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プロジェクトごとの原価管理で黒字経営を実現

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2020/7/28公開

変化が目まぐるしい昨今、企業が生き残るためには自社の経営状況をきちんと把握し、課題に応じた戦略を策定する必要があります。

企業が経営状況を把握する上でもっとも大切な要素は「売上」「原価」「利益」。特に「原価」は自社努力が与える影響が大きく、多くの企業がその重要性を認識しています。

しかし、広告代理店業、広告制作業、イベント業、Web制作業、ソフトウェア開発業といった「プロジェクト型ビジネス」の場合、原価の大部分を労務費(人件費)が占めるため、全社もしくは事業部単位での原価計算のみ行い、プロジェクト個別での原価計算を行っていないケースが少なくありません。その結果、赤字プロジェクトの発生を検知できず、知らず知らずのうちに赤字経営のリスクを抱えてしまう企業も多いようです。

こうしたリスクを回避するためには、たとえ原価を把握しづらいプロジェクト型ビジネスであっても正確に原価計算をし、経営資源を正しく配賦しなければなりません。

では、プロジェクトごとに原価管理をし、企業全体の黒字経営につなげるためにはどうすればいいのでしょうか。本記事ではプロジェクト型ビジネスにおける原価管理の方法を明らかにし、そのヒントを探ります。

目次

    プロジェクトにおける原価

    そもそも「原価」とは商品やサービスが生み出され、消費者のもとに届くまでにかかった費用のことをいいます。経済活動において欠かせない「利益」は、売上から原価を差し引いたもの。したがって原価を正確に管理することは、黒字経営を実現するうえで欠かせないのです。

    売上-原価=利益

    ただ、"目に見えるモノ"をつくる製造業の場合は材料費とモノを作る際の加工費が原価の大部分を占めますが、材料費が曖昧なプロジェクト型ビジネスの場合、どんなものが原価となるのかわかりづらい側面があります。そこで、プロジェクトに直接関わる原価を「直接費」、間接的に関わる原価を「間接費」に分けて解説していきます。

    直接費

    プロジェクト型ビジネスの場合、一般的に以下の3つがあげられます。

    1. 労務費
    2. 外注費
    3. 経費

    ①労務費

    人件費の中でも、プロジェクトに直接関わるスタッフの給与を指します。具体的には、該当するプロジェクトのどの工程にどのくらいの時間携わったかを明確に把握できるスタッフの給与のことです。

    ちなみに人件費のうち、商品やサービスの販売を担当する人の給与やバックオフィスを支える人の給与は労務費に含まれず、あくまでプロジェクトの遂行に直接関わっている人の給与のみを、該当するプロジェクトの直接労務費として計上します。

    ②外注費

    プロジェクトを進めるにあたり、協力会社や個人などの外部に業務を委託した場合の費用を指します。外注費の支払手数料、販促物やサンプルの製作にかかる販売促進費なども外注費として計上されがちですが、これらは外注費ではなく「支払手数料」「販売促進費」として処理します。

    ③経費

    プロジェクトに直接関わるスタッフの交通費や通信費、打ち合わせなどで発生した飲食代などの交際費、事務用品の購入費などが経費に分類されます。

    ただ、「プロジェクトのため」といえば何でも経費として計上できるわけではなく、あくまで「実際に使用したもの」だけを計上しなければいけません。しかし保守料などのサービス料ついては、1年以内の契約の場合は未経過の部分でも支払った際に「経費」とできる特例があります。

    間接費

    では、プロジェクト型ビジネスにおける間接費とは一体どんなものなのでしょうか。

    間接費とは、該当するプロジェクト(サービス)に直接的に紐づけられない、付随的に関わる費用のことを指します。

    たとえば、同じオフィスの中で複数のプロジェクトを進めている場合、オフィスの家賃や水道光熱費は間接費に分類されます間接費はプロジェクト別の原価として把握することが難しいため、生産量や稼働時間などを基準に一定のルールを設けて費用を振り分るのが一般的です。これを「配賦(はいふ)」といいます。

    間接費をさらに細かく見ていくと

    1. 労務費
    2. 共通費

    に分類することができます。ひとつずつ見ていきましょう。

    ①労務費

    直接費に分類される労務費に対して、経理や総務などプロジェクトに直接関わっていないスタッフの人件費を指します。またプロジェクトに直接関わっているスタッフであっても、従業員賞与手当や退職給付費用、法定福利費は間接労務費に含まれます。

    なお、プロジェクト個別原価計算を行う場合、製造部門の社員の法定福利費は直接労務費に含めることが多いようです。(給与+法定福利費を1か月の人件費としたり、標準労務費単価に上乗せしたりします。)

    ②共通費

    オフィスの家賃や水道光熱費など、プロジェクトを推進する上で間接的に発生する費用になります。

    プロジェクト型ビジネスにおける原価

    プロジェクト型ビジネスにおける原価を図解するとこのようになります。

    プロジェクト型ビジネスにおける原価の内訳表

    プロジェクト単位での原価管理の難しさ

    原価を求める計算方法は2種類に分けられます。

    • 大量生産する生産品1単価あたりの原価を求める「総合原価計算
    • 個々の案件や製品ごとに原価を求める「個別原価計算

    同じ製品を大量に生産する製造業の場合は「総合原価計算」が用いられるのが一般的です。これに対してプロジェクト型ビジネスの場合は、クライアントからの要求に基づいてサービスを提供し、プロジェクトごとに要求事項も実現方法も違うため、「個別原価計算」が用いられます。「個別原価計算」によってプロジェクトごとの原価の内訳を明確にすることで、利益率の向上や原価低減の足がかりになるのです。

    しかし、プロジェクト型ビジネスにおいて、「個別原価計算」を実現させることは容易ではありません。プロジェクト型ビジネスの場合、原価の大部分を占めるのは労務費(人件費)です。製造業において主な原価となる材料費と違い、目に見えない「時間」にコストがかかるため、算出が難しいのです。

    その結果、いわゆる"どんぶり勘定"が横行し、プロジェクト終了後に利益率の低下、さらには赤字が判明するケースが多く発生します。そうならないよう、プロジェクトごとの緻密な時間管理が必要です。

    この「時間管理」も、プロジェクト個別の原価計算を難しくしている一つの要因です。

    プロジェクト型ビジネスで原価を適切に管理するためには、下記のように細かな時間管理が必要となります。

    1. 予定作業時間を見積もる
    2. プロジェクト進行中の作業時間の管理(予定と実績の差異の把握)
    3. プロジェクトの予想利益(着地見込み)の管理

    日々変動する労務費の実績値を把握することに、プロジェクト単位での原価管理の難しさがあるのです。

    赤字の原因を見える化し、黒字経営を実現

    前述の通り、突発的に発生する赤字プロジェクトを未然に防ぐには、プロジェクト一つひとつの原価をタイムリーに把握する必要があります。

    ここからは、プロジェクトごとに原価を求める「個別原価計算」の手順を見ていきましょう。

    個別原価計算の手順

    1. 原価の種類別に集計
    2. ①の集計結果を部門別に振り分ける
    3. ②の集計結果をプロジェクト別に振り分ける

    個別原価計算のフロー

    ①原価の種類別に集計

    ある一定の期間中に発生した費用を労務費、外注費、経費といった原価の種類別に分類します。プロジェクトに直結した費用については直接費、そうでないものについては間接費に振り分けます。

    原価を種類別に分類するには、発注・仕入処理や経費精算、勤怠登録などを日頃からプロジェクト別に分けて記録しておく必要があります。特に労務費については、プロジェクト別・作業工程別に作業工数(作業時間)を記録し、どのプロジェクトに誰がどのくらい関わったかを把握することで、個別原価計算をより明確化、効率化できるようになります。

    ②①の集計結果を部門別に振り分ける

    種類別に集計した原価を部門別に分類します。①で間接費に分類された原価については、さらに以下のように分類します。

    部門別個別費

    当該の原価部門に特有の費用です。こちらは、そのまま該当部門へ集計します。

    部門共通費

    間接労務費など、複数の原価部門に共通する費用です。一定の基準を設け、それにしたがって各部門に配賦します。

    ③②の集計結果をプロジェクト別に振り分ける

    部門別に集計した原価を、さらにプロジェクト別に分類します。直接費はそのままプロジェクト原価として集計し、間接費は一定の基準にもとづいてそれぞれのプロジェクトに配賦します。

    これらのステップを踏みプロジェクトごとの原価を算出すれば、それぞれのプロジェクトの現状を見える化し、赤字の原因を把握することができます。しかし、個別原価計算を自力で実践することは労力的な面からあまり現実的ではなく、多くの企業では個別原価計算に対応したシステムを導入することで、原価管理の効率化を実現しているようです。

    まとめ

    労務費という"目に見えないもの"が原価の大半を占めるプロジェクト型ビジネスであっても、「個別原価計算」によってプロジェクトごとの原価を明確にし、原価を計算することができれば、利益率の向上やコスト削減につなげることができます。自社の経営状況を把握し、課題に応じた経営戦略を策定することが黒字経営実現のカギとなるのです。

    効率的に原価管理をするためにも、ぜひ個別原価計算に対応したシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。クラウドERP「ZAC」では、このような課題を解決できます。

    • どの社員がどのプロジェクトにどれくらいの時間をかけたのか把握するのが困難。
    • 原価計算に取り組んでいるが、プロジェクト単位での労務費(人件費)集計に苦労している。
    • 配賦基準に応じた間接費の配賦に苦労しており、仕掛品・売上原価の計算がとても大変。
    • ほんとうは正確でスピーディな原価計算を実現したい・・・

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    ZAC BLOG編集部

    この記事の筆者

    ZAC BLOG編集部

    クラウドERP開発・導入の経験から蓄積された知見に基づき、業務効率化・管理会計・原価計算・ERPに関するテーマを中心に、生産性向上に役立つ情報をお届けします。

    渡辺 篤史

    この記事の監修者

    株式会社オロ クラウドソリューション事業部 カスタマーサクセスグループ コンサルタント / 中小企業診断士

    渡辺 篤史

    2011年入社以降、クラウドERP「ZAC」の導入支援を担当。現在は主に大規模案件を中心に要件定義や導入支援を行っている。導入支援チームのマネジメントも行う。中小企業の業務プロセスに通じる。

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