ERPパッケージとは?導入のメリットやスクラッチ開発との違いを解説

2021/1/29公開
規模や業種に関わらず、様々な企業に導入されているERPパッケージ。「ERPってそもそもどんなもの?」「パッケージ以外のERPもあるの?」といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。今回の記事ではERPパッケージに関する様々な基礎知識について解説します。
目次
ERPパッケージとは
「ERP」は、Enterprise Resource Planning(企業資源計画)の略。生産管理を効率化するためのマネジメント手法であるMRP(Material Resource Planning:資材所要計画)から派生した言葉です。「ERP」の概念や手法を具現化したものがいわゆるITシステムのERPです。
では、ERPパッケージとは何かというと、企業の財務・会計・人事・生産などの各種システムを統合したソフトウェアのことです。ERPパッケージを導入することで情報が一元化されるため、企業内の「ヒト」「モノ」「カネ」の情報が相互に更新され、常に最新の情報をリアルタイムで確認・管理できます。
ここからは、さらに詳しくERPについて解説していきます。「とりあえずERPについて概要を理解したい」「ERPを図解でまとめて知りたい」という方は、こちらから【図解】8ページでざっくりわかるERPの選び方をダウンロードください!
ERPパッケージの機能
ERPパッケージには具体的にどのような機能があるのでしょうか。ベンダーによって提供される機能は様々ですが、基本的には、
- 人事・給与管理
- 販売管理
- 生産管理
- 購買管理
- 会計管理
- 営業管理
などの機能を搭載しています。
「基本的には」と述べたのは、ERPパッケージと一言で言っても、その種類は多岐にわたり、全ての機能が共通しているわけではないためです。
ERPは各製品によって業種や業態、企業規模など、特化している分野が異なるため、財務会計のみ別のシステムとの連携で業務を行う仕様の製品もあれば、人事・給与、会計、SCMなど基幹業務に関わる機能はすべて包括しているベンダーもあります。
株式会社オロが提供するクラウドERP「ZAC」は前者で、下記の機能一覧のように財務会計や給与計算は外部システムとの連携で実現します。
ERPパッケージの目的
ERPパッケージは企業規模を問わず、多くの企業に導入されています。ERPパッケージを導入する企業は、一体どのような目的でシステムを導入し、活用しているのでしょうか。
情報の一元管理
ERPパッケージ導入前の多くの企業が課題として挙げるのは、「情報の一元管理ができていないこと」です。一つひとつの業務システムが分断されていることで、情報がリアルタイムに更新されず、様々な問題が起こります。
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独立した基幹システムがもたらす問題
それぞれ独立した基幹システムを導入している企業が経営分析を行う場合、「各システムから必要な情報を集め、分析しやすいデータをつくる」必要があります。このデータ収集の段階でつまづいてしまったり、やっと分析データをつくったものの情報が古く、経営層の意思決定に活用できないなどの問題が発生してしまいます。
さらに「勤怠は勤怠管理システムに入力し、工数は工数管理にシステムに入力しなければならない」といった入力の負荷や「残業時間が増えていることは分かるが、勤怠管理システムだけ見ていても原因を特定できない」といったマネジメントの面で課題が見えてくるのも事実です。
ERPパッケージの導入はこれらの問題を解決するとともに、情報の一元管理を実現します。情報の一元管理によってデータ収集・分析を効率化し、生産性向上を期待できる点はERP導入で得られる大きなメリットです。
ERPパッケージ導入 5つのメリット
ERPパッケージ導入による「情報の一元管理の実現」によって企業が享受できるメリットは、主に5つあります。
①業務の効率化・迅速化による生産性向上
業務の非効率を排除することにより業務が効率化・迅速化され、生産性が向上します。先述のように分断されたシステム環境下では、業務システムへのデータ二重入力や手間の多い確認作業、部門間でのコミュニケーションなど、多くの非効率が発生します。ERPパッケージの導入は、こうした非効率の解消につながるのです。
②コスト削減
業務システムが分断している環境下は保守運用に手間やコストがかかってしまいます。ERPパッケージでは保守運用は一ヵ所で管理でき、コスト削減を実現することが可能です。それにより余った人員のリソースを別の事業に再配分することができるのです。
③経営意思決定の精度向上
経営者へスムーズに判断材料を提供できるようになるため、意思決定の精度が向上します。また、ERPパッケージを導入することで、今まで把握が難しかったリアルタイムな経営状況の見える化も可能になります。これにより、スピーディーで正確な意思決定ができるようになるでしょう。
④顧客サービスの品質向上
営業実績や顧客管理などの情報を可視化することができるので、顧客ニーズをより的確に汲み取ることが可能になります。その結果、顧客サービスの品質向上にもつながるでしょう。また、顧客から緊急な発注があった際、他部署に問い合わせることなく顧客情報を確認することもでき、迅速な顧客対応にもつながります。
⑤内部統制の強化
ERPパッケージには申請・承認等のワークフローが組み込まれていたり、アクセス権限の管理が可能なため、自然に内部統制の強化が実現できます。またデータの整合性が取れるようになり、J-SOX法に対応した環境を整えることが可能です。
ERPの種類
ERPは「どのように作るのか」によって種類が異なり、
- スクラッチ開発
- パッケージ
- パッケージ+カスタマイズ
の3つの種類があります。それぞれ見ていきましょう。
①スクラッチ開発
スクラッチは対象業務に合わせて独自システムをゼロから構築して開発する方法です。自社業務に最適なシステムをオーダーメイドで構築して運用できるので、独自性の高い業務にも柔軟に対応できます。
また、ライセンス料を抑えることができるので、機能拡張やシステム改修を行なったとしてもランニングコストの面ではパッケージのERPより安価になるケースが多く見られます。
ただし、デメリットとして初期費用が高額になり、開発期間が長期化することが挙げられます。開発するシステムによっては開発期間が数年、費用が数千万円になるケースもあります。
その理由はゼロからシステムをつくり上げていくことになるからです。どのような業務に対し、どのようなシステムが必要か要件定義した上で設計・開発するため、発注先であるERPベンダーだけでなく、発注する企業側にもそれなりの工数がかかってしまうことは避けられません。
②ERPパッケージ
ERPパッケージは標準的な業務に合わせて製品化されたシステムを導入するため、スクラッチ開発に比べ、導入時の初期費用や工数を抑えることができます。手順もある程度マニュアル化されているので、比較的スムーズに導入することができるでしょう。
一方で、会社ごとの業務に合わせてシステムをカスタマイズするわけではないので、不要な機能を含む場合があるデメリットもあります。また従業員が多い場合、ライセンス料などのランニングコストがかさむリスクもあるでしょう。
パッケージ | スクラッチ | |
---|---|---|
ライセンス料 | 必要 | 不要 |
初期開発コスト | 不要 | 高額 |
保守費用 | 必要 | 必要 |
③パッケージをカスタマイズしたERP
パッケージのカスタマイズはスクラッチ開発とパッケージの中間的な位置付けです。既成のパッケージを活かしつつ、自社業務に合わせた機能追加や部分的なシステム改修を行います。
カスタマイズが可能なERPはパッケージと比較すると導入期間やコストが増加する場合が多いですが、パッケージ外の機能追加を行うことで、独自の商習慣にも部分的に対応できるというメリットがあります。ただしスクラッチ開発ほど柔軟にユーザーの要求に応えることは難しいと言えるでしょう。
スクラッチとパッケージの良さを持ち合わせたハイブリッドなERP
本ブログを運営する株式会社オロでは、パラメータ設計を採用することで、カスタマイズを極力抑えながら業務に最適化されたERP「ZAC」を提供しています。
近年ではコストメリットや技術の発達、対応業務の拡大、業務の標準化などの理由から、パッケージやパッケージ+軽微なカスタマイズでERPを導入する企業が増えています。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
スクラッチ |
|
|
パッケージ |
|
|
パッケージ+カスタマイズ |
|
|
まとめ
企業が直面している多くの課題に対し、ERPは業務改善だけでなく企業経営に関わる業務など幅広い解決策を提供することができます。そのため、ERPを導入する際は、現状の課題を整理した上で導入目的を設定することが大切です。
ERPの種類「スクラッチ開発」「パッケージ」「パッケージ+カスタマイズ」それぞれの特徴をふまえ、自社に適したERPを検討しましょう。