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IFRSに関する「日本の現状」と「基準の最新動向」

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2011/10/27公開

 「IFRS強制適用の延期」など、日本における国際会計基準導入に関する動向に注目が集まっています。本コラムでは、監査法人A&AパートナーズのIFRSアドバイザリー寺田聡司氏より、IFRS日本導入に向けた最新ニュースとその解説、また、IFRSにより個別の会計処理がどのように変わるのかについて、具体的なポイントを中心に解説をしていきます。
 第1回目となる今回のコラムでは、『IFRSに関する「日本の現状」と「基準の最新動向」』と題し、「IFRSの日本導入スケジュール」と「強制適用範囲」、「IFRS10~13号の公表」、「主要改訂プロジェクトのスケジュールの見直し」の4点について解説いたします。

目次

    日本の現状

     まずは、IFRS導入に関する日本の現状について見てみましょう。

     もう既にご存知だとは思いますが、今年6月に我が国の金融担当大臣が会見にて、2012年にIFRS強制適用の意思決定する際には、

    • 少なくとも、2015年3月期からのIFRS強制適用はない
    • 強制適用にあたっては、『5~7年程度』の十分な準備期間を設ける

    旨の発言を行いました。

     新聞等では「スケジュールの延期」が大々的に報道されていますが、むしろ、この会見の重要ポイントは別のところにある、と私は考えています。
     それは、「強制適用の範囲」についてです。
    具体的には、当該会見における「強制適用を全ての上場企業に適用するか否か」に関しても慎重に検討していく旨の発言です。

     個人的には、上記会見内容を知った時には、さほど驚きませんでした。
    もともと、そのような見解を至る所で聞いておりましたし、そもそも、IFRSの全面改訂作業とほぼ同時進行で、IFRS導入作業(我々から見れば、アドバイザリー業務)を進めることに若干の違和感があったのも事実です。その意味では、「IFRSの強制適用のために十分な準備期間を設ける」という方向性には、個人的には賛成の立場です。

     「強制適用の範囲」については、実務レベルを超えた、もっと広い観点から議論すべきだと思っています。この会見後、6月30日と8月25日に、企業会計審議会が開催されています。企業会計審議会では、当然「強制適用の範囲」についても様々な議論がなされているようですが、やはり「積極派」と「消極派」の双方の意見があり、なかなか結論を出すのは難しい状況のようです。もちろん、論点は単純な2極論ではありませんが、今後も色々な意見を集約し、より深い議論が進んでいくものと思われます。

     実際のIFRS導入スケジュールについては、私の経験では、

    1. 実際に着手済みの会社:そのまま継続
    2. これから着手をしようとしていた会社:しばらく様子見

    というケースが多いようです。
    実際に着手している会社にとってみれば、もともとタイト気味のスケジュールが適正水準に戻ったという見方も出来ます。また、これから着手をしようとしていた会社にとってみれば、正式な意思決定を待ってから動き出そう、ということだと思います。

    基準の最新動向

     次に、基準の最新動向について見ていきます。

     日本のIFRS導入に係る動向と同様に、IFRS自体も色々な動きが出てきています。
    最近の動向の大きなトピックについては、主として以下の2つがあります。

    1. IFRS10~13号の公表
    2. 主要改訂プロジェクトのスケジュールの見直し

    1、2それぞれについて、下記で詳しく見ていきましょう。

    1.IFRS10~13号の公表

     具体的には、2011年5月に

    • IFRS10号 「連結財務諸表」 (Consolidated financial statements)
    • IFRS11号 「ジョイント・アレンジメント」 (Joint arrangements)
    • IFRS12号 「他事業体への持分の開示」 (Disclosure of interests in other entities)
    • IFRS13号 「公正価値測定」 (Fair value measurement)

    の4本の基準が公表されました。
    それまでは、IFRS9号「金融商品」が、新設された基準では最新のものだったのですが、ここにきて一気に4本の基準が新設されたことになります。

     IFRS10~12号は、その内容については既存の関連基準から大きな意味での変更はありません(もちろん、変更点は多々ありますが)。
    むしろ、その基準の構成体系やより詳細なガイドラインに重きを置かれた内容になっています。
     IFRS13号についても、内容はもちろん重要ですが、今までの考え方を踏襲した内容となっています。

    2.主要改訂プロジェクトのスケジュールの見直し

     端的に言えば、

    • 収益認識
    • リース
    • 金融商品
    • 保険会計

    に関する改訂スケジュールに関する部分です。
    IASBでは、この4つの改訂プロジェクトを優先的に進める主要改訂プロジェクトとして位置付けています。

     年内に新基準公表を予定していましたが、来年以降に持ち越しになりました。やはり、それだけ論点がまとめきれていない、ということでしょう。特に、リース資産のオンバランスに関する論点は、昨年公表された公開草案からは、大分トーンダウンすることになるようです。

    まとめ

     IFRSの主要改訂プロジェクトは、スケジュールが遅れながらも着々と進められています。とは言え、今後も新しい論点が入れ替わり持ち上がってくると思われるため、依然として動向を留意していく必要性には変わりはありません。
     日本のIFRS導入についても、なるべく早い段階で、企業会計審議会が一定の方向性を示そうとしていますが、そこまで議論が収束していくのはなかなか困難なように思われます。

     いずれにしても、国内・国外ともにIFRSの動向については、定期的に情報をキャッチアップしていくことが必要>だと思われます。

    INDEX : IFRSアドバイザリーが語る、IFRS導入ポイントと最新ニュース解説

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    寺田 聡司

    この記事の筆者

    監査法人A&Aパートナーズ アドバイザリーサービス部長 パートナー公認会計士

    寺田 聡司

    1971年、神奈川県生まれ。東京大学経済学部を卒業後、大手監査法人に入所。国内上場企業の法定監査業務や、外資系日本法人のリファードワーク等に従事。またUSGAAPアドバイザリー業務、内部統制構築支援業務、株式上場支援業務、財務デューデリジェンス業務、金融機関を中心とした業務監査業務等にも携わる。現在では、監査法人A&Aパートナーズにおいて、法定監査業務に従事するとともにIFRS対応プロジェクトチームリーダーを兼任。公認内部監査人。