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【2024年より義務化】電子帳簿保存法の改正ポイントを解説

【2024年より義務化】電子帳簿保存法の改正ポイントを解説
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2020/12/25公開2024/1/09更新

1998年7月に制定された電子帳簿保存法は、2020年の改正を経て、紙で受け取った書類の電子化が実施しやすくなりました。さらに、2024年1月以降は電子取引に関するデータの保存が義務化されるため、すべての企業が改正点を押さえておかなければなりません。

電子帳簿保存法によってペーパーレス化が進むなど、企業にとってはさまざまなメリットがあると考えられます。企業の担当者は、具体的な改正内容を知っておくと、スムーズに適用できるでしょう。この記事では、改正されたポイントを押さえつつ、電子帳簿保存法の概要を解説します。

目次

    電子帳簿保存法とは?

    電子帳簿保存法とは、国税帳簿書類を紙ではなく電子データで保存できるよう定めた法律です。電子データでの書類保存を容認することで、原本の紙書類を破棄できるなど、帳簿管理の負担軽減やペーパーレス推進を目的として制定されました。この法律は1998年に制定されて以降、複数回にわたって改正されてきました。制定当初は、はじめから一貫して電子作成されたものだけが保存の対象でしたが、2005年にe-文書法が制定されたことで、紙の書類をスキャンして保存することも可能になりました。

    e-文書法との違い

    e-文書法は、民間の会社運営において紙での保存が義務付けられている文書全般の電子化を認める法律です。ただし上述のように請求書や領収書、損益計算書といった国税帳簿書類の電子化においては、e-文書法よりも要件が厳しい電子帳簿保存法が適用されるため扱いには注意が必要です。

    電子帳簿保存法とe-文書法の主な違い
    電子帳簿保存法e-文書法
    所管 国税庁 内閣府
    対象となる文書 国税(法人税など)に関わる帳簿・書類 国税に関係しない文書・帳簿で、会社法や証券取引法などで保管が義務付けられているもの
    法的な申請および承認 2022年1月以降、不要に 不要

    電子帳簿保存法は、2005年時点では3万円未満の契約書・領収書のみが保存対象であったり、電子署名が必要であったりと、スキャナ保存に関する要件は厳しいものでした。その後、簡便性を確保するために、要件を緩和する改正が行われていきます。電子帳簿保存法が適用されるものには、国税関係の帳簿や書類のほか、電子取引データといったものがあります。どのような帳簿や書類が対象なのか具体的に見ていきます。

    電子帳簿保存法の対象となる書類

    電子帳簿保存法に基づいてデータ保存が可能な書類は主に以下の通りです。

    分類主な文書区分保存期限
    帳簿 現金出納帳、仕訳帳、経費帳、売掛帳、買掛帳、総勘定元帳、 固定資産台帳 電子帳簿等保存 7年
    決算書 貸借対照表、損益計算書
    紙で発行した証憑の控え 見積書、契約書、納品書、請求書など
    紙で受領した証憑 スキャナ保存
    電子取引データ 見積書、契約書、納品書、請求書など
    ※取引関係書類のうち、電子的に授受したもの
    電子取引データ保存

    上記のうち、初めから電子データで管理している場合は、電子保存をする必要があります。

    なお、帳簿と決算書はスキャナ保存ができないので注意しましょう。2005年以降、電子帳簿保存法でも証憑や書類に限ってスキャナ保存が認められるようになりました。しかし、スキャナで読み取って入力するまでの期間は67日間(2ヶ月とおおむね7営業日)と定められているので、まとめて一度に処理をするといったことはできません。

    改正電帳法とは?何が変わったのか

    では、電子帳簿保存法は2022年1月の改正によってどのような変更があったのでしょうか。具体的な4点の改正ポイントについて解説します。

    ①【2024年】電子取引の「データ保存」が義務化

    ①はすべての企業に影響を及ぼす改正となります。受領・発行どちらも対象です。データでもらった注文書や発注書、自社が電子データにて発行している場合の控えも含め、紙の保存は一切不可となり、すべて電子データのまま保存しなければなりません。2022年1月1日から2023年12月31日までは猶予期間となり、紙での管理も認められていましたが、2024年1月1日以降は、すべての企業が電子取引の「データ保存」に対応しなければならなくなりました。

    国税庁の電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】によると、電子取引は以下のような取引が該当します。

    • 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
    • インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
    • 領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
    • 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
    • クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
    • 特定の取引に係るEDIシステムを利用
    • ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
    • 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領

    出典:「 -電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】 国税庁

    これらの電子取引において2024年1月1日以降は、書面出力し、書面保存することが認められなくなります。ただし、電子データと紙の両方で入手した場合には紙が原本となるため、紙を廃棄してはいけません。データ保存方法については、フォルダやドライブにただ保存しておけば良いわけではなく、下記の国税庁が定めた電子取引の保存要件(*1)を満たし、保存しなければなりません。

    電子取引の保存要件
    「真実性の要件」①~④のいずれかを満たすこと ①タイムスタンプを押した後、取引情報の授受を行うこと。
    ②取引情報の授受後、2ヶ月以内にタイムスタンプを押すとともに保存を行う者または監督者に関する情報を確認できるようにしておくこと。
    ③記録事項の訂正・削除を行ったことが確認できるシステムを使用する。または記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受および保存を行うこと。
    ④正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規定を定め、その規定に沿った運用を行うこと。※国税庁が事務処理規定のサンプルを公開しています。
    「可視性の要件」をすべて満たすこと ・保存場所に電子計算機(パソコン等)、プログラム、ディスプレイ、プリンタおよびこれらの操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式および明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと。
    ・電子計算処理システムの概要書を備え付けること。
    ・検索性を確保すること。※一部、不要な場合もあるため、詳細は国税庁が定めた電子取引の保存要件(*1)をご覧ください。

    電子保存が義務になるのは「電子取引のデータ」に限ります。なので電子取引以外となる「電子で作成した帳簿を保存する」「紙で発行・受領した書類をスキャナ保存する」といったケースには異なる保存要件を満たさなければなりません。現状は「電子取引の保存要件」「電子帳簿の保存要件」「スキャナ保存の要件」という3つの保存要件があります。

    新たな猶予期間の設置

    電子取引のデータの電子保存が義務化になりましたが、令和5年度税制改正大綱で新たな猶予措置が設定されています。

    猶予措置では、以下の2つの条件を満たしていれば、改ざん防⽌や検索機能など保存時に満たすべき要件に沿った対応は不要となり、電子取引データを単に保存しておくことが可能になりました。

    • 所轄税務署長が「相当の理由がある」と認める場合
    • 電子取引データの「ダウンロードの求め」及びその電子取引データをプリントアウトした書面の提示・提出の求めにそれぞれ応じることができるようにしている場合

    ②電子保存における承認制度の廃止

    以前は企業が電子帳簿保存法の適用を受けるには、電子データ保存、スキャナ保存ともに税務署への事前申請が必須でした。しかし2022年1月1日の改正により、事前の申請が不要になりました。電子保存において申請そのものは不要になりました。税務調査にて帳簿や書類のダウンロード提出が求められる場合があるため、注意が必要です。そのほか、すでに電子保存やスキャナ保存を行っている企業は、改正後の要件に従って電子帳簿保存を⾏う場合には「承認の取りやめの届出書の提出」といった一定の⼿続きがあります。

    ③罰則規定の強化

    不正行為に対してもより厳しい罰則規定が設けられました。以前は重加算税の適用のみでしたが、データ改ざん・隠ぺい等の不正がなされた場合には、重加算税に本税の10%の金額が上乗せされて課税されることになります。

    ④スキャナ保存における要件の緩和

    以前のスキャナ保存の要件は、スキャナ保存を行う際に受領者が自署し、3日または7日以内に入力し、タイムスタンプの付与を行わなければなりませんでした。(タイムスタンプとは、電子データの真実性を確保するための電子的な時刻証明書です。のちほど「電子帳簿保存法において重要な「タイムスタンプ」とは?」にて詳細を解説)。改正後は、上述した事前承認制度、不正防止のための社内規定に関する要件「適正事務処理要件」が廃止になるとともに運用時の要件も緩和されます。

    2022年1月1日以降は

    • システム等で入力期限内に入力されていることが確認できる場合は、タイムスタンプが不要
    • 受領者が自分でスキャナ保存を行う時の自署が不要

    となりました。検索要件も緩和され、より活用しやすくなったと言えるでしょう。

    電子帳簿保存法を適用するために満たしておくべき要件

    電子帳簿保存法の適用を受けるためには電子データとスキャナ保存の場合、それぞれどのような要件があるのか解説します。表の太字部分は2022年1月の改正点になります。

    はじめから電子作成した帳簿、電子取引以外の書類の保存要件

    ここからは、はじめから電子作成した帳簿など「電子取引以外の電子帳簿の保存要件」について、解説します。帳簿は2022年1月より、「優良な電子帳簿」と「その他の電子帳簿」に分けられます。優良な電子帳簿の要件は従来通り、税務署への事前申請が必要で満たさなければならない要件も多くなります。代わりに過少申告加算税を5%減免されるというメリットがあります。詳細は国税庁が定めた優良な電子帳簿の要件(*1)をご覧ください。

    今回は申請が不要な「その他の電子帳簿」と「電子取引以外の書類」の要件に絞って紹介します。以前は5つあった要件から下記の3つに緩和されました。

    ①関係書類等の備付け システムや手続きに関するマニュアルを備え付けておくこと。
    ②見読可能性の確保 保存したデータを速やかかつ明瞭にディスプレイや書類に出力できること。
    ③ダウンロード提出 税務調査でダウンロードの求め(税務職員の求めた形式や方法で保存データをダウンロードすることが可能であるかの証明)に応じられること。

    書類をスキャナ保存する場合の要件

    紙の書類をスキャナ保存する場合は、以下の要件を満たしておく必要があります。

    ①入力期間の制限 67日(2ヶ月とおおむね7営業日)以内に速やかに入力を行うこと。
    ②真実性の確保 タイムスタンプを付与すること。※入力期間内に入力を行ったことが確認でき、訂正や削除履歴の残るシステム上に保存するときは、タイムスタンプが不要になります。
    ③関係書類の備付け 保存するシステムや手続きに関する書類を備え付けておくこと。
    ④相互関連性の確保 記録内容と帳簿との関連性が分かるように保存すること。
    ⑤見読可能性の確保 保存したデータを速やかにディスプレイや書類に出力できること。
    ⑥検索機能 取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目の検索ができること。範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能があること。※税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じられる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要になります。

    電子帳簿保存法において重要なタイムスタンプとは?

    電子帳簿保存法において重要なタイムスタンプとは、電子データの真実性を確保するための電子的な時刻証明書のことです。ある時刻にそのデータが存在していたことと、データの改ざんが行われていないことを担保できることから、真実性の確保に重要な要件となっています。

    タイムスタンプは、データを元にハッシュ値(規則性を持って作られた、同じデータであることを証明するための数値)を作成します。そのため、もし現在のハッシュ値とタイムスタンプのハッシュ値が異なる場合は、データが改ざんされていると判断できるのです。

    タイムスタンプを発行できるのは、時刻認証業務認定事業者(TSA)のみであり、事業者を認定しているのは一般財団法人日本データ通信協会となっています。電子帳簿保存法に基づいてデータ保存する場合には、TSAと契約するかTSAと契約した会計システムの利用が必須となります。

    電子帳簿保存法の活用でペーパーレス化を推進

    義務化される電子取引以外においても電子帳簿保存法を導入することで、ペーパーレス化の推進が期待できます。ペーパーレス化が実現できれば、紙の書類を保存するコストや消失リスクを低減でき、テレワークも推進できるでしょう。

    電子化が進む現在の社会に対応して、電子帳簿保存法も適宜改正されていくので、導入する際には改正点を押さえておくことが大切です。

    電子帳簿保存法に基づいて帳簿や書類を保存する場合は、一定の要件を満たさなければなりません。システムを導入し電子取引のデータを保存したり、スキャナ保存を行いたいと考えている場合は、要件を満たしているかどうかを判定・認証する電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証制度(*2)の認証を受けたシステムを利用すると安心です。市販のシステムがすべて電子帳簿保存法に対応しているというわけではないので、対応しているかどうか確認した上で、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

    【参考】

    *1:国税庁、電子帳簿保存法が改正されました。電子取引・電子帳簿の保存要件
    *2:JIIMA 公式サイト 、 電帳法スキャナ保存ソフト法的要件認証制度

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    矢野 由起

    この記事の筆者

    ライター

    矢野 由起

    製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

    ZAC BLOG編集部

    この記事の監修者

    ZAC BLOG編集部

    クラウドERP開発・導入の経験から蓄積された知見に基づき、業務効率化・管理会計・原価計算・ERPに関するテーマを中心に、生産性向上に役立つ情報をお届けします。