基幹システムとは?ERP、情報系システムとの違いやメリットを説明

2020/10/02公開2022/4/22更新
多くの企業に導入され、経営の根幹を担う基幹システム。ERPをはじめ、情報系システムなど類似する名称が多くあり、混乱する方も多いのではないでしょうか。今回は基幹システムや情報系システム、ERPとの違いや導入方法、メリットについて説明します。
目次
基幹システムとは
業務の根幹を支え、ヒト、モノ、カネ、(情報)を管理する基幹システム。一般的には下記のシステムが挙げられます。
- 生産管理システム
- 在庫管理システム
- 販売管理システム
- 購買管理システム
- 勤怠管理システム
- 人事給与システム
- 財務会計システム
基幹システムが停止すると、企業活動そのものも停止してしまう可能性があるため、経営活動を維持していく上で基幹システムは必要不可欠です。簡単に代用できず、運用する上で堅固なセキュリティ環境が求められるシステムでもあります。
基幹システムと情報系システムの違い
次に基幹システムと混同されやすい「情報系システム」について説明します。情報系システムとは一般的に、社内外の情報共有、コミュニケーションの円滑化、事務処理の効率化、意思決定促進などに利用されるシステムを指します。基幹システムと違い、止まったとしても業務を進められるものが多い点が特徴です。情報系システムには主に次のツールが挙げられます。
- メールソフト
- グループウェア
- スケジュール管理ツール
- 社内SNS(ビジネスチャット)
- 営業支援システム(SFA)
- 顧客管理システム(CRM)
分類 | 基幹システム | 情報系システム |
---|---|---|
システム・ツール |
|
|
目的 | 経営に必要となる人・モノ・金・(情報)を管理 | 通常の業務を効率化 |
特徴 | 停止すると企業活動そのものに支障が出る | 停止しても代替可能である |
本記事で説明する情報系システムは、類似した用語である情報システムとは別概念です。情報システムはコンピューターやネットワークを使用したシステムの総称であり、基幹システムや情報系システムも情報システムの一種となります。
基幹システムとERPの違い
ERPとは、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略。もともとは経営を効率化する概念で、資源利用を最適化するためのマネジメント手法であるMRP(Material Resource Planning:資材所要計画)から派生した言葉であり、基幹システムのひとつです。その概念や手法を具現化したものがいわゆるITシステムとしてのERPとなります。
ERPは先述した基幹システムに分類される各種システムを統合したものであり、一部の情報系システムと連携できるものです。ERPと基幹システムや情報系システムの大きな違いは、各機能間の情報をつなげることで、経営に関わる社内の情報を可視化・分析できる点です。
ERPは基幹業務や情報系システムの一部の情報を一元的にかつリアルタイムでまとめて管理できます。企業内に存在するあらゆる経営資源の整合性を取ることができる上、部門ごとに独立したシステムを使用した場合に比べ、効率的にデータの管理を行えます。
さらに、ERPにはデータ分析ツールなどを含むものが多く、一元管理によって集約された情報により社内の情報を分析し経営の意思決定に役立てることもできます。これにより経営者はより企業の現状や市場に合わせた経営戦略を打ち出せるようになるのです。
基幹システムを導入する方法
では基幹システムは具体的にどのように導入すればいいのでしょうか。ベンダーやシステムによって異なりますが、大まかに以下4つのプロセスを経て導入されます。
- 企画
- 要件定義
- 設計・実装
- 運用・サービス
それでは各プロセスではどのようなことを行うのか、具体的に説明していきます。
①企画
基幹システムを導入する上で最も肝となるプロセスです。経営方針に寄り添った企画を以下のステップで進めていきます。
- 企業経営における中長期的な計画と現状を照らし合わせ、自社が抱える経営課題を抽出する
- 基幹システム導入により解決したい経営課題を明確にする
- システム導入によって改善したい経営指標も明らかにする
- それらに適合する製品や導入形態、ベンダーを選定する
また、並行して基幹システム導入のプロジェクト体制を整えることも重要です。基幹システムは全社で活用していくものであり、管理者層のみで進めることはできません。システムのインフラ、サーバーなどに詳しい人員やテスト要員だけでなく、業務に携わる現場社員を巻き込む必要があります。
基幹システム導入に責任を持つ、プロジェクトマネジャーを選任し、部署を横断してコミュニケーションを取れる現場社員を抜擢することで、より現場の声を反映したシステム導入が可能になります。体制を整えながら、大まかなスケジュール、タスク一覧、各種管理方法(進捗・品質・コミュニケーション・リスクなど)を記述したプロジェクト計画を作成しましょう。
②要件定義
業務をもとにシステムの要件を定義します。まず基幹システムを導入するにあたり、システムと業務との差異分析(Fit:適合、Gap:差異)を行います。Gapがあれば、それを解消するために業務変更もしくはシステムの機能追加(カスタマイズ)が必要となります。
この分析結果を踏まえシステムの要件を詰め、新業務プロセスを定義していきます。事業形態が変化するたびに何度もシステムを変更するのは大きな負担となるため、長期的な視点を持ち、カスタマイズの可否や拡張コストを事前に検討しておきましょう。
また、システムを活用する部門や現場社員にもシステムに関する情報の周知や教育を行う必要があります。全社員の意識レベルを統一した上でシステム導入の日を迎えるようにしましょう。
③実装
要件が固まったら、ベンダーによるシステムの設計や開発がスタート。必要に応じて追加開発や他システムとのインターフェース開発も平行して行います。設計・開発を終えたら、次はテストフェーズ。機能別テストや総合テストを行い、システムの品質を確認しましょう。
④運用・サービス
テスト完了後、本番環境へのデータ移行やユーザー教育などを行い、システムをリリースします。障害状況を確認し、システム運用がスムーズに稼働するまでベンダーの支援を受けましょう。
また、基幹システム導入後も安定して運用できるように社内の体制を整えます。基幹システムの導入効果を最大化するためには、定期的な効果測定による適切な対応を続けることが肝要です。効果測定結果をベンダーに報告し、さらなる業務改善に向けた施策を検討しましょう。
上述したものは一例であり、基幹システム導入プロセスやスケジュールは企業により異なります。導入前と開発段階、導入後の運用を想定して念入りに計画しましょう。
基幹システム導入のメリット
基幹システムの導入メリットは大きく3つあります。
①管理部門の業務効率化
基幹システムを導入することで管理部門の業務が効率化され、生産性向上や人的ミスの削減につながります。企業規模が大きくなると業務量が増え、人力だけでは対応できなくなるケースも散見されます。基幹システムを導入することで、膨大な業務を限られた人数で回すことができます。
②業務の標準化
作業プロセスを統一し業務の質を標準化することができます。データ集計など、属人化によりアウトプットにバラつきが出てしまいがちな業務も、基幹システムを導入することで品質を一定に保つことができます。
③経営情報の可視化・意思決定のスピードアップ
全社の売上や債務情報、在庫状況など、経営情報を可視化できます。経営状況をリアルタイムに把握できるようになるので、迅速な意思決定ができようになるでしょう。
まとめ
主要業務の効率化・標準化を図る上で、基幹システムは欠かせません。最適な基幹システムを導入するポイントは、自社のビジョンやあるべき姿、業務環境に向き合うこと。本記事を参考に、ぜひスムーズな基幹システムの導入を実現してください。
参考
※1独立行政法人情報処理推進機構(IPA)・技術本部 ソフトウェア高信頼化センター(SEC),『共通フレーム2013~経営者、業務部門とともに取組む「使える」システムの実現~』