データドリブン経営とは?基礎知識から成功事例までわかりやすく紹介

2022/5/27公開
データを活用して経営判断を行う「データドリブン経営」という手法を聞いたことがある方も多いと思います。しかし、実践している企業はそう多くないのが実情です。
一体何がデータドリブン経営を阻んでいるのでしょうか。そもそもデータドリブン経営とはどのような手法なのでしょうか。本記事では、データドリブン経営の基礎知識や具体的な流れとともに、導入に成功した企業の事例をご紹介します。
目次
データドリブン経営とは
データドリブン経営とは、収集・蓄積したさまざまなデータを分析し、その結果に基づいて経営戦略や企業方針を定める経営方法のことです。もともと、企画立案や業務改善などにさまざまなデータを利用する「データドリブン(Data Driven)」という手法がありました。それを経営に応用したものが「データドリブン経営」なのです。
データドリブン経営で扱うデータは、売上データや市場データ、顧客データなど多岐に渡ります。経営陣の経験や勘といった、再現性が低くて主観的な判断は行いません。データという客観的な情報でのみ意思決定を行うことが特徴です。ここからは、さらに詳しくデードリブン経営やそのマネジメントについて解説していきます。データドリブン経営と相性のいいマネジメント手法について知りたいという方は、こちらから8ページでわかるナレッジワーカー・マネジメントをダウンロードなさってください。
なぜ注目されるようになった?
注目されるようになった理由のひとつに、価値観の多様化・複雑化があります。顧客のニーズを満たした製品・サービスを作ることが難しくなったことで、主観ではなく客観的なデータに基づいた判断が求められるようになったのです。
もうひとつの理由に、ITの進歩があります。昨今は誰もが簡単にITを利用できる時代であり、国としてもIT化を推進している状況です。そのため、さまざまなデータ収集の技術やAIを使った分析などが広まりました。
さらに、経験や勘のみに頼った再現性の低い経営から脱却し、成長スピードを加速させたいという企業側のニーズが増えてきたことも注目の要因となっています。
データドリブン経営とDXのつながり
データドリブン経営には、ITツールを利用したデータ収集やAIによる分析が不可欠です。そのためデータドリブン経営を導入する場合は、まず社内のデータ収集・分析の基盤を整えることになります。たとえば、これまで紙で保存していた情報も、すべてデジタルデータとして扱わなければなりません。IoTを利用して、常にデータを収集できる状態にしておくことも大切です。
つまりデータドリブン経営に取り組むことが、結果的に社内のDXを推進することになるのです。
データドリブン経営のメリット
データドリブン経営を導入することで、DX推進以外にも以下のようなメリットが得られます。
- 顧客ニーズを多角的に捉えられる
- 売上や利益率を上げられる
- 客観的な経営判断ができる
それぞれのメリットについて、具体的に解説していきます。
①顧客ニーズを多角的に捉えられる
顧客が何を求めているのか、人の感覚だけでは正確に捉えられないことが多いものです。また、主観が入ってしまい、偏ったデータをもとに誤った結果を導きかねません。しかし、売上データや市場データなど幅広いデータからニーズを分析すれば、精度の高い需要予測や傾向が導きだせます。
②売上や利益率を上げられる
上述のように顧客ニーズを捉えられることで、魅力的な商品・サービスを開発でき、売上を上げられる可能性があります。後述する事例のように、数字に基づいた合理的な営業提案ができるようになることも効果のひとつです。また、従業員の利益に対する意識が高まって利益率の高い案件を受注できる体制が整ったりすることも見込めるでしょう。
またデータには信頼性があるため、判断の説得力が増して意思決定スピードを上げられます。その結果、業務の生産性も上がり、収益改善が見込めます。
③客観的な経営判断ができる
主観を除外し、実際に収集されたデータでのみ判断を行うため、経営判断の客観性を担保できる点もメリットです。いかなる判断も根拠となるデータを提示できるため、経営の透明性を確保できます。主観による誤った判断を防げる可能性もあります。
データドリブン経営の進め方
ここでは、データドリブン経営を実際に取り入れた場合の業務の進め方を解説します。細かい手順は企業によりますが、大まかな流れは変わらないのでポイントを押さえておきましょう。
①必要なデータの定義
最初に行うのは、「経営判断にどのようなデータが必要なのか」「どのようなデータが影響を及ぼすのか」を精査して、必要なデータを定義することです。あらかじめ必要なデータを定義しておくことで、効率的にデータ収集を行うことができます。また、経営判断に必要なデータが取れていなかったというような事態を防ぐこともできます。
②データの収集・蓄積
必要なデータの定義ができたら、次はITツールを活用してデータを収集します。データ収集には時間も手間もかかるため、目的に沿ったデータの収集を行うことが重要です。今後の活用を考え、すでに社内にあるデータも一元管理しておくことがおすすめです。
③データ分析・意思決定
データが収集できたら、月別・人別・案件別などの複数の軸で分析していきます。データや目的に合った分析方法を選ぶこともポイントです。たとえば過去のデータを集計して解析するならBI(ビジネスインテリジェンス)を、膨大なデータを処理して機械的に意思決定を行いたいならAI(人工知能)を使うことになります。
分析するデータに恣意性が出ないよう、幅広い観点から分析することも大切です。データ収集から分析まで自動でできるとさらに生産性が上がります。分析の専門家(データサイエンティスト)が社内にいない場合は、社外に依頼することも視野に入れましょう。分析した結果をもとに、自社の強みや競合の状況などとあわせて最終的な意思決定を行います。
データドリブン経営を阻むもの
データドリブン経営にはさまざまなメリットがあります。しかし政府のDXレポート(*1)にもあるように、デジタル技術活用ビジョンと戦略の不足が、日本におけるデータドリブン経営の実践を阻んでいるのも事実です。
約8割の企業が老朽システムを抱えており、デジタル戦略を見出せない大きな要因となっています。他にも、レガシーシステムとの連携が取れず、分析に必要なデータを収集しにくいことも原因のひとつに挙げられます。
レガシーシステムをそのまま利用し続けることは、DX推進を阻害し、さらにはデータドリブン経営の足かせにもなりかねません。
データドリブン経営において注意すべきこと
データドリブン経営を実施するには、正確なデータの収集と、適切なデータ分析が重要です。そのためには、データの収集方法や分析ツールを適切に選定しなければなりません。専門家に相談したり人材を育成したりして、データを正しく扱える人材を社内に確保する必要もあります。
また、社内にデータドリブンな意識を根付かせることも大切です。これまで勘や経験で意思決定を行ってきた場合、その慣習がなかなか抜けません。データドリブンな仕事を何度も繰り返して、少しずつ従業員の意識に定着させていくことになります。経営陣や上層部だけでなく、従業員もデータドリブン意識を常に持ち、過去の経験だけで判断しないよう注意しなければなりません。
データドリブン経営の成功事例
データドリブン経営の導入が進まない日本ですが、導入に成功した企業もあります。ここでは、データドリブン経営の成功事例を紹介します。
INSIGHT LAB株式会社様
INSIGHT LAB株式会社様はかつて、さまざまなツールを使って業務管理を行っていたと語っています。各部署に業務管理を任せたことで、業務のスピード感は生まれたものの、全社としてのデータ集約が行いにくい状況になっていたのです。会社が成長していくにつれて、案件別の工数管理がうまくいかず、原価計算のスピードと精度に課題がありました。
また複数のツールを併用していることによって、入力される数字の正確さが担保できなかったため、月次決算を行えないという課題も抱えていました。
そこで、月次決算を行うこととあわせて業務効率化を推進したいと考え、本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP「ZAC」を導入。分断されていたデータをERPに集約し、正確な案件別工数管理と月次決算を実現でき、結果としてデータドリブンな経営管理に繋がったと語っています。さらに、データドリブン経営により、利益率の高い案件を多く受注できるようになったといいます。
ERPを活用し、データドリブン経営を実現
INSIGHT LAB株式会社様の事例のように、データドリブン経営にはまず正確なデータの収集が不可欠です。たとえば社内のプロジェクトデータを一元管理してリアルタイムに見える化したり、見える化したデータを経営者やマネージャーが見たいタイミングで見たい指標を用いて分析したりすることで、タイムリーなデータドリブン経営が可能になります。
「ZAC」なら、リアルタイムなプロジェクト損益の把握・管理が可能です。また、他部署で入力したデータを共有・連携できるため、データが重複したり分散したりすることがありません。データドリブン経営を実現・継続するために、データを蓄えられるERPを活用してみてはいかがでしょうか。
参考
*1:DX レポート