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受注損失引当金とは?基礎知識と4つの計上要件を解説

受注損失引当金とは?基礎知識と4つの計上要件を解説
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2026/8/28公開

システム開発業やソフトウェア業などで耳にすることの多い「受注損失引当金」は、経理や会計の担当者であれば理解しておきたい用語のひとつです。決算書を作成する際はもちろん必要ですが、日頃の案件管理でも意識しておくことが重要となります。

本記事では、どのような費用が受注損失引当金にあたるのか、また会計基準ごとにどのような要件が必要なのかについて、基本的な知識をお伝えします。取り崩されるタイミングについても解説するため、経理・会計担当者は参考にしてください。

目次

    受注損失引当金とは

    受注損失引当金とは、契約の遂行によって将来発生すると見込まれる損失を、あらかじめ見積もって計上する引当金のことです。そもそも引当金は、「将来発生するであろう損失に備えておく見積もり金額」を指し、貸借対照表の負債の部に記載します。 受注損失引当金は、受注したプロジェクトについて、決算日(四半期決算を含む)ごとに収支を見直し、「この契約は最終的に赤字になる可能性が高い」と判断された場合、その赤字見込み額を決算に反映させるための会計処理です。損失の原因となる事象が過去または現在に発生済みであることが条件となります。

    工事損失引当金との違い

    受注時点や業務遂行中に赤字になる可能性が高いと判断され、その見込み額を計上するという会計処理の考え方は、業界によって名称が異なります。システム開発やソフトウェア業では「受注損失引当金」、建設や製造業では「工事損失引当金」と呼ばれることが一般的です。 ただし、基本的な意をや計算の仕方はどちらも同じです。名称の違いは業界習慣の違いであり、どちらも契約の赤字兆候を早めに把握し、適切に会計処理することを目的としています。

    引当金の4つの計上要件

    受注損失引当金を計上するには、以下の4つの要件を満たす必要があります。

    ①将来、特定費用または損失が発生すること
    ②その費用または損失が発生する可能性が高いこと
    ③その費用または損失が、過去または現在の事象に起因していること
    ④損失の金額を合理的に見積もり可能なこと

    つまり、以下の状態になった時点で、受注損失引当金として計上することになるのです。
    ・将来損失が高い確率で発生すると判明しており、すでにその原因(受注済みなど)が発生している
    ・それが具体的にどれくらい損失となるか計算できる

    具体的には、受注後に材料費や人件費が高騰して原価が上がるなどのケースです。

    受注損失引当金の求め方

    受注損失引当金の金額は、契約を最後まで遂行した場合に見込まれる「赤字部分の金額」をもとに算定します。引当金の4つの計上要件は、日本会計基準による考え方です。決算日までに原価や収益が未計上の場合は、以下の計算式で算出できます。

    ・受注損失引当金=契約履行までにかかる費用の合計-契約で得られる収益の合計

    この式で算出した金額を費用として処理するのが一般的な会計処理方法です。日本会計基準とIFRS(国際財務報告基準)で若干の違いはあるものの、基本的な考え方は同じです。

    受注損失引当金が取り崩される典型的なタイミング

    受注損失引当金は、上述した4つの要件を満たさなくなった場合に取り崩されます。将来の損失が見込まれなくなったタイミング、損失が実現したタイミングで取り崩されることが一般的です。

    ここで、取り崩される具体的なタイミングを4つ紹介します。

    プロジェクトが完了したとき

    プロジェクトが完了すると、見込んでいた損失は実際の原価として確定します。それまで積み立てていた受注損失引当金は、この確定した損失に充当する形で取り崩されます。まだ計上されていない収益や費用があれば、ここで同時に計上されます。

    赤字見込みが解消されたとき

    受注損失引当金は、将来、高い確率で赤字になると見込まれた場合に計上されるものです。つまり、材料費の低下や仕様変更などで赤字見込みが解消された場合は、要件を満たさなくなるため、受注損失引当金は取り崩されます。

    工事進行基準により赤字がすべて実現したとき

    工事進行基準を採用している場合は、プロジェクトの進行度合いに応じて収益や費用が計上されます。受注損失引当金は、将来発生する損失が見込まれなくなった時点で取り崩されるため、赤字が実現して過去のものになったときが取り崩しのタイミングです。すでに実現している赤字分は引当金として計上する必要はありません。

    黒字見通しに転換した場合はどうなるか

    プロジェクトが何らかの理由で赤字から黒字見通しに転換し、過去に計上した受注損失引当金が不要となった場合は、「受注損失引当金戻入」の会計処理を行います。戻入額は、取り崩しを行った期の収益(または売上原価のマイナス)として計上されるため、その期の利益にプラスの影響を与えます。これは新たに利益が生じたものではなく、過去に前倒しで見積計上していた損失を、状況の好転に応じて取り消すものです。

    受注損失引当金の早期可視化を左右するのは、日々の案件の見え方

    受注損失引当金というと、「決算で処理する会計上の話」と捉えられがちですが、実際には、日々の案件管理の中で赤字の兆しにどれだけ早く気づけるか、という点が重要になります。

    なぜなら受注損失引当金は、赤字になる可能性が高いと判断された時点で計上しなければならないからです。特にシステム開発業のように長期にわたるプロジェクトを抱えている場合、作業工数をタイムリーに把握したうえで、月次単位での原価を確認できる状態をつくっておくことが欠かせません。

    本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』は、売上・原価・工数など、判断に必要な数字を案件単位で一元管理できるシステムです。工数や経費がプロジェクトにひもづいて蓄積されるため、案件ごとの収支をタイムリーに把握しやすくなります。その結果、原価の増加や工数超過といった変化にも早い段階で気づけるようになります。

    タイムリーな工数管理に悩んでいる、将来発生する費用の見通しを立てるのに苦労しているといった場合は、導入を検討してみてください。

    まとめ

    契約時もしくは契約履行時に赤字になる可能性が高まった場合、その損失分を受注損失引当金として計上しなければなりません。また、一定の要件を満たさなくなった場合には、取り崩しの処理も必要です。 そのため、決算書作成時に数字がわかればいいと考えるのではなく、日々の業務を進めるなかで、費用の見積額の上振れや下振れを把握しておくことが重要です。売上や原価などを一元管理できるシステムを導入することで、費用や利益の見通しが立てやすくなるため、活用するのも一つの手だと言えます。

    Q

    受注損失引当金とは

    A
    受注損失引当金とは、契約の遂行によって将来発生すると見込まれる損失を、あらかじめ見積もって計上する引当金のことです。
    詳しくは受注損失引当金とはをご覧ください。
    Q

    引当金の4つの要件とは

    A
    受注損失引当金は、以下の4つの要件を満たした場合に計上します。

    ①将来、特定費用または損失が発生すること
    ②その費用または損失が発生する可能性が高いこと
    ③その費用または損失が、過去または現在の事象に起因していること
    ④損失の金額を合理的に見積もり可能なこと 詳しくは引当金の4つの計上要件をご覧ください。

    プロジェクト別原価計算ガイド

    赤字プロジェクトの原因を分析し、根本的な解決を手助けするガイドブックです。原価計算を行う5つの目的から、広告業やIT業界などに特有のプロジェクト型の原価計算の「鍵」までわかりやすくまとめました。

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    矢野 由起

    この記事の筆者

    ライター

    矢野 由起

    製造業のエンジニアとして9年半勤めた経験を活かし、現在はフリーランスのライターとして活動中。職場の生産性や働き方改革、クラウドツール活用、複業などに興味があり、人事領域に関する記事なども手掛けている。

    横山 美和子

    この記事の監修者

    株式会社オロ コーポレート本部経理チーム

    横山 美和子

    IT業界での経理職を経て2016年に入社。
    単体決算から連結決算、開示まで幅広く経理業務を経験し、海外グループ会社を含む連結システムの導入も主導。その実務経験を活かし、本記事の監修を担当。