題を少しずつ修正していく」と理解しましょう。 一方で、BPR(業務改革)は、その名の通り業務の抜本的な「改革」を行います。BPRが目指すものは抜本的で劇的な効率化であり、業務プロセスを1から見直すことになります。 BPRは業務プロセス全体を改革対象にするため、必然的に部署間にまたがる業務や組織のありかたといった大きなテーマを扱い、会社全体で取り組むことが求められます。
BPRの4つの要素
次に、BPRの定義に内包される4つの要素を1つずつ見ていきましょう。BPRを成功させるためには、この4つの要素が含まれた改革を心がける必要があります。
①根本的
「根本的」とは、従来の業務をなぜ実施しているのか、大元の理由を明らかにするという意味があります。 特に歴史の長い会社は、業務を根本的に見直す機会がなくなり、仕事の効率性が失われてしまっている可能性があります。現在の業務の必要性を問い直したり、組織の現在の体制は合理的なのかを考えるなど、根本的な見直しが求められます。
②抜本的
「抜本的」とは、時代にそぐわない要素を捨てさり、慣習的に進めてきた業務を本当に必要な業務だけにすることとされます。 例えば、「従来から決められた方法がある仕事だから」といった理由で見直しがされない業務プロセスや組織構造は、結果的に非効率な結果を生み出す可能性があります。 客観的に見直すことが、「抜本的な」改革なのです。
③劇的
「劇的」とは、インパクトの大きな改善をすることです。 業務改善が「部分的」な改善であるのに対し、BPRは最大限効果のある改善を行うことが目的であり、この点が両者の違いでもあります。 業務プロセスや組織のありかたを、大胆に変化させることで、「劇的な」効果が期待できるのです。
④プロセス
「プロセス」は、仕事の手順、人員配置、役割分担などの変更、仕事のやり方をプロセスとして定義することで、業務遂行の仕組みを構造的に変更することを言います。 日本企業は意思決定プロセスが複雑化、煩雑化しやすいことが指摘されています。BPRによって顧客志向のプロセスへと作り替えることで、企業の価値が高まることが期待できます。
BPRの進め方
BPRは、次のプロセスで進めていきます。
- 戦略・方針の策定
- 業務フローの見直し
- IT設備などへの投資
- BPRのモニタリングや業務改革の効果測定
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
戦略・方針の策定
まずはBPRに関する戦略・方針の策定を行います。 BPRは社内の業務プロセスや組織のありかたを根本的、抜本的、劇的に変革するものです。そのため、社内のコンセンサスを得ることが必要不可欠です。 なぜBPRが必要なのか、どのような戦略を立てるのか、実施する際に依拠する方針はどのようなものなのかを具体的に決め、社内での合意形成を図りましょう。
業務フローの見直し
次に、従来の業務フローを見える化し、現在でもそのフローが合理的、妥当なものかを検討します。 業務フローの中でも非効率になりやすいのが稟議におけるプロセスです。物品の購入など日常的に高頻度で発生する業務や、顧客のためにスピーディーな決定を求められる業務では、できるだけ決裁権を下層の役職者に下ろすなどの改革が必要でしょう。
IT設備などへの投資
IT設備への投資を行うと、業務プロセスが効率的かつスピーディーになります。 ERPやCRMなどのシステムを導入することで、業務プロセスを大きく改善し、情報共有を迅速化できるでしょう。 クラウド型のシステムは比較的小規模な企業や部署でも利用可能で、場所や時間の制限がないことから、従業員の働きやすさに直結する有効な投資と言えます。
BPRのモニタリングや業務改革の効果測定
BPRを効果的に進める際に忘れてはならないプロセスが、モニタリングや効果測定です。 BPRは実施して終わりではなく、実施前と実施後でどの部分がどの程度改善したかを把握し、内部や外部に説明できるようにする必要があります。 例えば、稟議に関するプロセスを改革したことにより、どの程度顧客への対応が早まったのか、あるいはどの程度顧客満足度が改善したのかなど、具体的な数値で示せることがベストです。
BPRを進める際のポイント
BPRを進める際には、いくつか注意すべきポイントがあります。ここでは3点ご紹介します。
BPRに関するPDCAサイクルの確立する
BPRは常にPDCAを回しながら、より良い形になるよう適宜修正していくことが望まれます。 そのため、BPRのPDCAサイクル確立のために、できるだけ目標や成果を定量化し、実施後に誰もが客観的に評価できるような体制を整えておくことが求められます。 その意味で、BPRは実施前のKPI設定時から勝負は始まっていると言えます。
関係者の間で情報を共有する
業務フローを見える化し、関係者がBPRの意義や現状・課題、BPRによって改善後にどのような会社の姿がイメージできるのかなどを共有することが必要です。 BPRは会社が一丸となって取り組む大きな改革です。そのため、BPRを適切に推進するためには、会社のトップや役員クラス、取引先など関係者から理解を得ることが必要不可欠です。
「ゼロベース」で考えられているか
繰り返しになりますが、BPRは「根本的」「抜本的」「劇的」な変革が求められます。そのため、これまでなんとなく続けてきた業務プロセスの必要性についてももう一度考える必要があります。 特定の部署や人への忖度や見せかけの部分的な改善では良い成果は得られません。文字通り「ゼロベース」で改革を進められているか、その都度自分たちに問い直してみましょう。
まとめ
BPRは現在の業務フローを問い直すことが求められるものであるため、成功すれば社内の行き詰まりや閉塞感を打破できるでしょう。 しかし、BPRの遂行には既存業務の徹底的な見直しなど、大きな推進力が必要となり、場合によっては社内の反発も生じる「痛みを伴う改革」になるでしょう。 だからこそ、社内への周知や合意形成ができているかが成功のカギを握ることになります。 今回ご紹介したBPRの流れを参考に、社内の合意形成を図りながら適切なプロセスで改革を進めていきましょう。