原価分析の基本と実践。主な手法と精度の高い管理を実現する方法

2026/7/17公開
製造業のみならず、あらゆる業種で原価を把握することは必須です。正確な原価計算によって現状を把握するだけでなく、その数字を経営に活かせるよう分析することが欠かせません。原価分析は、収集したデータの正確さや分析精度の高さも重要です。
そこで本記事では、なぜ原価分析が重要なのか、また原価分析の基礎と具体的な手法を紹介します。原価を把握しても経営判断に活かせていない場合や、分析まで手が回らず原価改善が進まないといった悩みがあるなら参考にしてください。
目次
原価分析とは

原価分析とは、原価計算によって算出された数字をもとに、「なぜその原価になっているのか」を明らかにし、原価の変動要因を特定することです。現在の原価となる理由は何なのか、何を変えれば原価が変動するのか、仮説を立てたうえで原価の要因を特定します。
また原価分析の目的は、原価計算によって把握したサービス・製品の提供コストと、当初想定していた原価との差異を明らかにし、その要因を把握することにあります。
これにより、「想定より原価が高くなっているのはなぜか」「どの要素が利益を圧迫しているのか」といった点を可視化し、改善につなげることができます。
たとえば、あるタイミングから原価が高騰した場合、「材料費が上昇したのか」「作業効率が低下したのか」といった仮説を立て、データ分析や現場へのヒアリングを通じて真因を特定していきます。
真因が見つかれば、今後の原価改善の手立てを考えられるため、利益が出るよう改善策を打ち出せます。
原価計算との違い
原価計算とは、製品やサービスを提供するためにかかった費用(直接費、間接費)を計算することのみを指します。一方の原価分析は、原価計算によって出た数値をもとに、その内訳や変動要因を捉え、どこに改善の余地があるのかを考える工程です。
原価計算を行ったあとで、原価分析が行えるようになります。原価計算について、詳しくはこちらの記事を参照してください。
原価管理との違い
原価管理と原価分析は、実施する内容に違いがあります。まず原価管理とは、原価を正確に見積もったうえで、実際の原価との差異を把握し、その差分の改善を行うことです。コストマネジメントとも呼ばれます。 一方の原価分析は、正確な原価をもとに見積もりとの差異の要因を探り出し、どこが原因となっているかを明確にする作業です。
原価分析によって原因を明確にできれば、具体的な改善アクションを検討できるようになり、結果として原価管理の精度向上にもつながります。原価管理について、詳しくはこちらの記事を参照してください。
原価分析を行うことで得られる効果
原価分析を行うことで、どのような効果が得られるのでしょうか。
ここからは、主な4つの効果について解説します。
原価差異をもとに改善要素を抽出できる
原価分析では、実際に発生した原価と見積原価や標準原価との差異(原価差異)を把握できます。
どの費目で差異が発生しているのかを確認することで、改善が必要なポイントを特定し、優先順位を付けて対策を検討しやすくなります。
経営分析や意思決定の指標として活用できる
原価分析を行うことで、利益率の変化やコスト構造を把握しやすくなります。
分析結果をもとに、価格設定の見直しやコスト削減の検討、予算・損益計画の見直しなど、経営上の意思決定に役立てることができます。
また、当初想定よりも原価が低いことが分かった場合には、価格戦略の見直しや提供価格の調整によって、競争力の強化につなげるといった判断も可能になります。
現場のコスト意識向上につながる
原価分析によってコストの内訳や課題が可視化されることで、現場でも「どこに改善の余地があるか」を共有しやすくなります。
その結果、一人ひとりがコストを意識しながら業務に取り組みやすくなり、継続的な改善活動にもつながります。
現場のコスト意識向上につながる
原価の細かい数字が明確になり、どこに課題があるのかを客観的に把握できるようになります。現場で働く従業員個々の感覚ではなく、はっきりと数字で何がどの程度増えているかを示せるため、現場の従業員一人ひとりがコストに対する意識を持ちやすくなります。
その結果、日々の業務の中で無駄を見直すといった行動につながり、現場のコスト意識向上につながるはずです。
原価分析の実践ステップ
ここからは、具体的な原価分析の実践ステップを解説します。これから原価分析に取り組みたいなら、このステップで進めてみてください。
①原価計算
原価分析には、正確な原価計算が欠かせません。数値が正しくなければ、その後の分析も適切に行えなくなります。
以下の原価計算の手順は、複数の商品やサービスを扱う企業向けの標準的な手順をまとめたものです。
- 1.費目別原価計算
まずは、製品・サービスにかかるコストを、材料費・労務費・経費に分類したのち、直接費と間接費に分けて算出します。 - 2.部門別原価計算
次に、費目別に分けた原価について、管理責任の所在が明確になるよう部門ごとに振り分けます。材料費・労務費・経費は、それぞれ実際に発生した部門へ配賦し、間接費はあらかじめ定めた配賦基準に基づいて各部門へ割り当てます。 - 3.製品別原価計算
最後は、上記で分類した材料費・労務費・経費を製品ごとに割り当て、製品あたりの原価を算出します。間接費は、配賦基準に応じて各製品に振り分けることがポイントです。ビジネスモデルや扱っている商材、事業規模によって、必要な原価計算のステップが異なる点に注意しましょう。
②原価差異分析
原価計算ができたら、見込み原価と実際の原価を比較し、その差異について分析します。差異が発生している項目を特定し、「どの費用が増減しているのか」「その要因は何か」といった観点で原因を整理していくことが重要です。
ここでは、後述する原価分析手法を用いて分析を行います。使用する手法は、目的や業種の特性に合わせて選びましょう。
③要因の特定
差異分析の結果、なぜ見込み額と実績額にズレが生じたのかを深堀りします。
たとえば、材料費が見込みより増加していた場合、「どの部門のどの製品で増加しているのか」「単価の上昇によるものなのか、使用量の増加によるものなのか」といった観点で要因を切り分けていきます。
要因を分析し、真因が特定できれば、原価を見込み程度まで下げるためにどうすべきかの策を考えることができます。
原価分析の主な手法
原価分析では、原価計算によって算出したコストをもとに、実績と見込みの差異やコスト構造を分析することが重要です。ここでは代表的な2つの手法を紹介します。
差異分析
差異分析は、見込み原価と実際の原価を比較し、その差異について分析する手法です。
まず、計画段階で算出した原価(標準原価)と実際に発生した原価(実際原価)を比較し、どの費目でどれだけ差が出ているかを把握します。
そのうえで、材料費・労務費・経費などの内訳ごとに差異の要因を確認し、改善点を検討します。
構成比率分析(ベンチマーク比較)
構成比率分析は、原価の内訳(材料費・労務費・経費など)の割合を整理し、コスト構造を把握する手法のことを指します。
また、自社の過去データや同業他社の傾向と比較することで、どのコスト項目が高いのか、特徴的な構造になっているのかを把握できます。
これにより、改善が必要な領域や見直しの優先度を判断しやすくなります。
活動基準原価計算
活動基準原価計算は、Activity-Based Costing の頭文字をとったもので、ABCとも呼ばれます。ABCとは、複数の製品・サービスを提供するためにかかるコストを、作業時間や工程に応じて振り分ける手法です。
間接費に多い業種・サービスでは、どの製品を生み出すためにかかった間接費なのかを明確にすることが難しいものです。そこで、間接費を製品に適切に配賦して原価を正しく把握するためにABCを行います。
製品ラインナップが多種多様かつ間接費が多く、コストの適切な配賦が正確な原価把握に欠かせない業種に向いている手法です。
原価分析は意思決定の根拠になる
利益減少がわかっていても、原因を明確にできなければ改善のための意思決定ができません。そこで原価計算にとどまらず、原価分析まで行えば、利益が出ていない原因や赤字要因を数字で裏付けられます。
利益を上げるために、売上の拡大を目指すべきか、もしくは利益率の改善に注力すべきかなど、原価分析の結果という根拠に基づいた経営判断が可能です。さらに経営層だけでなく、ミドルマネジメントや現場社員のコスト意識向上にもつながります。特に、複数のプロジェクトや製品を扱う企業においては、こうした判断の精度が収益に大きく影響します。
精度の高い原価分析を実現するならZAC
原価分析は、経営上の意思決定に大きな役割を果たします。精度の高い原価分析は、まず原価計算が正しいことが重要です。原価の数値や計算があいまいな場合、そのあとの原価分析も誤りになってしまうことがあるからです。
そのようなことが起きないよう、原価計算を精度高く効率的に行える体制を築きましょう。精度の高い原価管理を行う際には、システムを活用して、計算に必要な情報を正確かつ漏れなく収集することをおすすめします。
本ブログを運営する株式会社オロのクラウド型ERP『ZAC』は、プロジェクトごとの原価計算を実施している企業向けの原価管理システムです。配賦を伴う原価計算を効率化し、プロジェクトごとに販売、購買、勤怠、工数、経費といった情報を一元管理して、個別原価計算を効率的に行えます。原価分析の土台となる原価計算を正確かつ効率的に行えるため、精度の高い原価分析にもつながります。特に、複数のプロジェクトを並行して管理する企業においては、情報の分散を防ぎながら原価を把握できる点が強みです。
また、見積や請求などの販売管理業務やプロジェクト別損益管理も効率化できます。これから原価分析を行う企業や精度の高い原価分析を行いたい場合はZACの利用も検討してみてください。













